絶対成功の体育授業マネジメント
体育授業がうまくいけば、学級経営もうまくいく!学級力が一気に高まる体育指導スキルと授業ネタを伝授!
絶対成功の体育授業マネジメント(11)
夢と希望に満ちあふれた体育開き!
大阪府箕面市立萱野小学校教諭垣内 幸太
2016/4/10 掲載

1.この1時間が1年間につながるように

 さあ4月! 新しい1年間のスタートです。学級開きは思い描いたようにスタートができたでしょうか。教師にとっても、子どもたちにとっても、新しい学級のスタートは緊張と不安が入り混じった心持ちでしょう。この4月のスタートが、この1年間において大きな意味をもつことは、よく語られるところです。
 そして、学級開きのあとは、各教科・領域の授業もスタートします。授業開きですね。体育の授業開きはどのように構想されたでしょうか。子どもたちから人気のある体育、その人気に甘んじることなく、授業開きには最大限の工夫と演出をしましょう。身体活動を通じて得た有能感や一体感は、学級力へと通じます。
 学級力とは、「1.すべての子どもの居場所、互いの思いを伝え合える雰囲気 2.何か事にあたるときの集団としての勢い 3.心地よい笑い、朗らかな笑顔を兼ね備えた学級、創り出そうとする学級」であるという話は、以前(連載第1回参照)にしました。
 45分という短い時間の授業開きにおいても、これらの一端が感じられるような授業、1年の学級経営における基盤となる学びを創りあげたいものです。授業開きでは、次の3点を意識して授業を構想しましょう。

1 準備・ルールが簡単! 
 準備やルールの説明に多くの時間を割くのではなく、活動する時間を十分に確保できるようにしましょう。
2 協力が不可欠! 
 個人で完結する運動ではなく、仲間と動きや知恵を合わせることが必要となる運動、課題を用意しましょう。
3 みんなに「できる」が生まれる!
 運動能力の差により「できる・できない」が生まれる課題ではなく、少しがんばれば「できる」がたくさん生まれそうな適度な難易度の運動、課題を設定しましょう。

 学級のすべての子どもたちに、この「十分な活動、協力、できた」を保証することで、この1時間が、この1年間の体育の授業への夢や希望につながっていきます。

2.体育開き=所信表明

 体育授業開き、同時に心掛けたいことがあります。授業における約束事や心構えです。「お作法」などということもあります。教室から場所を移して行う体育の授業です。着替え、移動、集合、並び方、準備…… 確認しなければならない約束事もたくさんあります。1年間、限られた時間を有効に使うためにも、安全に学習するためにも必要なことです。しかし、これらを一つ一つ伝えていては、せっかくの授業開きの貴重な時間がどんどん過ぎてしまいます。1年で最初の授業が説明や注意ばかりでは、あまりにももったいないです。なぜそのような約束事があるのかを理解して行動できることが大切です(連載第4回参照)。細かい約束事は次回以降でも大丈夫。まずは「体育の時間ではこんなことを大事にするよ!」という担任の思い・願いをしっかり伝えることを最優先にしましょう。いわば、所信表明です。
 私は、体育の授業開きでは、「運動が得意な子も苦手な子も、走るのが速い子も遅い子も、体育が嫌いだった人も、みんなが笑顔でいられることが一番大事です」と子どもたちに伝えます。また、「そのためにできること、してはいけないことは自分の頭で考えましょう」とも付け加えます。
 教師の思いから、子どもたちに「心構え」を築いていきます。この「心構え」は、これからの約束事を単なる約束事としてとらえていくのではなく、子どもたち自身が考えて、行動できるようになっていくための礎となります。

今月の授業授業開きにぴったりの運動で1年のスタートを切ろう!

 では、1年のスタート、授業開きにぴったりの運動を2つ紹介します。教師からの説明やヒントが多すぎると、ただ無意識に運動をするだけに陥ってしまいます。どうすればうまくいくのか、子どもたち自身が試行錯誤する時間を大切に、授業を展開していきましょう。

カウントダウンランニング

 動きは、いたって簡単です。前に進まず、その場でカウントに合わせて、駆け足をするのみです。その動きを仲間と合わせること。これのみが課題です。
「1、2、3、4、5!
「1、2、3、4!
「1、2、3!
「1、2!
1!
の掛け声と共に、その場で駆け足をします。最後の数(太字)のときには、写真のようにビシッ!と動きを止めます。

写真1

 だんだんカウントを少なくしていき、最後の「いちっ!」の掛け声をかけたときに、上がっている足が、下の写真のようにみんなが揃っていれば成功!

写真2


 はじめは2人組からスタートして、成功したらどんどん人数を増やしていくなどすると、より意欲的に活動に取り組めます。
 このあと、グループ毎に新しい楽しみ方を考える活動をおこないます。カウントの数を10まで増やす。最後のポーズをみんなで考える。カウントと共に、90度ずつ回転していく…… などいろいろなアイデアがでてきたら全体に広げていきます。学年や子どもの実態に応じて、設定をかえるのもよいですね。

みんなで一緒

 こちらも難しい動きは必要ありません。下の写真のように、肩を持って数人ずつ縦1列に並びます。

写真3

 みんなで、「言うこと一緒、すること一緒」の掛け声をかけ、そのあと教師の「右!」「左!」「前!」「後ろ!」の指示を聞き、その方向に、両足ジャンプで移動します。教師は続けざまに指示を出していきます。慣れてくると、「右! 前!」と一度に2つの指示を出してもいくこともできます。
 応用編として、「言うこと一緒、すること反対」も盛り上がります。文字通り、言うことは一緒ですが、することは反対をおこないます。つまり「右!」と言いながら、左に移動します。
 さらに、
「言うこと反対、すること一緒」
→「右」と言われたら「左!」と言いながら右に移動する。
「言うこと反対、すること反対」
→「右」と言われたら「左!」と言いながら左に移動する。
といったこともできます。子どもたちの実態に応じて課題をあげていくといいですね。
 また、この運動でもグループで動き方や並び方を考える活動を入れます。けんけんやくまさん歩き、オットセイ(両腕支持の姿勢)で動くことで難易度があがります。並び方を円にしたり、横一列で肩を組んだりして(下写真)おこなうのも盛り上がります。

写真4

写真5

 家に帰り、「今日の体育こんなことしたよ!」「すごく楽しかったよ!」「○○くんと一緒にやったよ!」など、体育での出来事をおうちの方に話すようならば、体育授業開きは成功といってよいですね。
 「どんな体育にするのか」は、「どんな学級にするのか」に通じます。その方向性を指し示す授業開きは、90時間分(年間時数)の1以上の大きな意味をもつ1時間です。もちろん教師力を多いに発揮して、雰囲気づくりも欠かしてはいけません。
 「いい雰囲気・勢い・笑顔があふれる」授業で、子どもたちに夢と希望をあたえられる授業開きにましょう!

絶対成功のポイント

  • 授業開きには最大限の工夫と演出をせよ!
  • 授業開きのキーワードは、@十分な活動量 A協力 Bみんなが「できる」だ!
  • 約束事を理解できる「心構え」を築け!

垣内 幸太かきうち こうた

1974年、兵庫県生まれ。大阪教育大学教育学部卒業。
2009年、関西体育授業研究会設立。
「体育科の地位向上」を合言葉に、近隣の先生方とともに発足。授業力向上を目指し、月1回程度、定例会を開催。また、毎年7月に組体操研修会、11月に研究大会を開催。

(構成:木村)

コメントの一覧
1件あります。
    • 1
    • 東大阪市 香川
    • 2016/4/13 9:04:50
    毎回そうですが、どの子も体育を楽しんでほしい、そういう授業づくりをして行きたい、そういう学級にして行きたい(また、そうして来られた)という思いがよくわかります。第1回にも書かれていますが、「体育の授業づくり」を基盤に学級づくりを行うことで「どの子にも居場所があり、笑顔あふれる集団」が確かに育つと思います。一年間「いい雰囲気・勢い・笑顔あふれる」授業づくりを行っていくために、子どもたちと体育とのいい出会いを大切にした授業開きはとても大切なことだと感じます。さらに授業開きのキーワード『十分な活動量・協力・みんなが「できる」』は授業開きだけでなく、体育の授業づくりに常に心がけて行くキーワードでもあると思います。
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