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『SCHOOL SHIFT 3』刊行特別インタビュー(2)
その「不安の正体」こそ、SHIFTの足場
HILLOCK初等中等部創設・運営蓑手 章吾
2026/6/12 掲載
蓑手 章吾みのて しょうご

東京で4校展開するオルタナティブスクール「HILLOCK初等中等部」を創設、運営。文部科学省学校DX戦略アドバイザー、デジタル庁デジタル推進委員も勤める。元公立小学校教員で、教員歴は14年。教鞭を持つ傍ら大学院にも通い、人間発達科学プログラムで修士修了。特別支援2種免許を所有。
現在は教育コンサルタント会社「風と土」の代表として、様々な民間企業アンバサダーや小学校研究会講師、執筆活動などを行っている。

―公立小学校で「子どもを信じて・任せて・待つ」スタンスを深めていた中で、特別支援学校への異動という予想外の転機に「鼻っ柱をへし折られた」とも書かれていますが、この経験が自由進度学習の実践へとつながった経緯を、先生ご自身の「授業観SHIFT」として教えていただけますか。

 初任校ではそれなりに外に出て勉強もしていました。実践を通して研鑽を積む中で、他の先生と比べて自分は「子どもを信じて・任せて・待つ」ができていると思い込んでいました。それなりに手応えや周囲の評価もありましたからね。特別支援学校に異動して、自分の未熟さを痛感しました。覚悟が足りなかった。確かに通常学級では、特別活動や日常生活の枠の中では子どもたちに委ねられていた。しかし、学習に関しては委ね切れていなかったなぁと。自分が特に、特別支援学校で授業観SHIFTした点は「子どもに委ねても大丈夫」程度の認識から「子どもに委ねた方が、よりよい成長につながる」と確信できたことですね。その信念が、再度公立学校に戻ってから実践することとなる算数の「単元縦断自由進度学習」や探究学習、自由自学につながっていったというわけです。

―一方で「子どもに任せて学習が成り立つのか」と不安を感じる先生も多いと思います。自由進度学習へのSHIFTを試してみたい先生が、まず何から始めるとよいか、具体的なアドバイスをいただけますか。

 自由進度学習をやりたいと本気で思ったら、方法はいくらでも落ちています。本でも、インターネットでも、研修会でも。今の時代なら、自宅にいながらクリック1つで、ほぼ無料で情報が獲得できる時代ですからね。そんな具体的な方法論よりも、私が伝えていかなければいけないと思っていることは、自分が「なぜ試してみたいと思ったか」「どこに不安を感じているのか」と向き合うこと。流行っているからとか、そうしなければいけないからとか、あるいは上からの圧力で始めても、結果うまくいくことはないでしょう。不安の正体こそ、自分の教育観をSHIFTする最適な足場でもあるわけです。子どもたちの進度がバラバラになることに耐えられないのか、子どもたちが愉快に学ぶことにモヤモヤするのか、テストの平均点が下がることが許せないのか、保護者や同僚からの反発が怖いのか。良し悪しではなく、自分の感情や教育観と正対し、根っこの部分をじっくり考え続けることが、結果として大きな教育観SHIFTを実現するのだと思っています。まずやることは、外に目を向けるよりも自分の内に目を向ける。そのために、必要なら信頼できる同僚や仲間、メンターなどの上司を見つける。それが最も具体的で有効な第一歩かもしれません。

―本書内で「学校は、子どもが自身を知る場である」と述べられています。AIやデジタルが「知」をオープンソース化していく時代に、学校・授業の価値はどこにあるとお考えですか。自由進度学習の実践を通じて見えてきた「これからの授業の姿」と、現場の先生方へのメッセージをお聞かせください。

 新型コロナを機に、不登校がいっそう急増し続けている背景には「学校じゃなくても学べてしまう」という世間の気付きがあるように感じます。それは、半分正しくて半分間違えです。確かに、AIやインターネットの爆発的普及により、狭義の学力(暗記型のペーパーテストで高い偏差値を叩き出す学力)は学校でなくても手に入る時代となりました。一方で、学校がもっていた潜在的な価値、非認知能力を含めた広義の学力に関しては今の時代だからこそ、明確にしていく必要があると思っています。
 私たちはこれまで、狭義の学力以外にどんなことを学校で学んできたのでしょう。例えば心が通う嬉しさ、誰かと協働する悦び、予期せぬものや仲間との出会い。そのどれもが生きがいと言えるような、人生そのものの価値になっているのではないでしょうか。これらを維持発展するためにこそ学びが必要不可欠であり、学ぶとは自分自身を見つける旅でもあります。それを最適な環境で経験させる可能性にあふれた場所こそ、学校なのだと思っています。
 学校の価値を認識し、言語化し、広く伝えていきましょう。それができるのは、今まさに最前線の学校現場にいらっしゃる先生方以外にないのですから。

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