教育オピニオン
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小学校1年生、はじめてのGIGAスクール!
ここまでできる!ICT活用のポイント&アイデア
滋賀県公立小学校田中 直毅
2022/6/1 掲載

1 1年生にとって1人1台端末ってどんなもの?
 1年生は新しい筆箱、新しいノート、新しいタブレット…、全てが新しい、全てが初めて…。しかし、タブレットを受け取った児童の様子は他の物を受け取った時とは異なります。タブレットを受け取った児童のテンションは高くなり、目をキラキラさせて画面に夢中になります。
 ここで重要なのは「あくまで学習に使うもの」であることを事あるごとに確認することです。はさみやのりだって、必要な時以外はお道具箱に入れておきます。タブレットも同じです。これから決めていくルールが守れなかったら使えなくなってしまうということをしっかりと伝えておきましょう。

2 1年生でもここまでできる!1人1台端末活用アイデア

スキルアップ編 ―お気に入りの動物だけを残そう―


 写真から、必要な部分だけを残すことをトリミングといいます。この活動では、たくさんいる動物から、お気に入りの動物だけをトリミングすることを通して、必要な情報を抜き出す練習をします。
 このような画像を配布し、「お気に入りの動物だけを残したいな」という投げかけにより、トリミングの必要性を生じさせます。

図1

 トリミングをさせた後に「ライオンを残した人」「パンダを残した人」などで手を挙げさせると盛り上がる活動になります。
 図書室にある動物図鑑や絵本を撮影しても同じ活動ができますが、『小1担任のための1人1台端末活用ガイド&アイデア』(明治図書)の巻末についているQRコードを読み取ることで、教材の画像データをダウンロードすることができます。

学校生活編 ―「みんなのためタイム」の写真を撮ろう―


 帰りの会で、1分間、学級のためになることをする時間「みんなのためタイム」を設定し、一週間に一度、グループ内で担当を決めて、その様子を写真に収めます。よい行動の記録が残り、学期末などに振り返ると、自分たちの行いの良さに改めて気づくことにもなります。この時間で、何をするかは、初めは例示します。「ゴミを拾う」「黒板をきれいにする」「本棚を整える」「ロッカーの整理をする」などがあります。慣れてきたら、児童が自分で考えて行動できるようになるといいですね。
1分間の活動を始めてから、友達の様子を写真に撮ります。そのときに、活動のどのようなところが「みんなのため」になっているかがわかるような写真を撮ります。例えば、遠巻きに取るよりも手元を写した方が、活動の目的がよくわかりますね。後で、写真を見返したときに、わかりやすい画角を考えさせましょう。

図2

 撮った写真は教師に送らせることで、活動記録を残したり、所見に活用したりすることができます。

授業編 ―学校に隠れたお宝を見つけよう―


 学校探検で各教室の前に貼られた二次元コードを読み取り、キーワードを集めます。二次元コードを見ただけでは、キーワードは分からないので、スタンプラリーのような感覚で楽しめます。
 学校を自分たちで探検し、各教室を巡ります。その教室に到達した証拠に、二次元コードを読み取り、キーワードを集めることを確認します。「廊下を歩くときは静かに歩く」「タブレットは両手で持つ」など、学級に応じたルールの確認も忘れてはいけません。読み取るQRコードは次の画像のように教室の前に貼っておき、児童の記録用紙には、各教室のキーワードを並べると言葉が出てくるようにします。
 例えば、下記のような形です。

  • りかしつ   →【と】
  • はいぜんしつ →【く】
  • としょしつ  →【が】
  • おんがくしつ →【わ】

図3

 このQRコードを読み取ると、「が」が表示されます。つなげた文字が学級目標になっていると面白いですね。

3 保護者にはどんな不安があるの?
 タブレットが導入されたのですが、保護者からしたら、学校でタブレットがどのように活用されているかは、あまり見えません。1年生にとって重いタブレットを持ち帰ることは、児童にも保護者にも負担となっています。それを持ち帰るだけのメリットがあるかを疑問に感じている保護者も少なくないです。
 ここではいくつかの不安の例を紹介します。

タブレットを活用した宿題について


 タブレットを持ち帰らせて宿題をさせる場合もあるでしょう。例えば「家にある箱を撮影して提出する」という宿題を出したとします。教師は「撮影した写真を持ち寄り、授業で箱の形、つつの形に分類する」という目的があります。しかし、この宿題の後に、教師から何の連絡もなければ、保護者からしたら「家で撮影した写真はその後どうなったの?」という不安が残ります。なぜ、撮影するのか、それだけで終わりなのか保護者にはわかりません。通信を通して家庭で行ったこの活動がどのように授業で生かされているのかを伝える必要があります。
 特に視力の低い児童を持つ保護者は、家庭でもタブレットの画面の見過ぎでさらに視力低下につながらないかを心配されています。

・荷物が重くなることへの負担について


 タブレット以外の量で調整しましょう。例えば「月曜日と金曜日は荷物が多いので、タブレットを持ってくるのは火曜日、水曜日、金曜日の3日間にする。」や「月曜日の時間割に音楽や体育を入れないようにして荷物を減らす。」という工夫をされている先生もおられます。

 その他、拙著の中で、1年生のための端末を活用したレクやゲームをはじめ、日常生活や授業でのアイデアを多数ご紹介いたしました。ぜひ、あわせてご活用いただき、1年生のタブレット活用を楽しく進めていきましょう!

田中 直毅たなか なおき

滋賀県公立小学校教諭。1988年生まれ。
金沢大学理学部卒業、奈良教育大学教職大学院修了。
第52回「わたしの教育記録」新採・新人賞受賞。「フォレスタネット」(授業準備のための指導案・実践例共有サイト)に日々の実践を多数投稿。
2022年6月、『小1担任のための1人1台端末活用ガイド&アイデア』を刊行(明治図書)。
他、共著に『小学校ラクイチ授業プラン 低/中/高学年』(学事出版)がある。

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