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学校の先生が知らない、いじめのなくし方
「いじめと戦おう!」ホームページ制作者・地方公務員玉聞 伸啓
2019/2/1 掲載
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1 学校の先生が知らない、いじめの本当のメカニズム

※今回、私が説明させていただくのはあくまで「よくあるパターン」であり、全てではありません。たとえば、多くはありませんがいじめっ子が一人というケースもあります。

@いじめっ子の視点で考えてみる
 いじめに立ち向かっていくために、まずはいじめっ子がどのようにいじめを引き起こしていくかの流れを知ることが大切です。将棋棋士の加藤一二三九段は対局中、相手が席をはずすと相手側に回り込み、盤面を見たそうです。「相手の視点から見る」と、相手がやろうとしていることややりたいこと、されたら困ることが見えてきます。いじめも同じで、いじめ側の気持ちをよく知ると、「されたら困ること」が分かってきます。すると、少ない力で効果的に止めることができるようになります。

 では、いじめグループの中でも、その中心となり引っ張っているリーダーが何を考えているか見ていきましょう。グループを率いるリーダーは、ある意味、人望があると言えます。慕ってくれる友だちが何人かいます。「クラス全体の人気者」であることもよくあります。

事例 メール相談より「いじめっ子はどんな人?」
・クラスの人気者 小5男子
・クラスの中心にいる人 中2男子
・みんなは、いいひとだとおもっているひともいるらしいです 小5女子
・背の高い人気者、数人、人の痛みがわからない人 中3女子
・クラスの目立つ男子 高3女子

 でも、少しおかしいと思いませんか。いじめをするような人は、当然「性格が悪い」と言えますよね。普通は、そういう人は好かれるでしょうか。よく、ドラマやマンガで主人公をいじめる子が出てきますが、そういう子と友だちになりたいと思いますか。…できればお近づきになりたくありませんよね。ところが、現実には好かれていて、人気があるのです。いじめなんてひどいことをしたら…一人ぼっちになるのが自然なのに、そうはならない。無理やりではなく、まわりの人が自分から寄ってくるのです。

 実は、いじめリーダーには人一倍このような強い気持ちがあります。「人から好かれたい。人気者でいたい」です。だったら、いじめなんてしなければいいのに・・・と思いますが、うまく状況を整えると両立できるのです。いじめをしても嫌われず、さらに人が寄って来ます。いじめリーダーは、こう考えています。「好かれたままでいられるなら、いじめをしたい」。言い換えると、「嫌われるくらいなら、いじめをしない」ということです。これが、いじめリーダーの本音です。

 では、どのようにして、いじめをしつつ好かれることができるのでしょうか。そのために、どうすれば状況を整えられるのでしょうか。
 少し話は変わりますが、私は学生のころボロアパートに住んでいました。「ゴキブリが同居人」というくらい、よく出るアパートでした。そのおかげで、ゴキブリを見てもまったく平気になりました。私は市役所で働いているのですが、たまにゴキブリが出てきます。女性職員が逃げまどう中、私が涼しい顔をして倒します。すると、若い女性職員が「玉聞さんがいてくれて良かったです! 頼もしいです!」と言ってくれるのです。私はつい(また出て来ないかな…)と思い、見つけると正直ウキウキします。
 ところが、これがもし出てきたのがゴキブリではなく可愛い子猫だったらどうでしょう。何を思ったか私が同じように涼しい顔して子猫を倒しました。すると、女性職員はどんな反応をするでしょう。お礼どころか、「ひどい…!」と言って後ずさりして離れていくでしょう。

 実は、このようにすればいいのです。いじめたいと思う人のイメージを下げ、まわりの人にゴキブリのように思ってもらいます。皆の頭の中で、ターゲットの人がゴキブリと同じようになれば、いじめをできるようになります。私がゴキブリを踏んづけても誰にも「ひどい…」と言われなかったように、ひどいいじめをしても、それはむしろ「退治」になります。皆から喜ばれれば、リーダーはもっとしたくなります。つまり、ターゲットのイメージをゴキブリのように下げれば、いじめをしながら好かれ、前よりも人気者になることができるのです。

Aでは、どのようにターゲットのイメージを下げていくか
 逆に言うと、いじめっ子は相手のイメージを下げなければいじめをできません。たとえば入学式の日にいきなりいじめることはできません。先ほどの例で言えば、それは子猫をやっつけるようなものです。「なんてひどい人だ…!」とまわりの人に思われ、嫌われてしまいます。
 では、どのようにイメージを下げていくのでしょうか。それは悪口です。よくあるのが「うざい・きもい・汚い・くさい・死ね」などです。

事例 ある高校生の話
「小学生のときに転校生が来たのですが、失礼な話その子は普通な人でした。ですが、サッカーグループの人たちが、その子の悪口を陰で話し、最終的にはいじめが発生してしまいました。時が流れるにつれて、いじめはエスカレートし、その子も反撃したのですが軽々しく蹴飛ばされ、たまに学校に来なくなっていました」

 このように元は「普通の人」でも、悪口でイメージを下げていくことができます(だからこそ、いじめられるほうに原因はないと言えるのですが)。ここでやっかいなのは、悪口を最初に言い出したリーダーの人は「心からそう思っている」ということです。「いじめをできる状況にしよう」と思って言い始めたわけではありません。純粋に、ただ憎たらしく思って不満を言っただけなのです。だからこそ、聞いているほうにも、もっともらしく聞こえてしまいます。

(私が書いた、架空の)「よくあるいじめ相談」
「ぼくは中学生です。『キモイ』『言ってることが変』『動きがおかしい』と悪口を言われます。言い返すんですが、無視されていつも一人ぼっちです。ある日、頭にきたので相手の胸ぐらをつかみました。でも、逆に殴られてしまい、泣いて帰りました。ぼくはどうしたらいいんでしょうか?助けてください」

ある男子高校生が教えてくれた実話
「中学の時に、一人キモイやつがいた。言うことも行動もどこかおかしくて、弱いのにいろんな人に突っかかって行った。悪口や無視をされていた。私もその人に胸ぐらをつかまれて嫌いになった。その時は、殴ったら泣いて帰って行った」

 上のいじめ相談は、下の実話を元につくったものです。あなたはどんな印象を受けましたか。いじめ側の話を聞くと、「いじめられるほうも悪いかな…」という印象をもちませんでしたか。いじめ側は、心から自分が正しいと思って話しているので説得力があるのです。聞く人は、つい「確かにそうかも」と信じてしまいがちです。そして、後から聞く人は「みんなも言ってるし、そうなんだろう」とますます信じやすくなり、悪口が広まります。
 まわりの人のイメージにおいてゴキブリ化が進めば、いじめの状況が整い、リーダーは安心していじめをできるようになります。

2 いじめの相談をされた時に先生にしてほしいこと

※現実には、様々な要因が複雑にからまり、一筋縄でいかないケースばかりかと思います。あくまで一つの参考としてお読みください。

@いじめの発覚が2〜3月なら、直接注意せずクラス替え
 相談をしてきたいじめられている子は、もちろん先生にいじめを止めてほしいと思っていますが、リスクを恐れてもいます。いじめっ子が「先生にチクった」と怒り、もっとひどくなったらどうしよう…というリスクです。もし、2〜3月頃に発覚したいじめであれば、直接注意せずクラス替えでいじめリーダーと離すのが安全で確実です(リーダー以外の子は同じクラスでも大丈夫です)。

A強く注意するのが効果的な場合
 いじめグループには自分たちなりにいじめる理由があり、正当化しています。しかし、このような場合は正当化が苦しく、言い返せなくなります。

 (1)男子が女子をいじめている場合
 (2)病気が理由でいじめている場合(アトピーなど)
 (3)生まれつきのことでいじめている場合(障害や、親が外国人であることなど)

 これらのときは、先生に注意されても言い返せず、認めるしかなくなります。たとえば(1)のように男子が女子をいじめている場合は「男が女をいじめるとは何事だ!」と注意でき、本人も保護者も言い返せません。(2)(3)も同様で「努力でどうしようもない理由でいじめるなんて、最低だ!」と注意できます。いじめっ子からすると、理屈で言い返せずシュンとなるしかありません。

Bいじめのギャラリーを黙らせる
 @・A以外の場合、いじめグループへの対処は、私はこういうやり方をお勧めしています。「いじめ」の中の登場人物で、ポイントとなるのはいじめリーダーの友だちたちです。この人たちを楽しませるためにリーダーは工夫し、面白いいじめをします。楽しんでもらえると、リーダーは快感を得ます。
 リーダーにいじめをやめるよう注意しても、本人はやめられません。なので、この友だちたちを止めます。もし、いじめを見ても友だちが笑ってくれなかったら…「リーダーは、どんなにしたくてもいじめをできません」。
 いじめグループのリーダー以外の子たちを呼び出します(リーダーとは、面白いいじめを最初に思いつく人です)。そして、「どんなに面白いいじめを見ても(悪口を聞いても)、絶対に笑わないように」と注意します。リーダーには注意しません。先生もいつもどおり接してください。いじめグループ全員を呼び出して注意すると、「怒られた」恨みで団結します。友だちだけ呼んで注意することで、「リーダーのせいで私たちだけ怒られた」と溝をつくることができます。また、なぜかリーダーのみ怒られないことで、リーダーも本気で恨めません。「よくもチクったな!」と文句を言ったら、今度こそ自分が怒られるかもしれないと考えます。いじめグループがぎくしゃくします。
 そして、その後もいじめリーダーの友だちたちが笑っているようなら、何度でも呼び出して注意します。もし「なんでうちらばっかり。一番いじめてるのはあの子なのに」と不満げに言ってきたら、「君たちが笑わないことが一番大切なんだ」と教えてあげてください。「きっと先生はビビってリーダーに注意できないんだ」とぶつくさ言われるかもしれませんが、敢えて無視してください。その行き場のない怒りもリーダーに向かい、やりづらくなっていきます。

玉聞 伸啓たまき のぶひろ

地方公務員(東京都東大和市役所勤務)
自身が人間関係で悩んだ体験から、ホームページ「いじめと戦おう!」を開設。
以来、全国の1000人以上の子どもたちからいじめ相談を受けている。
【著書】
『いじめから脱出しよう!』(小学館)
『いじめと戦おう!』(小学館)
【監修】
・教育DVD「いじめと戦おう!〜わたしたちにできること〜小学生篇」(東映)
・教育DVD「いじめと戦おう!〜もしもあの日に戻れたら〜中学生篇」(東映)
【出演】
・NHK教育テレビ いじめをノックアウト
・東京都人権教材DVD  imagination(イマジネーション)

 

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