教育オピニオン
日本の教育界にあらゆる角度から斬り込む!様々な立場の執筆者による読み応えのある記事をお届けします。
M・F・Cチームワーク指導のすすめ
学校を変える教師間のチームワーク
麗澤大学非常勤講師寺崎 賢一
2015/9/15 掲載
  • 教育オピニオン
  • 教師力・仕事術

M・F・Cの役割分担

 母親の小言がうるさくてしょうがないと感じている中学男子生徒に対して、母親と同じような年齢で同じような雰囲気の女性の先生が注意をすると、その男子生徒は一瞬錯覚をおこし、母親への悪態と同じ悪態をその先生についてしまうことがあります。こういう生徒には、肚のすわった先生(ファザー教師。F教師とも言います)が同じ注意をした方が、ずっと好意的な反応が出るものです。ツッパリに対してはなおの事そうです。これは理性ではなく感性レベル(動物レベル)の問題です。
 学年集会の場合と児童生徒一人一人に対する個別指導をする場合とでは、その指導方法はまったく異なるべきです。全体に対しては学校・学年の指導方針に則って、「目指すべき理想の姿」を学年主任(おおらかなカウンセリング・マインドをもった教師である、マザー教師がいいですね。M教師とも言います)が明確に示すべきです。しかし、規則違反や問題行動に関して全体に指導する場合は、ファザー教師がすべきです。ファザー教師が「ならぬものはならぬものです」ときちっと説諭をし、行動指針・枠組みを明確にしたら、その後で学年主任が学年の良い所をほめてその集会を終えます。温かくみんなを導く学年主任はマザー教師、ナンバー2の生徒指導担当は強面(こわもて)のファザー教師である方がうまくいきます。
 一方、学年全体の流れについていけない生徒に対しては、個別指導で対応します。元気のいいツッパリに対してはファザー教師が。気の弱い生徒に対してはマザー教師が。中間的集団の生徒に対してはその両者やチャイルド教師(C教師とも言います)もOKです。チャイルド教師は生徒たちの兄や姉のような存在の教師です。生徒と一緒になって遊び、会話し、生徒たちのガス抜きをし、生徒がフッと漏らす本音を先生方に報告して事前にトラブルを防いだりします。こういう教師がいないと、生徒たちが裏で何をしているのか(特にスマホのライン上などで)、教師側に全く伝わってきません。大きな事件になってやっとそれに気づくような学校は、チャイルド教師の存在を許していない学校と言えましょう。
 ファザー教師の足りない部分をマザー教師がフォローし、マザー教師のできないところをファザー教師が代わりにおこなう。ファザー教師が厳しく叱った後、マザー教師やチャイルド教師にそのフォローをお願いする。そのお願いがチームワークを強固にしていきます。

M・F・Cチームワーク指導の利点

 <M・F・Cチームワーク指導>を実践することで、教師は、様々な子どもたちの要求に答えることができ、両者(生徒と教師)の「学校性ストレス」が解消され、両者にとって、学校を住み心地のよい所にします。「落ち着いて平安な学校は、たいてい無意識的にこのような指導体制になっている……」とは、吉田順氏と直接会話したときの言葉です。吉田氏には『生徒指導24の鉄則』『荒れには必ずルールがある』(いずれも学事出版)の名著があり、荒れた学校の立て直しを請け負って全国を回っています。
 1980年代に全国的に中学校の校内暴力が勃発した時にしばしばいわれたのが「教師が一枚岩になって同じ歩調で指導しなければならない」でした。しかし、それは現実的には無理なことでした。気の優しい先生が暴走しているツッパリを止めるのは無理なことであり、日ごろツッパリを相手に指導している強者(つわもの)の先生が、不登校気味の内気な生徒を時間をかけて指導するには精神的にも時間的にも難しいものがあったのです。教師も人間であり、得意な生徒、苦手な生徒が必ずいるものです。これは理性のレベルではなく感性(動物的)レベルの問題です。それを、無理して身の丈を超えて指導するから、失敗したり、教師が学校に出て来られなくなったりするのです。
 小学校レベルなら、一人の教師がM・F・Cの三役を演じきることが可能です。また、そのような教師を目指すべきでしょう。しかし、中学校以上ともなるとそれが難しくなります。生徒が「特化」するからです。体も智恵も発達し、教師の平均を超えてしまうからです。そこでM・F・Cの役割分担が必要となるのです。
 しかし、M・F・Cの三者が共通して目指すべきことがあります。それは「徳を求める心のコップを上向きにして生きる姿勢」です。この姿勢、この心構えを持ち続けることで、それぞれの役割がパワーアップして演じられるようになり、やがて、三者を一人で演じられるような「余裕」が出てきます。
 M・F・Cチームワーク指導の詳細は、私が編集した『THE 生徒指導』をご参照ください。また、教師が「徳」を身に付けることこそが生徒指導に成功するための秘訣なのですが、そのことについては、私が著した『生徒指導入門』をお読みください。いずれも明治図書から出ています。

寺崎 賢一てらさき けんいち

1953年生まれ。1976年早稲田大学教育学部卒。2002年早稲田大学大学院教育学研究科修士号取得。同博士課程に4年間在学。元公立中学校教諭。麗澤大学非常勤講師。「M・F・Cチームワーク指導」の提唱者。また、構造主義による文学的文章の主題読み指導の提唱者。日本生徒指導学会」「日本道徳教育学会」「全国大学国語教育学会」「教育哲学会」に所属。著書に
)、『「分析の技術」を教える授業』(明治図書)、『問いの読み方』(吉野教育図書)、『危険な教育改革』(鳥影社)、『生徒指導入門』(明治図書)、編著書に『THE 生徒指導』(明治図書)などがある。

コメントの受付は終了しました。