教育オピニオン
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9月に向けての2W仕事術
自分で・考え・「準備」する
大和市立文ヶ岡小学校長秦 安彦
2015/8/1 掲載
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「マンダラート」の活用

 いつ、何をすべきか。それを問うことが2W仕事術の中核だ。
「いつ(When)・何をする(What)」かだ。「9月に向けて準備段階に入った今、何をすべきか」とこの時期、自分で考えればよい。
 こんな時、頼りになるのが思考のためのツール「マンダラート」だ。
今回は、これを使って、「9月に向けての2W仕事術」を体験して頂く。
 マンダラートではマンダラ図を使って思考する。(A図)のように、「9月に向けて準備」と書く。

A図
(A図)

 これで、2Wの一つ「いつ」が埋まったことになる。
 もう一つのWは「何」である。
 周辺のマス(セルという)に9月に向けて「何」を準備すればよいのか、思いつくまま言葉にして入れてみる。
 どのセルに入れるかは、とりあえず自分の感覚でよい。全てのセルが埋まらなくても、それはそれで構わない。
 キーワードは、「9月」「準備」だ。この二語の周辺に生まれる言葉たちを生み出す「連想ゲーム」と捉えて頂いてもよい。(A図)をワープロ等で作成する際は、マンダラの大外枠を10cm×10cm程度(A図)にし、一覧しやすいようにする。
 2Wは究極の原則論である。
 いつ・何をする、のかという二つの視点で教師の行動をミルのだ。
 実は、この二つの視点は正確には二つの軸の代表である。
 一つは縦軸の主体軸。もう一つは横軸の時間・空間軸になる。

図1

 主体軸とは、意識の軸と言い換えてもよいかもしれない。何かをしようとするとき、意識があれば「する」ものだ。目の前のゴミは「拾おう」という意識があって拾うという行動に結びつく。
 時間・空間軸とは、環境・状況軸と言い換えてもよいかもしれない。目の前のゴミを拾おうと思った瞬間、突風が吹いてゴミを先へ先へと動かしてしまったら、拾おうと思っていた意識が急激に失せるかもしれないのである。主体軸は、時間・空間軸の影響を常に受けるということである。

「マンダラート」による9月の準備の実際

 さて、マンダラ図(A図)が言葉で満たされただろうか。
 「どうも」とおっしゃる方のために、今回ヒントとなるマンダラを作成してみた。
 準備マンダラ(B図)である。
 この英語に一回直すという方法は、マンダラートの創始者・今泉浩晃氏の代表的著作『創造性を高めるメモ学入門』(日本実業出版社、1987年9月初版)の181頁に出ている。
 私は「準備」がわかっているようでわからなかったので、今回これを作成してみた。どうだろう、何となく準備の正体が見えて来たような気がしないだろうか。

B図
(B図)

 このマンダラを踏まえて、9月を意識しながらA図に私が書き込んでみたのが次のマンダラ(C図)になる。赤字は各セルの具体例だ。

C図
(C図)

 余談になるが、B図のようなマンダラを作っておきストックしておくと、日常の様々な準備に役立つのではないだろうか。
 ここで、マンダラートの定義について触れておく。 
今泉浩晃氏によればマンダラートは「創造的に生きるための〔メモ学〕」だという。
 また、「マンダラをつかう技術をMandalArt(マンダラート)という」とも述べられている(前掲書)。現在マンダラートは、iPad上で動く所謂アプリとして進化し続けている。
マンダラートは、よく発想法であると誤解される。確かに発想のためのツールとし
ても活用できるが、それはマンダラートの一側面にすぎない。
 A図でしたように、中心にキーワードを入れ周辺へと広げる。これなら確かに発想法と誤解されても仕方がない。いわゆる拡散思考というやつだ。
 しかし、マンダラートは同時に収束思考もできる。たった一枚のシートで同時にそれができるのである。
 方法も極めて簡単だ。 
 C図の中心を空白にし、周辺の言葉から中心となる言葉を導き出すのである。

D図

 どれかを中心に移動させるという手もあるし、共通のキーワードを書くという手もある。また、周辺の言葉をヒントに新たな言葉に置き換えるという手もある。
 「いろいろあるけれど、本当は何が中心なのか」と考えるのである。
 例えば、一学期、学級経営があまり順調に進まなかったとする。
 マンダラでその原因を一旦開いてミル。
 原因をよく眺めてミルのである。その上で、「でも、中心は何なのだろう」と考え続けるのである。開いて→閉じるイメージだ。授業の導入(中心に書く)→展開(開く)→まとめ(中心を見極める)のプロセスそのものと言ってもよいだろう。

中心は何かをつかむための「引き算発想」

 これからの学級経営や授業改善には

引き算発想

が欠かせないと私は考えている。
 学校現場は、総括がないままに、どんどん課題だけが膨れあがってきたというのが現状だと、私は思う。
「ゆとり教育」しかり「新学力観」しかりである。
 初任の先生には声を大にして申しあげたい。
「課題が何かをリストアップしたら、常に中心は何かを見極めること」
が大切であると。言葉を換えるなら、「中心をつかめ」ということだ。
 マンダラとはマンダをラすることだという。マンダは真理、ラはつかむという意味だそうだ。
 リストアップの必要数もマンダラ図が教えてくれる。最大8だ。8で十分だ。短期記憶の容量限界を示す数字としてはMiller(1956)による「マジカルナンバー7±2」がよく知られているが、最近の研究によると単語では実際平均4程度に落ち着くという報告もある。8以上浮かんだら、重複や類似がないか統合できるものはないかじっくりみて整理すればよい。
 さて、9月に向けての中心は何だろうか。私なら、「下調べ」を中心にするだろう。学校が動き始めると、教科書をじっくりと読む時間がなかなかとれない。日常の様々な事柄に追われることもある。だからこそ、子どもと同じ視線でまず教科書をじっくりと読んでおきたい。教科書用指導書ではなく、教科書そのものである。スピードが求められる今だからこそ、精読していきたい。短時間斜め読みが続くと、やがてそれは馴化してしまう。教科書斜め読み(すらしない)、そんな現状がないことを祈る。

参考:
今泉 浩晃著『創造性を高めるメモ学入門』(日本実業出版社、1987年)
野中 信行編、 秦 安彦著『新卒教師時代を生き抜く“2W”仕事術』(明治図書、2012年)

秦 安彦はた やすひこ

大和市立文ヶ岡小学校長。
1959年、東京都生まれ。1983年、東京学芸大学教育学部卒業。
著書に、『新卒教師時代を生き抜く“2W”仕事術』(明治図書、2012年)がある。

コメントの一覧
1件あります。
    • 1
    • 佐野
    • 2015/8/5 10:11:25
    マンダラートは学校現場で非常に役立つツールです。自分で実際にマンダラートを使ってみて初めて良さを実感できるツールです。
    学級経営案を考えるときにも、学級目標を考えるときにも便利でした。中心に書いたことからぶれずに俯瞰できるのが良いところです。
    子どもたちに作文を書かせたり、歴史で時代ごとに学んだことをまとめるのにも、とっても役立ちました。子どもたちは夢中になって、マンダラートのセルに書き込んでいきます。
    秦先生のマンダラートがもっともっと学校現場に普及していくことを願っています。
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