5月、新年度がスタートして1ヶ月のこの時期、掃除や給食など学級のシステムがうまく機能しているか、点検してみるとよい。
問題があれば改善を図り、うまくいっているならば定着とレベルアップを考える。
掃除を例に、私の方法を紹介する。
1 相互評価の予告
「掃除の上手な人、一生懸命に取り組んでいる人が多く、嬉しく思っています。今日の掃除の後に、皆さんから見て、掃除を頑張っている人、上手な人を教えてください。1人でもいいし、5人でもかまいません。『僕のことを言ってね』と頼むのはダメです」
これだけで、意欲が出る子も多い。掃除の後にいきなり友だちの評価をさせるのではなく、友だちの評価をすると同時に自分も評価されることをあらかじめ予告しておく。
2 状況把握
掃除の様子をその場で見て、状況を把握しておく。そうすることで、後で子どもたちが相互に行う評価の信ぴょう性がわかる。教師のひとことは影響力が大きいので、原則としてその場で教師は評価しない。
3 評価・集計
「掃除を頑張っていた人、上手な人を教えてください。人数は何人でもかまいません」
1人ずつ教師のところに来てもらい、掃除を頑張っていると思った友だちの名前を聞く。聞きながら、クラス名簿に正の字で記録する。評価を聞き取る際、「見る目がある!」とか「よく○○さんの活躍に気づいてくれました」などと評価者の評価ぶりもほめる。
競争ではないので、評価された数の多さはあまり問題にしない。掃除場所によって担当者(評価者)の人数も違う。たくさんの友だちから評価されるのにはそれなりの働きがある。一方で、たった1人でも評価してくれる友だちがいるというのも素晴らしさの表れであろう。
誰が何人に推薦されて何位、というようなことは発表せずに、「皆さん、頑張っている友だちのよさが見つけられてすごいね。たくさんの人の頑張りが友だちに認められて、先生は嬉しいです」と笑顔で言う程度にしておく。そして、これ(1〜3)を何度かくり返す。毎日続けてもいいし、数日ごとに行ってもよい。記録が数回分たまると、客観性が出てくる。
毎回たくさん名前を言われる子を発表して、掃除名人として活躍してもらってもよい。「○○さんの掃除をまねしてみよう」と盛り上げてもいいし、本人に心がけていることやこつを話してもらうのもよい。また、意図的に名前は発表せずに、「8人もの友だちから認められた人がいました。6人から認められた人が2人。5人からが3人。……誰かしらに認めてもらった人が30人もいました」と評価の状況を話すだけにして、自分はどうだったのだろうか、とわくわくさせる方法も有効である。
ここでポイントとなるのが、毎回ほとんど名前があがらなかった子たちの指導である。
目立たないけれどきちんと掃除しているのか、あるいはさぼっているのか。本人はやっているつもりでも、友だちには掃除が下手とかやっていないと見えてしまうのか。
ガツンと厳しい指導をする前に、もう一度その子たちの様子をよく観察してみよう。
一緒に掃除して、いいところを見つけてほめる。マンツーマンで具体的に掃除の仕方を教えて、上達をほめる。「一生懸命掃除してきれいになると気持ちがいいね。○○さん、ありがとう」と言葉をかける。帰りの会で頑張りを紹介するなど、その子に応じたアプローチを試みる。
全体的にうまくいっている場合には、レベルアップを図る。
隅の方を指でなぞってほこりがあることに気づかせる。ほうきのはき方や雑巾の絞り方、ゴミの捨て方など、作業レベルを上げる。服装や掃除中のおしゃべりなども改善ポイントになるかもしれない。
これでよし、ということはない。
子どもたちには、前学年までに積み上げてきた背景がある。そこを踏まえて、一歩ずつ指導を積み上げたい。教師が方法や理想を押しつけるだけになるのは避けたい。
「自分たちは頑張っている」、「自分たちは以前よりも進歩・成長している」、「先生は自分たちを認めて応援してくれる」、そう思えるような働きかけをこころがけたい。明るく、前向きな雰囲気をつくることが大切である。
5月は子どもも教師も疲れが出る時期。無理しすぎないように気をつけましょう。
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- 大庭良子
- 2015/5/9 20:09:56
お掃除のご指導の仕方、拝見しました。素晴らしいです。とても具体的な考え方と提案がすごく分かりやすいと思いました。また、名前が上がらない児童に目を向けて指導に繋げるところがやはりとても良い先生なんだと思います。ユニークさもあって、この様な具体的なご指導を頂ける先生がいらっしゃるのを嬉しく思います。