教育オピニオン
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子ども理解を生かして、学級づくりをスタートしよう!
兵庫県佐用町立上月小学校主幹教諭古川 光弘
2014/4/1 掲載

1 「学級開き」を迎えるまでに!…子どもたちを理解しておきましょう

 子どもの心をつかむには、これほどのチャンスはないといってもいいほど、「最初の3日間」は重要です。まずは、その3日間を迎えるまでに、しっかりと子どもたちを理解しておきましょう。
 子どもをつかむ資料としては、主に次のものが考えられます。

@児童調査票
A指導要録
B前担任との引き継ぎ 
C子どもたちから得られる情報

(1)まずは基本的なことを知る
 児童調査票では、基本的な事柄を押さえておきます。
 まずは名前。全員の名前を正確に覚えておきましょう。
 名前を覚えてもらうということは実にうれしいものです。しかもそれが初対面なのだからなおさらです。次に、家族構成をはじめ、家族の健康状態を把握しておく必要があります。
 特に母子家庭児童、父子家庭児童、家族の病気入院などは頭に入れておかねばなりません。そういったことを怠ると、次のような失言を発しかねないからです。
 「家に帰ったら、このプリントを、必ずお母さん(お父さん)に渡して、読んでもらって下さい」  
 最後に、身体の状況も把握しておきます。
 視力の落ちている児童、あるいは聴力、身長などのデータは頭に入れておく必要があります。特に席を決めるにあたっては、それらのことを抜きにしては考えられません。

(2)子どもの長所・特技を取り上げる
 指導要録からは、それぞれの児童の長所や特技を拾い上げておきます。
 改善点は一切取り上げず、長所・特技のみを記録します。
 さて、新学期のスタート。子どもたちの自己紹介を取り入れる学級が多いのではないでしょうか。そこでこの児童理解を生かすのです。
 教師は、子どもの自己紹介が終わるたびに、簡単なコメントを入れます。
 「○○君は、習字が得意で、現在1級までいっています」
 あるいは、次のようにクイズ形式にしてもいいでしょう。
 「△△さんは、3年生のとき、何かで表彰を受けました。何の表彰だと思いますか?」
 この方法は、学期はじめに子どもとの距離を縮めるのに、とても効果があります。
 子どもは「何で知ってるの?」と驚くと同時に、担任に好意を抱くようになるからです。

(3)1人1人を生かす努力をする
 前担任との引き継ぎの中では、指導要録では得られない有益な情報を得ることができます。
 プラス評価はもちろんのこと、気になる児童の情報、マイナス評価の情報も多く入手することができます。
 しかし私は、そういったマイナス評価行動を押さえつけたり、排除してしまうのではなく、できるだけありのままスムーズな形で受け入れたいと考えています。
 教師は、とかく影響力のある子どもを押さえにかかりますが、できるだけありのままスムーズな形で学級づくりをスタートさせたいものです。
 ただし、これはその子のわがままを受け入れるというのではありません。
 周りの子とのかかわりの中で、その子を生かすということです。つまり、周りの子も伸ばしていかなければならないのです。
 周りの子が伸びることによって、その子もまた一段と強くなれます。
 そこのところを履き違えると、学級崩壊という現実にもつながっていくだけに注意が必要です。

2 「学級開き」1日目…学級の人間関係力を高めると同時に、子どもたちに思いを語ろう

(1)「誰のことでしょう」ゲームをやろう
 私は、学級づくりは、人間関係力アップが全てだと考えています。人間関係力とは、読んで字の如く、人と人とがうまくやっていく力のことです。
 さて、その人間関係力低下の1番の原因は何か? それは、「友だちの良さが見えない、見つけられない」という点にあると、私はとらえています。
 4月から5月の出会いの時期は人間関係力を向上させるのには、これ以上にない絶好の機会です。そこで、新学期、学級開きに、次のような授業をしてみてはいかがでしょうか。
(※この実践は、単学級の場合はすぐにできますが、複数学級の場合はすぐにはできません。その場合は、5月頃実施してみるとよいでしょう)
 まず、机を丸く並べたあと、
 「人には、長所と短所がありますが、今から、友だちの長所をできるだけたくさん見つけてみます」
 「まず、プリントに自分の名前を書きなさい。できたら左側にいる人にプリントを渡しなさい。回ってきた人のプリントにその人の長所を見つけて書きなさい」
 1人約1分で1周します。
 「これから先生がプリントに書かれてあることを読み上げるので、誰のことが書かれてあるか、みんなで当てっこします」
 分からないように順番を変えて次々に読みます。もちろん、とても活発に手があがります。
 「その気になって見つければ1人1人こんなに多くの長所があるのです。みんなの中には内気な人がいますね。でもこれはしっかり考えることができる人と言えるかもしれません。つまり短所は長所に言いかえることもできるのです。人間はすぐに人の悪いところに気づきがちですが、これからの1年間は、人の良いところを見つけられる人でいて下さい」
 この実践は、これから始まる1年を楽しい気持ちでスタートさせることができます。
 同時に、大人がとらえられない子どもの長所を知ることもでき、それらは今後、学級を運営するにあたって、貴重な資料となるのです。

(2)担任の思いを語ろう
 初日は、入学式なども合わせて実施される学校が多く、ゆっくりと時間を取れない学校が多いです。
 そこで、せめて担任のこの1年にかける思いだけでも子どもたちに語りましょう。
 初日は、教師の言葉が心に届きやすいのです。学級通信などを用意して、しっかりと自分の思いは届けたいですね。

3 「学級開き」2日目…学級の願いを共有し、授業を開始しよう

(1)この1年間のねがいを定めよう
 2日目では、どういう学級にしたいかというイメージを子どもたちにもたせます。そして、そのための話し合いを徹底的にやるとよいでしょう。
 こうしてできた学級像は、教室の黒板の上に掲示するなど、いつでも振り返ることができるようにしておきます。

(2)授業を始めよう
 これまでに述べてきたことをはじめとして、4月当初は、子どもたち同士の人間関係を深めるための「横糸」を紡いでいくのですが、当然、この「横糸」を紡ぐことと同時に、教師と子どもたちとの関係づくりも行っていかねばなりません。よく言われる「縦糸」です。
 これを実行するための方法は、いくつも考えられますが、とりあえずは1点に集中した方がよいでしょう。授業を組織することを考えるのです。授業がきちんと進行していると、学級づくりはスムーズに展開します。
 ですから、2日目にして、さっそく授業を開始します。しかも、その授業には「10分間パーツ教材」を使います。その理由は、45分間、集中できない子どもたちが、最近特に多いということがあげられます。「10分間パーツ教材」を活用した授業とは、45分の授業をいくつかのパーツに分けて、短いスパンで展開する授業形態のことを言います。学年始めや、落ち着かない学級に特に有効な指導法です。
 「10分間パーツ教材」を1時間の授業に効果的に配列し、1つ1つ確認しながら授業を進行することにより、子どもたちは驚くほど授業に集中するようになります。
 詳しくは、『1年生の授業 10分間パーツ教材で集中力を高める』(明治図書 古川光弘著)を参考にしていただければと思います。

4 「学級開き」3日目…学級のシステムをつくりあげるのと同時に、日記を開始しよう

(1)学級のシステムは早急につくりあげよう
 3日目は、まずは早急に学級のシステムをつくりあげてしまいましょう。そのイメージは、担任がいなくても、学級が動くことができるシステムづくりです。
 例えば、1人1役の当番、文化・スポーツ・レク的要素を含んだ係、日番の仕事、朝の会・終わりの会のやり方、給食・掃除のやり方の確認などです。
 これをきっちりやっておかないと学級が前に進みません。

(2)連続日記を開始しよう
 さて、子どもたちとの縦糸を強化するための絶対的なアイテムを1つ紹介します。「日記」です。
 私は、毎年、日記を書かせることにしています。どの学年でも書かせます。しかも毎日書かせます。1年生でも毎日書かせます。日記指導の成功のポイントは、「毎日書かせること」なのです。
 とにかく、毎日書かないとうまくならないし、本音も出ません。

(3)楽しいことをしよう
 さて、これまでのようなことができたら、ここらあたりで、楽しいゲームやお話の時間をもちましょう。
 先生は、厳しいだけではなく、楽しいなぁということを感じとらせることも縦糸張りには有効です。そのためには、たくさんのゲームやお話を日頃から、たえずストックしておきたいですね。
 さあ1年間、頑張りましょう!

古川 光弘ふるかわ みつひろ

1962年兵庫県生まれ。現在、教職29年目。
「子どもの心をどうつかむか」を生涯のテーマとして、日々の実践に当たる。
「サークルやまびこ」所属。著書に『学級づくり成功の原則 魔法のアイデア50選』(明治図書)等がある。
この3月まで、教育新聞(教育新聞社)に『古川流・学級経営の真髄〜教室ワンダーランド計画』を連載!

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