教育オピニオン
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「エネルギー」の授業で日本の未来を考える
北海道洞爺湖町立とうや小学校赤塚 邦彦
2013/11/15 掲載

 私は高学年を担任した時に「エネルギー」についての授業を行う。エネルギー政策は国全体に関わる重大な問題であるからだ。ここでは、私が2年前に行った「再生可能エネルギーについて、資料から具体的な数値を読み取り、読み取った情報から国家の大問題である未来のエネルギー問題について自分の考えをもたせる」実践を紹介する。

1.授業を提案するにあたって

 2011年3月11日に起こった「東日本大震災」。大震災の結果生じた福島第一原子力発電所の大事故により、エネルギー、特に電力の供給不足がもたらされた。産業や社会生活は大規模な電力不足を通して大きな影響を受けている。様々なマスコミの報道により情報が錯綜している。エネルギー政策は国全体に関わる重大な問題である。「日本のエネルギー」について、「具体的な数値を出す」、「具体的な固有名詞を出す」、「実現可能なことなのか」という3点に教師が徹底的にこだわることが重要だ。未来を生きる子どもたちが「風評」に惑わされず、「事実」に即して「日本のエネルギー」について考えていけるような授業を教師はしなければならない。そのための1つの手段として「日本の未来のエネルギー」テキスト全7巻を作成した。本授業は、そのテキストを使った「再生可能エネルギー」に焦点を絞ったものである。

2.「再生可能エネルギー」をめぐる近況

 2011年5月下旬にフランスのドーブルで行われたG8サミット。その中で当時の総理は再生可能エネルギーについて「2020年までに自然エネルギー電力20%」、「太陽光パネル1000万戸設置」と発言した。これは可能な数値なのだろうか。ちなみに、現在の新エネルギーの電力量は地熱と合わせて1%である(「原子力・エネルギー図面集2011 電源別発電電力量の実績および見通し」より。2009年の数値)。また、後者は正確な数値ではないが100万戸には到達していないと思われる。当時の総理が発言したことは実現可能なことなのだろうか。
 2011年3月11日に「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案」を閣議決定した。この法律案は、エネルギー安定供給の確保、地球温暖化問題への対応、環境関連産業の育成等の観点から重要な再生可能エネルギーの利用拡大を図るため、再生可能エネルギーの固定価格買取制度を導入するためのものである。
 このように「東日本大震災」、それに伴い起こった福島第一原子力発電所の大事故の後よく話題にされるのが「再生可能エネルギー」についてである。「再生可能エネルギー」は原子力発電に変わるものなのか否か。具体的な数値をもとに考えていくことが必要である。

3.単元の計画

(高学年の総合的な学習の時間「環境・エネルギー」単元として設定。全15時間)
第1次 日本のエネルギーの現状を知ろう    (第1巻使用 2時間)
第2次 エネルギーがどのようにできているのかしくみを知ろう
                      (第2巻使用 2時間)
第3次 原子力・化石燃料・再生可能エネルギーのよい点・課題点を比べ、日本のエネルギーを考えよう。
         (第3〜6巻使用+調べ学習 6時間)[本時は第4時]
第4次 近い将来・遠い将来の日本のエネルギーを考えよう
                 (第7巻使用+調べ学習 5時間)

4.授業の展開

[指示] 今からおよそ1ヶ月前、フランスでG8サミットという国際会議が開かれました。その中での日本の総理大臣の発言です。読んでごらんなさい。

(外務省HPを読ませる)

[発問] つまり、総理はどんなエネルギーを増やしていくといっているのですか。
[指示] 太陽光や風力発電などのように繰り返し何度も使えるエネルギーのことを「再生可能エネルギー」といいます。言ってごらんなさい。再生可能エネルギーは日本のエネルギーを支えることはできるのでしょうか。
[指示][説明] エネルギーの問題を考えるためには確実に電力を届けることができるのかということが大切です。これを「安定供給」といいます。言ってごらんなさい。例えば、総理が言っていた太陽光パネルで考えてみます。
[発問] 中央小の屋根についている太陽光パネルです。どんなデータがあれば太陽光発電が安定供給しているか、していないかを考えることができますか。
[発問] 今年5月の発電量のグラフです。この大きく下がっている日にはどんなことがあったと予想されますか。
[説明] エネルギーの問題を考えるためには「コスト」も大切です。コストが低いと電気を安く使うことができるのですね。「天然ガス」「石炭火力」「原子力」「太陽光」「風力」の発電コストを予想します。コストの低い順に予想を書きましょう。予想を書いたら資料で確認しましょう。エネルギーの問題を考えるためには「発電量」も大切です。
[発問] 総理は2020年までに20%と言っていましたが、現在は何%ぐらいだと思いますか。
[指示][説明] 資料[「5つの発電方法のコスト」(「日本の未来のエネルギー」第6巻に掲載)]で確かめてみましょう。もし、太陽光で原子力1基分と同じだけの発電量を得ようとしたならば、山手線内側すべての土地に太陽光パネルをずらっと並べなくてはならないと言われています。
[発問] 再生可能エネルギーは日本のエネルギーを支えることはできるのでしょうか。
[指示] 今、日本のエネルギーについて真剣に考えなければならない状況にあります。事実を自分で確認し、判断していくことが大切なのですね。再生可能エネルギーについての自分の考えを書いてみましょう。
赤塚邦彦あかつか くにひこ

北海道洞爺湖町立とうや小学校教諭

1979年北海道生まれ。2002年3月北海道教育大学岩見沢校卒業。現在、北海道洞爺湖町立とうや小学校教諭。法則化アツマロウ代表。◆ホームページ
著書に『算数のつまずきには法則がある クラス全員クリアできる、驚異のスモールステップ指導法』(2012年)、編著書に『若いあなたがカスタマイズ出来る!2向山型スキル・算数の授業パーツ100選』(2011年)(いずれも明治図書)がある。

コメントの一覧
2件あります。
    • 1
    • 名無しさん
    • 2013/11/20 18:15:02

    風評に惑わされず、自分の考えを持てる子どもを育てていきたいです。
    大人でもなんとなくよさそうだから・・・と考えている人が多いのではないでしょうか。
    何かを選択するとき、メリットとデメリットを知った上で決断すべきだと思います。
    事実をもとに考える授業、とても大切だと思います。
    • 2
    • 世界から日本を考える
    • 2013/12/27 7:00:47
    世界で今、太陽光発電がどれだけ伸びているかご存知ですか?
    ドイツでは、再生可能エネルギーの割合はどうなりましたか?
    デンマークでの風力発電はどうでしょう?
    日本という狭い視野にとらわれず、世界の動向、とりわけ最新のデータに基づいて、考える授業をお願いします。
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