教育オピニオン
日本の教育界にあらゆる角度から斬り込む!様々な立場の執筆者による読み応えのある記事をお届けします。
日本一ハッピーな学校をつくろう!
大阪市立聖和小学校教諭金大竜
2011/12/28 掲載

何のためにやるのかを明確にする

 「人は幸せになるために生まれてくる。だから、学校はハッピーになるために来るところ!」
 これは、ぼく自身が大切にしている思いだ。4月、子どもたちに必ず出す宿題がある。それは、なんのために学校にくるのか考えてくること。子どもたちは、いろいろと考えてくる。
 「勉強ができるようになるため」「友だちをつくるため」「自分の夢に近づくため」。どれも大切な目的だ。子どもたちが考えたことをすべて板書し、「これがすべてかなうとどんな気持ちになる?」と子どもたちに問う。そうしながら、みんなで「日本一ハッピーな学校をつくっていこう」という目標をつくる。だから、ぼくのクラスはどんなことが起こり、どんなことを話し合うことになっても基準は一つ。それは、そのことが自分も含めたみんなのハッピーにつながるのかどうか。基準が明確だといつも価値判断がぶれない。どんなクラスをつくりたいのかが明確なこと。これが何よりも大切だと考える。
 では、何のためによいクラスをつくるのか。それは、個を伸ばすため。そして、個が伸びるハッピーな集団になるためには、あいさつなどの当たり前と言われることを当たり前以上のレベルでできることが一つの条件になる。

価値観を共有できるように

 当たり前のことを当たり前以上にできるようになるためには、子どもが自分で価値判断をして動けるようにならないといけない。
 しかし、子どもに様々な価値観を多く語っても、十分には伝わらないことがよくある。それは、子どもの“ちゃんとやってる”と教師の“ちゃんとやってる”に差があるからだ。
 また子どもは、教師が懸命に話したルールに従うのではなく、その場のムードに大きく左右されるため、話したからといって行動に移すわけではない。では、どうするのか? その行動のよさを楽しみながら体感できるようにすればいい。楽しみながら体感して、その行動の価値観を共有できた上で、当たり前のことをできていなければ叱咤激励し、できていれば認めながらどんどん当たり前以上までに高めていくといい。

たかがあいさつ。されどあいさつ

 例えば、あいさつ。ぼくは4月、子どもとあいさつ勝負をする。ルールは、クラスが30人だとしたら、16人の子どもにぼくが先にあいさつすればぼくの勝ち。16人の子どもが先にぼくにあいさつできれば子どもたちの勝ち。
 1日目。本気で勝ちにいく。廊下の柱に隠れて、急に出てあいさつ。子どもが豆粒のようにしか見えない遠くにいても、すかさずあいさつ。時には、配膳台の中に隠れておくというのもやる。そして教室に入るなり、子どもに「ありがとう。みんなのおかげで朝からたくさん勝てて先生はハッピーです。では授業始めましょう」と言う。ここでは一切、あいさつとはどうすべきかなんて話さない。2日目も同じように勝ちにいく。
 そして、3日目。子どもが登校してくる時間に運動場で何か作業でもしておく。そうして、わざと背中を見せておく。すると、子どもたちが大きな声で遠くから「先生、おはようございます!」と言うのだ。少しやんちゃな男の子がきっとだれよりも大きな声であいさつしてくる。そして、その日は教室に上がり、「今日はあいさつ勝負に負けて悔しいなあと思っていたけど、なんか気持ちいいなあ。心が温かいわ。なんでかわかる?」と子どもに問う。ここで子どもとどんなあいさつが人をハッピーにするのか話し合う。そのときは、大きな声であいさつしたときの気持ちについても話し合うといい。そうすると、子どもからあいさつで大切にしたいことが、どんどんと出てくる。
 学年が上がれば上がるほど、子どもはどんなあいさつがいいのか知っている。知っているのにやらない。それは、そんなムードじゃないから。あいさつもゲームにして楽しめばあっという間に広まる。しかし、自分から元気にできるだけで子どもも教師も満足してはならない。1つできれば、次のレベルの高い価値観に気付けるようにすることが大切だ。みんなで人がハッピーになるための方法を考えるのだ。
 ちなみに、ぼくのクラスの子どもは、地域で朝の登校を見守ってくださる老人会の方に対して、立ち止まり、帽子をとって笑顔であいさつをして、ハイタッチする。すると、老人会の方が喜ぶだけでなく、いろんな大人たちからほめられ、子どもたちのモチベーションはどんどんと上がっていく。
 たかがあいさつ。しかし、そのあいさつも当たり前以上を少し意識するだけで人に感動してもらえる。教師が、そして、子どもが諦めたり、また、現状に満足したりすると、そこで伸びは止まる。伸びが止まるということは、後退するということだ。そうならないためにも、教師は常に次の一手をイメージしておく必要がある。あいさつ以外でもできる限り体感することでよさを知り、価値観を共有していけるようにしたい。
 
 ぼくたちはプロの教師だ。その行動のよさを語るだけならだれでもできる。でも、そのよさを子どものものとして定着させることはなかなか難しい。子どもに体感させ、価値観を育てる。そんな教師でありたいと思う。

金大竜きむ てりょん

大阪市立聖和小学校教諭。
「日本一ハッピーな学校をつくる」ことを夢見る教職10年目の31歳。
「あいさつ自動販売機」など、学級づくりにかかわるユニークな取り組みが注目を集め、様々なメディアで取り上げられている。また、『明日の教室』はじめ全国各地のセミナーで講師を務める。
ブログ「日本一ハッピーな学校をつくろう」において、日々の学級での出来事や取り組みを発信中。
2012年明治図書より単著を刊行予定。

コメントの一覧
3件あります。
    • 1
    • いくさん
    • 2011/12/28 23:09:01
    何度も聴いている話でもやっぱりいい!!!
    思わず印刷・・・・・・そして中学3年でも3学期卒業前に挨拶勝負をやってみようというき持ちになりました。ありがとうございます。!!!
    • 2
    • 金大竜
    • 2011/12/29 11:27:21
    いくさん
    ありがとうございます!!
    是非やってみて、どうなったか教えてください
    めっちゃハッピーになりました
    • 3
    • FB ただけんじ
    • 2012/1/20 15:43:29
    早速おじゃましました(笑)
    挨拶の大切さわかりました ありがとうございます
    その効果また報告します
コメントの受付は終了しました。