教育オピニオン
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算数授業が変わる魔法の志水メソッド
愛知教育大学大学院教育実践研究科教授志水 廣
2011/9/30 掲載

2つの算数授業を参観して

 ある算数の授業を参観しました。TT形式なので2人の教師が机間指導をしているにもかかわらず、A子は鉛筆をもったまま5分間も考えていました。その間、2人の教師はA子にかかわりませんでした。これはどういうことなのでしょうか。その子はできなくてよいと思っているのでしょうか。また、別の授業では、教師は教卓に座っていて、できた子どもからノートをもって来させて○付けをしていました。できていないB子はただじっと自分の机で待っていました。参観していてとてもせつない気持ちになりました。

 「できた子どもからノートを持っておいで」という指示は、「できない子どもはノートをもって来ることができない」ということです。教師が本当に手立てを打ちたい子どもは、できない子どもだと考えます。それなのに放置されたままなのです。志水メソッドの1つである○付け法は、教卓方式ではなくて机間指導方式です。だから、現場で事件が起きていても対処できるのです。どの子どももできるようにと教師が働きかけるのです。

志水メソッドとは?

 この一瞬一瞬の間にも、算数・数学の授業で、子どもたちや教師が困っており、教師も困っていると思います。それを救う鍵は、○付け法を初めとする志水メソッドにあります。これらをやれば、確実に教師が変わり、授業が変わり、子どもが変わります。

  1. 「○付け法」とは、子どもが問題を解決してる際に、教師が机間指導方式で解決過程及び結果に対して、ノートに○をつけていく方法です。即時評価と即時指導が基本です。
  2. 「意味付け復唱法」とは、子どもの言葉で授業を作るために、子どものよい発言に対して数理の真意を明確にするために、復唱しながら真意に迫る切り返しの方法です。
  3. 「音声計算練習」とは、簡単な計算を声に出しながら素早く計算練習していく方法です。
  4. 「適用問題定着法」とは、学習した知識や技能に対して練習問題のパターンを変えながら一斉指導で練習していく方法です。

 子どもに○をあげる、言い換えれば、子どもを○にして学校から帰すのが教師の役割です。×(バツ)にして、×の思いを持たせて帰してはなりません。このことを全国の教師に対して訴えたいのです。

今後、10年間にやりたいこと

 今から10年前、突如として教師塾が立ち上がりました。私の周りの教師達が奮起して算数・数学授業力アップ研究会(愛称:志水塾)ができあがりました。目的は、教育界への明日のリーダーを育てることでした。具体的には、○付け法や意味付け復唱法などの志水メソッドの習得による授業改革を行う機関です。当時、東京都でも教師塾はありませんでした。全国10か所で毎年開催し、着実に各地に授業の上手なリーダーが育ちました。

 その成果が認められて、先日、テレビ東京の番組「爆笑問題の大変よくできました!」に○付け法が取り上げられ、志水はスーパーティーチャー12人の1人に選ばれました。また、志水塾は小学館の『総合教育技術』8月号にも研修講座として取り上げられました。これらは大変光栄なことです。

 今年4月には、志水塾と共に新たに「授業力アップわくわくクラブ」を設立し行動を開始しました(詳しくは、志水廣の公式ホームページを参照)。12月18日(日)には、東京の青山で算数・数学授業力アップセミナー東京学習会を国立教育政策研究所の銀島文先生、明治図書編集部の木山麻衣子氏を迎えて開催します。ぜひお越し下さい。

 部分肯定、長所伸展法を根本とする志水メソッドの理念に共感・共鳴してくださる皆様の力の結集が必要です。どうか、わくわくクラブに力をお貸してください。未来は我々が創るのです。明日をになう子どもたちに自己肯定感がもてる大人に育ってほしいと願います。そのために、今後10年間、志水廣は、行動します!

志水 廣しみず ひろし

1952年神戸市生まれ。神戸市の公立小学校、1983年兵庫教育大学大学院修了、筑波大学附属小学校教諭、愛知教育大学数学教育講座助教授、同大学教職大学院教授を経て現職。専門は数学教育学、授業づくり。大学院生に授業づくりについて教鞭をとりながら、各地の算数・数学の研究会の指導にあたって活動中。授業力アップのための教師塾(志水塾)も開催している。「楽しい算数の授業」編集代表。

コメントの一覧
1件あります。
    • 1
    • 小4男児の保護者
    • 2012/7/2 16:14:12
    全ての先生が、”子どもを○にして学校から帰す。×(バツ)にして、×の思いを持たせて帰してはなりません。”という思いで教えてほしい。帰宅後、算数がわからなかったと、ポロポロ泣きながら話す子どもに、「ちゃんと聞いてた?!」と思わず聞いてしまいました。「しまった!」と思ったのですが、既に発した言葉は元には戻りません。それから、毎日、宿題とは別に 同じところを何度も何度も繰り返し練習しました。単元終わりのテストでは100点をとって帰ってきました。やれば出来ることを身を持って知りました。
    どこまでが家庭で、どこまでが学校教育なのでしょうか。どこまで先生を頼って良いのでしょうか。保護者として悶々とした日々を送っています。

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