事例で学ぶ!授業で行う「合理的配慮」の実際
クラスに苦手さのある子がいたら…どんな配慮・支援ができるのか? 事例に学び、明日からできる工夫のすべて
事例で学ぶ!授業で行う「合理的配慮」の実際(4)
落ち着きがなく集中力が続かない小学生への合理的配慮
国立特別支援教育総合研究所インクルーシブ教育システム推進センター
2017/7/21 掲載

今回紹介する事例

インクル先生

 今回紹介する事例は、落ち着きがなく集中力が持続しないDさんの事例です。Dさんは小学校の通常の学級に在籍していますが、個別の声掛けがないとなかなか授業に参加できません。また、書字が苦手で、特に板書がなかなか上手くできません。それらの困難さに対して在籍する通常の学級の中での支援と、通級指導教室での学習を行った事例です。

Dさんについて

Dさん

 Dさんには、注意欠陥多動性障害と学習障害の特性があります。学習面では、書字が苦手でノートに文字や数字を上手に書くことができなかったり、板書を写すことに苦労したりしています。また、学習の理解や興味にむらがあり、国語の文章の読み取りがなかなかできないために上手く取り組めませんが、算数の計算などには積極的に取り組みます。
 行動面では集中力が持続しないために、個別の声掛けがないと授業に参加できなかったり、学習の準備や着替えに時間がかかってしまい、次の授業に遅れてしまったりする事が多くあります。また、身の回りの整理整頓が苦手で、机の中に無造作に物が入っていたり、机の周りに物が散乱していたりする事があります。
 人とは友好的に関わり、積極的に話しかけますが、相手がよく分からない話題をやや一方的に話しかけることもあります。また、相手の話を聞くことはあまり得意ではありません。

子どもの特性に対応した合理的配慮の実際

 学校では、Dさんに、下記のような取組を行いました。

1 書字の困難さへの配慮

  1. 板書を写すことの困難さに対して、教員は黒板に字を書く際に、文字を短めに区切って読み上げながらゆっくり書くようにしました。
  2. 修正が必要な時には、どのように修正するとよいか、具体的に伝えて、改善できた場合は肯定的な評価をする言葉かけをしました。

2 行動面や生活面への配慮

  1. 集中力が途切れてしまい、活動に時間がかかってしまうことに対しては、「あと30秒で書くようにする」など、具体的な目標時間を示すようにしました。
  2. 身の回りの整理整頓が苦手なため、担任が机の中の整理を促す声かけをしたり、手伝ったりしました。
イラスト

3 人との関わりへの配慮

 他の人とのコミュニケーションでは、話しかけられた時には相手の顔を見て返事をしたり、挨拶したりすることを全体指導の中で声かけしました。

4 通級指導教室での指導

  1. ソーシャルスキルトレーニング小集団指導で、自分の気持ちや考えを伝える練習や友達への声のかけ方など、コミュニケーションスキルの学習を、教員が演じる寸劇を見て学習したり、ロールプレイを演じたりして練習しました。
  2. 書字のトレーニング書字に必要な腕の筋肉を意識して使うための練習として、大きな円を何重も描く練習をしたり、運筆の練習として迷路からはみ出さないようになぞって書いたり、点と点を正確に鉛筆でつないで書いたりする練習をしました。

まとめ

 集中力が持続せず学習意欲が低いDさんのような子供は、失敗経験が多いため、自信が持てずに更に意欲が低くなることがあります。そうしたことを防ぐためにも、子供の実態に応じた学習内容の調整を行う事と、短い時間の中で実現できる具体的な目標を示して集中力が持続できるようにする事が重要です。
 また、コミュニケーションの不得手な部分については、普段の学校生活の中で、本人が受け入れやすい形で好ましいやりとりを促すとともに、個別指導や小集団指導の中でコミュニケーションスキルの学習をする事が効果的だと考えられます。

 インクル先生

 参考になりましたでしょうか?
 本コーナーでは、インクルーシブ教育システム構築支援データベース(インクルDB)の事例を紹介しています。
 もっと詳しく知りたい先生は、さらに詳しい情報をファイル名のH27 0244PT3-LDADで検索する事でダウンロードできます。→実践事例データベース

国立特別支援教育総合研究所インクルーシブ教育システム推進センターこくりつとくべつしえんきょういくそうごうけんきゅうしょいんくるーしぶきょういくしすてむすいしんせんたー

平成28年4月地域や学校現場におけるインクルーシブ教育システムの構築を強力に支援することを目的に特別支援教育総合研究所内に開設された。インクルーシブ教育システム推進センターが中心となり、「教育委員会や学校が直面する課題の解決に資する研究」、「国内外の最新情報の発信」、「地域や学校に役立つ情報提供や支援」に取り組んでいる。
国立特別支援教育総合研究所
インクルーシブ教育システム推進センター

コメントの一覧
1件あります。
    • 1
    • ホネホネ先生
    • 2017/8/4 18:12:48
    注意欠陥多動症の子どもは骨盤の歪み、背骨の歪みなど身体的な不具合が原因で、長時間同じ姿勢を続けることができないのです。お産の時に無理な姿勢で引っ張り出されとか、双子で妊娠中に無理な圧迫をうけたとか、幼少期に転落、事故などで強い衝撃を受けたことが原因だと考えられます。骨盤の歪み、背骨の歪み、肩の骨などを治すことで多動症は治ります。
    精神的な要因ではありません。
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