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中学校学習指導要領解説 中学校数学の注目ポイント
教育zine編集部松野
2017/7/31 掲載
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 新しい学習指導要領解説が公開されました。今回は、中学校数学について大きく変わった点をいくつか具体的におさえていこうと思います。

 今回の改訂では、現行の「資料の活用」の領域の名称を「データの活用」に改め、領域の構成を「数と式」「図形」「関数」「データの活用」の四領域とすることが挙げられています。
 この「データの活用」の内容ですが、度数分布表やグラフを読み取る活動や、ドットプロットの読み取りが小学校での履修内容となり、中学校ではさらに統計的な内容を充実させること、また、引き続き、言葉や数、式、図、表、グラフなどの数学的な表現を用いて論理的に考察・表現したり、その過程を振り返って考えを深めたりする学習活動を充実させることが示されています。特に現行の内容から変化がみられる、1・2年生の学習内容に焦点を当てて見ていきましょう。

1年生でのデータの活用
 1・2年生の「データの活用」領域の学習は、大きく2つの項目に分かれます。

・データの分布
・不確定な事象の起こりやすさ

 1年生の「データの分布」については、今まで通りヒストグラムや相対度数などの必要性を理解するほかに、「コンピュータなどの情報手段を用いるなどしてデータを表やグラフに整理する」、「目的に応じてデータを収集して分析し、そのデータの分布の傾向を読み取り、批判的に考察し判断する」ための指導が盛り込まれます。
 授業の展開としては、以下のような例が挙げられています。

例えば、クラス対抗の大縄跳び大会で、あるクラスの選手が1列に並んで跳ぶのと、2列に並んで跳ぶのとでは、どちらがより多くの回数を連続で跳ぶと見込めるかについて考察することを考える。この過程で、2種類の並び方で跳んだ回数の記録を用いて度数分布表やヒストグラムを作成したり、相対度数などを求めたりして分布の状況などを調べることが考えられる。このことを基にして、「どちらの並び方の方が多く跳べているといえるのか」について批判的に考察し判断する。ここで、批判的に考察することとは、物事を単に否定することではなく、多面的に吟味し、よりよい解決や結論を見いだすことである。

 データの収集の仕方は適切か、根拠としてふさわしい代表値を求めているか、傾向をよみとりやすい形で表せているかなど、いくつかのチェックポイントを踏まえて適切にデータの処理と読み取りが行えているかを確認し、結論を導く力が求められています。

 また、1年生の「不確定な事象の起こりやすさ」の項目では、多数の観察や試行の結果を基に、不確定な事象の起こりやすさの傾向を読み取ることが求められます。
 例として、

あるボウリング場で、貸出用の靴をすべて買い替えることを考える。「各サイズでどれくらいの数の靴を購入すればよいのだろうか」等の問題を見いだし、毎年ほぼ同じ傾向が見られることから、過去1年で貸し出した靴の回数のデータを基に靴を買い替える場合、各サイズの相対度数を求め、購入足数を決定する際の参考にすることが考えられる。

ということが挙げられています。相対度数を確率とみなして事象の起こりやすさの傾向を予測し、数学と日常生活や社会との関係を実感できるようにする、ということも重要な学習の1つと位置付けられています。

2年生でのデータの活用
 2年生では、1年生と同様の2項目について、さらに深める学習を行います。
 「データの分布」については、四分位範囲や箱ひげ図を学習することで、複数の集団のデータの分布に着目し、その傾向を比較して読み取り、批判的に考察して判断する力を養います。四分位範囲や箱ひげ図は、これまで中学校では履修しない事項でしたが、データの散らばりの度合いを表す指標として広く用いられており、データの中に極端にかけ離れた値があった場合にもその影響をほとんど受けないという性質があります。
 授業の展開としては、以下のような例が挙げられています。

例えば、中学生の体力は以前に比べて落ちているといえるかどうかについて考える。データとしては、生徒にとっての考察のしやすさから、同じ学校の中学校2年生男子の体力テストの結果を用いることができるであろう。そこで、ハンドボール投げに焦点化し、2000年、2005年、2010年、2015年のデータから箱ひげ図を作成するなどして分布の傾向を比較して読み取り、これを基に考察する。

 また、さらに詳しく検討するために、範囲の違いに着目して2010年と2015年に絞ってヒストグラムを作成し分布を詳しく比較すること、毎年の中央値や平均値のデータから経年変化の様子を調べること、さらに「ハンドボール投げのデータだけで十分か」と批判的に考え、握力などほかの体力テストのデータを用いて一層詳しい考察を加えることも例として挙げています。
 小学校から中学校2年生までに学んだデータの表し方とその特徴を十分に理解し、情報を多面的に吟味できる力を養うことが求められていると言えそうです。
 さらに、この1つの学校の結果から全国の中学生全体について考察する姿勢は3年生で学習する「標本調査」で必要とされており、全体を通して「データの活用」の領域では、小・中学校を通して各学年で学んだことを関連付けながら、データを基に統計的に問題を解決する力を身につけさせていくことを目標としています。

数学科における主体的・対話的で深い学び
 また、今回の改訂では、全教科を通して「生徒の主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善を行うことが重要視されていますが、数学科においては、これまでの実践を否定し、全く異なる指導方法を導入しなければならないということではないということが示されています。
 今回の指導要領解説では、この授業改善における配慮事項として、考えを表現し伝え合うなどの学習活動を設定すること、コンピュータ・情報通信ネットワークなどの情報手段の活用などが掲げられており、特に数学科では、

各学年の「データの活用」においては、その内容との関連性を踏まえ、「コンピュータなどの情報手段を用いること」と記述しているが、他の内容においてもどのような指導にコンピュータなどの情報手段を用いることができるかを検討して、積極的な活用を図ることが必要である。

と述べられており、情報機器やネットワークの使用方法を多方面から捉え、活用していく姿勢が重要になるかもしれません。具体的に「主体的・対話的で深い学び」を授業にどのように落とし込んでいくかはまだ模索中ではありますが、コンピュータや情報通信ネットワークの活用もその一助となるのではないでしょうか。

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