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お金のかかる新学期!「教育にかかる費用」を支援する自治体の取り組み
教育zine編集部小幡
2015/4/30 掲載

 新学期が始まり、そろそろ新しい環境にも慣れてきた頃ではないでしょうか。新しい学年、新しいクラス、新しい友達……。期待に胸が膨らみますが、当然、新しい教科書・教材も必要になってきます。新入生に至っては、制服や体操着なども購入する必要がありますし、新学期は色々とお金がかかる時期でもあります。
 今回は、そんな教材費・教育費・給食費など、「学校教育にかかる費用」に注目し、地方自治体でどんな取り組みをしているのかみてみたいと思います。

教育にかかる費用はどのくらい…?

 そもそも教育にかかる費用はどのくらいなのでしょうか。平成24年度に文部科学省が行った「子どもの学習費調査」によると、全て公立学校に通った場合でも、小・中学校で必要な学習費総額は【75万6000円】にもなります。少子化が問題視されている今、子育てを支援することはとても大切です。学習費における保護者の負担額を減らすことも、重要なことの一つではないでしょうか。
(学習費調査について、詳しくは、2014/1/31掲載の「子どもの学習費調査―その結果から見えてくること」をご覧ください。)

各自治体で行っている取り組みとは…?

 学校教育にかかる費用について、各地方自治体が行っている様々な取り組みがあります。最近の取り組みの中で、注目のものをいくつか紹介したいと思います。

〇山梨県早川町の取り組み
 山梨県の早川町は、日本一人口の少ない町です。人口約1000人という小さい町ですが、「子どもは地域の宝」とし、子育て支援に大変力を入れています。
 早川町のホームページで、子育て支援の内容を詳しくみることができます。ホームページによると、早川町では、平成24年度から町内の小中学校に通学する児童や生徒の義務教育にかかる経費を町が負担することを決めました。経費には、教材費・給食費・修学旅行費などが含まれます。早川町では、保護者負担額なしで、義務教育を子どもに受けさせることができるということです。
 さらに、早川町は、「頑張る若人応援金」という応援金の交付事業も行っています。これは、下記の条件を満たす人に「応援金」が交付されるというものです。

5万円 ・・・早川町に住所を有しかつ居住する者で、平成17年4月1日以
      降に早川中学校に入学し、卒業時まで継続して在籍した者
10万円・・・早川町に住所を有しかつ居住する者で、平成19年4月1日以
      降に早川中学校に入学し、中学校卒業時まで継続して在籍
      した者
15万円・・・早川町に住所を有しかつ居住する者で、保育所に入所する
      場合は町内の保育所に入所し、平成19年4月1日以降に町内
      の小学校に入学し、早川中学校卒業時まで継続して町内の
      学校に在籍した者
20万円・・・早川町に住所を有しかつ居住する者で、平成19年4月2日以
      降に生まれ、出生時から継続して早川町に住所を有し保育
      所に入所する場合は町内の保育所に入所し、小学校から早
      川中学校卒業時まで継続して町内の学校に在籍した者

 このほかにも、保育所の給食費の補助金を出すなど、早川町は子育ての支援を積極的に行っています。

○京都府伊根町の取り組み
 2月8日の京都新聞の記事によると、京都府伊根町でも、今年度から小中学校の給食費と修学旅行費、教材費を所得制限なしに無償化することを決めたそうです。平成26年度までは各家庭が負担していたこれらの費用を町で負担することとなります。給食費・修学旅行費・教材費を無償化することは、平成26年11月の町長選で選ばれた吉本秀樹町長が、その選挙時に公約に掲げていたことです。町民の多くが、このような形での子育て支援を望んでいたということが伺えます。また、伊根町民以外でも、伊根町のような子育て支援を望む人は多くいるのではないでしょうか。

〇神奈川県海老名市の取り組み
 神奈川県海老名市では今年から、「新入生」にスポットを当てた新しい取り組みが始まりました。海老名教育委員会の広報紙「えびなの教育第9号」でその内容が紹介されています。
 新入生は新しい制服や体操着も購入する必要があり、他学年よりも新学期の出費が多くなります。海老名市では、そんな負担の大きい新入生の保護者に配慮し、今年度の4月から新入生の教材費の一部を、市が負担することを決定しました。負担額は、小学1年生が一人上限1万円、中学1年生が一人上限1万7千円です。
 特に負担の大きい新入生の保護者だけでも支援していくことが、子育てしやすい環境への一歩になると考えられます。また、体操着などは、市で一括購入することで1着あたりの金額を抑えられる可能性もあります。ただ闇雲に、自治体が教育にあてる予算を増やす、というだけでなく、自治体が実態を把握し、このように購入方法を工夫するなどで、無駄のない支援ができるようになると考えられます。

〇福岡県福岡市の取り組み
 福岡市では、今年度から、市立小学校の通学用帽子を男女で同じものにし、キャップ型の一種類にすることを決めました。今までは、男子児童は前につばがあるキャップ型の帽子、女子児童は、一周ぐるりとつばがあるタイプの帽子でしたが、それをキャップ型のみにすることになったのです。この取り組みの一番の目的は、性同一性障害の児童への配慮です。帽子に男女差をなくすことで、性同一性障害の児童の学校生活での苦痛を少しでも取り除くことを狙いとしているのですが、実は費用の面でも良いことがあります。
 3月23日の教育新聞によると、市内で配る帽子は、全部で約1万4200個にもなるとのことです。複数のサイズで二種類の帽子があったこれまででは、それだけ予備を多く用意しなくてはいけなかったのですが、フリーサイズで一種類の帽子にすることで、予備の数も少なくて済み、年間11万6000円の経費削減になるそうです。

教育にかかる費用 これから

 冒頭でも少し触れましたが、現在、少子高齢化が大きな問題になっています。その問題を解決するための一つの方法として、子育てを支援することはとても大切だと言えます。
 さらに、子育ての支援は、地方で進む過疎化を止め、地方に定住することを促進することにも繋がってきます。これから、上で紹介したような魅力的な取り組みを行っている自治体をさきがけに、こういった子育て支援がどんどん増えていけば、少子化・過疎化の解決の糸口が見えてくるのではないでしょうか。
 また、例えば「教材費」に注目すると、教材費を家庭でも負担することが厳しい、国や自治体でも支援がない…となった場合、どうしても「値段」という物差しで採択を決めてしまう状況に陥ってしまいます。値段だけでなく、先生が中身を見て「使いたい」「子どものためになる」と思う教材を選ぶためにも、今回紹介したような取り組みを積極的に行っていくことが重要ではないでしょうか。

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