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子どもの学習費調査―その結果から見えてくること
教育zine編集部小幡
2014/1/31 掲載

 今月10日、文部科学省は、「平成24年度 子どもの学習費調査」の結果を公表しました。

「子どもの学習費調査」とは…?

 この調査は、その名の通り、保護者が子どもの学習のために支出した経費の実態をとらえるためのもので、教育費に関する国の施策に役立てることを目的としています。全国の公立・私立の幼稚園、小中学校、高等学校(全日制)に通う子どもが対象となっており、平成6年から隔年で行われています。

24年度の結果は…?

 本調査は、子どもにかかる学習費の実態を把握することができるという点で、私たち1人1人にとても身近で大切な調査です。また、今後の教育費に関する国の指針にも関わるとても重要な調査でもあると考えられます。
 
 ではそんな本調査の平成24年度の結果はどうだったのでしょうか。
 平成24年度の調査では、総数1,130の学校、28,700人の子どもに調査を行ったとしています。文部科学省は、この調査でわかった平成24年度の公立学校と私立学校の学習費総額について、

幼稚園は公立約23万円,私立約48万7千円,小学校は公立約30万6千円,私立約142万2千円,中学校は公立約45万円,私立約129万5千円,高等学校(全日制,以下同じ。)は公立約38万6千円,私立約96万7千円となっている。

 と公表しています。私立学校と公立学校の学習費の総額は、幼稚園で私立が公立の2.1倍、小学校で4.6倍、中学校で2.9倍、高等学校で2.5倍と、どの課程の学校でも、私立が公立の2倍以上の費用がかかるということです。
 この結果から、幼稚園から高校まで全て私立学校に通った場合の学習費総額は【417万1千円】、全て公立学校に通った場合の学習費総額は【137万2千円】となり、私立が公立のおよそ3倍となることがわかります。また、中学から私立の場合は全て公立のおよそ2倍、高校だけ私立の場合でも全て公立のおよそ1.4倍の費用がかかります。
 
 24年度の調査では、公立学校と私立学校で学習費に大きな差があることを示しました。これは、過去の調査から変わらない傾向であり、この差が埋まることは今後も難しいだろうと予想されます。地域の差、家庭の経済状況の差で、子どもが受けることができる教育の選択肢が、どうしても狭まってしまうという現状があります。地域が違っても、家庭の経済状況が違っても、誰もがその子どもにあった教育を選択できるような体制づくりが必要ではないでしょうか。

“子どものため”の学習費

本調査の概要を見てみると、調査内容は(1)保護者調査 と(2)学校調査 にわかれます。具体的には、

(1)保護者調査
@ 学校教育費: 保護者が,子供に学校教育を受けさせるために支出した経費(通学費を含む)。
ただし,学校調査で調査される経費((2)学校調査を参照)を除く。
例) 学用品費,体育用品費,楽器等購入費,実験実習材料費,クラブ活動費,通学費など
A 学校外活動費: 保護者が,子供の学校外活動のために支出した経費。
B 世帯の年間収入: 世帯全体の1年間収入(税込み)。

(2)学校調査
@ 学校教育費: 保護者が,子供の教育のために,学校及び学校教育関係団体に納付あるいは寄附した経費。例) 授業料,保育料,入学金,修学旅行費など
A 学校給食費: 幼稚園・小学校・中学校において,保護者が給食費として学校に納付した経費。

 という内容になっています。つまり、学習費は、「学校教育費」「学校外活動費」「学校給食費」で構成されています。本調査では、学習費の構成についても明らかにされており、公立の小中学校では、「学校外活動費」の比率が高く、私立の幼稚園、中学校、高等学校では、「学校教育費」の比率が高いことがわかっています。
 
 公立の小中学校で特に比率の高い「学校外活動費」ですが、注目してみてみると、毎年どの公立学校・私立学校でも、一定の割合を占めていることがわかります。平成17年に、文部科学省が委託調査を行った「地域の教育力に関する実態調査」によると、塾や習い事をしている子どもは、平日で7割、休日で4割にのぼります。塾や習い事から帰宅する時間についても、18時から19時の間が最も多く、21時から22時より後という子どもも約1割いることがわかっています。一方でこの調査では、6〜7割の子どもが、塾や習い事を楽しいと感じていることも伝えています。
 
 子どもたちの将来のためにとても大切な学習費ですが、使い方によって、子どもに学ぶ楽しさを与えることも、自由な時間や睡眠時間、心の余裕を必要以上に奪うこともできます。金額の多寡だけにとらわれるのではなく、ひとりひとりの子どもを見つめ、本当に子どものためを思った学習費の使い方が大切なのではないでしょうか。

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