今こそ身につけたい!国語科指導技術・ニューノーマル
理論×実践に裏打ちされた指導法で教育界を牽引する土居先生が贈る、国語科授業における“新”指導技術!
国語科指導技術・ニューノーマル(11)
授業開きの技術
最初の教材だからこそ、教師の国語授業観を伝える
神奈川県川崎市立はるひ野小学校土居 正博
2022/4/5 掲載

国語授業に期待感を持たせたいなら?

 基本的には多くの子達が新鮮な気持ちで熱心に取り組んでくれる新年度の授業開きです。いい加減なものではなく、「今年の国語の授業は面白そうだ」とか「これからの授業が楽しみだ」という思いを子どもに持たせたいものです。
 
 さて、そのためにはどんな授業にしたらよいでしょうか。
 それは、巻頭詩を用いて面白い授業を展開することです。
 「面白い」と言っても、ゲームをして盛り上がるような、笑いが起こるような授業ではありません。
 子ども達がたくさん考え、議論が白熱するような、「知的に面白い」授業のことです。なぜなら、今後一年間の授業もそのような「知的に面白い」授業を先生はしていくよ、というメッセージを伝えることになるからです。

 国語教科書には巻頭詩が書かれています。これを用いて、「知的に面白い」授業をしましょう。多くの場合、この巻頭詩は、数回音読するだけだったり、試写させるだけだったりと、軽く扱われがちです。しかし、巻頭詩を用いて知的に面白い授業開きをすることができれば、単調な活動に終始するよりも子ども達に期待感と満足感を持たせることができます。

これまでの国語授業

教科書の巻頭詩は、さらっと導入として扱う

 具体例を出します。
 光村4年上の「雲がかがやいている…」で始まる巻頭詩です。
 私は、この巻頭詩を何度か全員で音読をした後、次のように発問をしました。

「今は、『朝』でしょうか。『昼』でしょうか。『夕方』でしょうか、それとも『夜』でしょうか。」

 このように発問をすると、意外と「朝」と「夕方」で意見が割れます。それが面白いのです。人数を確認したら、いきなり「朝」と「夕方」とで討論させずに、「夜」という意見を叙述をもとに否定させます。「『夜』ではないって証明してごらん。」と投げかけます。「夜」に手を挙げる子はほとんどいないでしょう。子ども達は、これが「夜」ではないというのは分かってはいます。しかし、それを叙述をもとに説明するのは、少し難しいのです。少し考えさせてから、何人かに言わせます。すると初めは「『かがいている』と書かれているから」などと言うことがあります。そこで教師は、「『夜』だって輝くことあるじゃない。」とわざとボケます。そうしたら子どもは、「『かがやいている』、『太陽』と書かれているので、月とか星とかで輝いているわけではないから、『夜』ではない」という感じに否定します。
 ここで何をしているかというと、12月の連載でも述べたように「根拠」だけをあげて説明させるのを制しているわけです。きちんと「理由付け」も話させるようにしているのです。こうすることで、子どもは叙述をもとにきちんと理由付けできるようになっていきます。授業開きでこうしたやり取りを意識的にしていくことが重要です。その後の授業でも「そうだ、『○○と書かれているから』だけでは土居先生は納得してくれないんだった」と思い出してくれます(笑)

 さて次に、人数が極端に少ないか、ゼロである「昼」を否定させます。この際も、「夜」を否定させた時と同じように、叙述をもとにしつつ理由付けをきちんとしながら否定するようにします。
 「夜」の時と同じ要領でやればよいので今度は多くの子ができるはずです。いったんノートに書かせたり、隣の子に言わせたりするなど、なるべく全員の子が根拠と理由付けを意識して自分の考えを表現できる機会をつくると良いでしょう。おそらく、「『今、太陽が山をはなれた』と書かれているから、山に近いということだから『昼』ではない(『夕方』か『朝』だ)」という感じになるでしょう。

 最後に、夕方派と朝派にそれぞれの意見を言わせて討論させてもよいですし、「太陽が山を離れた」について図やイラストを描かせて説明させてもよいでしょう。いずれにせよ、叙述(言葉)からイメージすることが重要だ、という国語の授業で大切にしたいことを十分子どもはこの授業で体験することができます。

 最後に、「すごいね。こんなに短い詩なのに、みんなすごく頭を使って、たくさん意見を言ってくれました。これから一年間の授業が先生はとても楽しみです!」と明るく授業を締めましょう。

国語科指導技術・ニューノーマル

最初の教材だからこそ、教師の国語授業観を伝える

 今回は、巻頭詩を用いて「知的に面白い授業」をすることを提案しました。
 具体例からも分かるように、これは小手先のテクニックではなく、教師がどのような国語授業をしたいのか、それを通して子どもにどんな力をつけたいのかを、一時間に凝縮した授業開きをする、ということです。そのためには、深い教材研究が欠かせません

ここがポイント!

  • ただ面白いだけのゲーム等の授業開きではもったいない! 一年間の最初だからこそ、鮮烈な出会いを!

土居 正博どい まさひろ

1988年,東京都八王子市生まれ。創価大学教職大学院修了。川崎市公立小学校に勤務。国語教育探究の会会員(東京支部)。全国大学国語教育学会会員。国語科学習デザイン学会会員。全国国語授業研究会監事。教育サークル「深澤道場」所属。教育サークルKYOSO’s代表。『教師のチカラ』(日本標準)編集委員。

(構成:林)
コメントの受付は終了しました。