「個別最適な学び」を実現する算数授業のつくり方
算数授業における「個別最適な学び」を、非認知能力、GIGAスクール、自己調整学習…など重要なキーワードから紐解きます。
「個別最適な学び」を実現する算数授業のつくり方(2)
算数における「個別最適な学び」の単元構成の考え方
東京学芸大学附属小金井小学校加固 希支男
2021/7/25 掲載

「個別最適な学び」の最終的な目標は、自ら課題を見つけ学び続ける子どもを育てることです。しかし、算数という教科には、算数で養うべき力があり、内容があります。ですから、学習活動の全部を子どもに委ねることは難しく、かといって、ドリル型の授業で学習を自分で進めている気にさせても、算数で養うべき力は身につきません。算数で目指すべき個別最適な学びは、学習内容を保証しつつ、その中で算数で養うべき力を育て、プラスαで自ら課題を見つけ学び続ける力を育てることだと考えます。今回は、そのための「単元構成」について考えていきます。

算数で養うべき力

 算数は系統性の強い教科なので、既習事項を使えば、子どもが新しい知識をつくり出すことができるという教科特性があります。よって、算数で養うべき力とは、「既習事項を使って、新しい知識を自らつくり出す力」だと考えています。学習指導要領で算数の目標として示されている資質・能力の3つめにある「算数で学んだことを生活や学習に活用しようとする態度」について、学習指導要領の解説でも「算数で学んだことは活用できるように学習されなければならないし、活用を重視した創造的な学習展開を用意する必要がある」(p.29)と述べられています。
 したがって、算数における個別最適な学びにおいても、既習事項を使って、新しい知識を自らつくり出すような授業にしていかなければなりません。

一斉授業と個別学習を分ける

 既習事項を使って新しい知識を自らつくり出すような個別学習にするためには、子どもが既習事項を使えるような単元構成を考える必要があります。私自身も試行錯誤をしている段階ではありますが、そのためには、一斉で行う授業と個別学習を行う授業を分けることが必要だと考えています。
 一斉授業というのは、学級全員で同じことを共有することができます。ですから、その後の学習において働かせたい知識や数学的な見方・考え方を身につけるのに適しています。問題解決を行いながら、みんなで知識や数学的な見方・考え方を発見し共有する、問題解決型の授業のイメージです。
 個別学習というのは、身につけた知識や数学的な見方・考え方を働かせて、新しい知識をつくり出す学習に適していると考えます。個別学習といっても、1人で学習を進めるのではなく、まわりの人と一緒に考える活動も自由に取り入れます
 このように考えると、おおよそ次のような目安で一斉授業と個別学習を分けて単元構成を考えるとよいのではないでしょうか。もちろん、順番を変えることや、1時間の中で一斉と個別を行うこともあります。

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個別学習でやったことを共有する一斉授業を設ける

 以下は、実際に行った6年「分数のかけ算とわり算」の単元構成です。単元前半で分数×分数、分数÷分数の計算の仕方を考え、単元の中盤では単元前半で学習したことを使って個別に学習を進めています(分数×分数、分数÷分数を単元を分けずに行うことで、相互関係がわかりやすくなると考えて行っています)。

@ 分数×分数の一般化(一斉授業)
A 分数÷分数の一般化(一斉授業)
B 分数×分数、分数÷分数の一般化の復習(一斉授業)
C 途中で約分のある分数×分数、分数÷分数(個別学習)
D 帯分数・整数の混ざった×分数、÷分数(個別学習)
E 乗数と積、除数と商との関係(個別学習)
F 分数×分数の計算のきまり(個別学習)
G C〜Fの共有(一斉授業)
H 分数×分数の面積・体積の求め方(一斉授業)
I 整数・小数・分数混合の計算(一斉授業)

 個別学習では、なるべく教科書の問題を扱います。算数は、既習事項を使って新しい知識をつくり出す学習が多く、教科書は、まさにそういった流れで構成されていますし、多くの子どもにとって無理なく新しい知識や数学的な見方・考え方を発見することができます。教科書の問題を解き、新しい知識や数学的な見方・考え方が発見できた後は、自分で問題をつくってまわりの友だちと問題を解き合ったり、気になったことを調べたりと、各自でやることは異なります
 個別学習の間、教師は子どもの様子を見取り、「どんなことに着目したのか」「どんな考え方をしたのか」「前の学習と似ているところはどこか」などの声かけをして回ります。個別学習の間の教師の役割については、次号以降で詳しく述べます。
 4時間目の最初に4〜7時間目の学習内容を伝え、先に進みたい子どもは先に進んでよいということにしました。しかし、問題を解くだけでなく、共通する大事な考え方を見つけたり、問題を発展させたりすると、そんなに簡単に先に進むことはできないようでした。
 大切なのは、個別学習でやったことを共有することです。8時間目が4〜7時間目の個別学習でやったことを共有する時間になります。個別学習では、どうしても学級全体で共有することが希薄になります。ですから、個別学習をしたら、学習したことを学級で共有する時間を設け、将来の学習で働かせる重要な知識や数学的な見方・考え方を共有することが必要だと考えています。

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4〜7時間目の個別学習の内容を共有した8時間目の一斉授業の板書

 まだ単元構成について書きたいことはありますが、また別の機会にまとめたいと思います。次回は、「1時間の授業」の内容について、実践を踏まえて書きたいと思います。

【参考・引用文献】
・文部科学省(2017)『小学校学習指導要領解説 算数編』pp.21-22、p.29

加固 希支男かこ きしお

1978年生まれ。立教大学経済学部経済学科を卒業し、2007年まで一般企業での勤務を経験。2008年より杉並区立堀之内小学校教諭、墨田区立第一寺島小学校教諭を経て、2013年より東京学芸大学附属小金井小学校教諭。

(構成:矢口)
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