きょういくじん会議
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「チェコ・アート」に注目―「子ども向け作品」に思いをたくす
kyoikujin
2008/2/5 掲載
ちびとらちゃん (チェコの絵本シリーズ)

 「ちびとらちゃん」という小さくて怖がりなトラの男の子が、トラたらしめている“しまもよう”を取り上げられてしまいました。そんな時、病気になったお母さんのために、遠いところまでお医者さんを呼びに出かけます。…

 ちょっと『モチモチの木』(斎藤隆介作/滝平二郎絵)を思い出すようなこの話は、パレチェク画の『ちびとらちゃん』という絵本。1974年刊であったものがこのたび、新訳となって復刊されたのだ。
 ヨゼフ・パレチェクはチェコの画家・イラストレーター・アニメーション作家。ちなみに、この『ちびとらちゃん』はアニメーション版も出ている。パレチェクの作品は、自ら「色で語る色彩芸術」という通り、独特の色彩は物語の筋だけでなく視覚的にもとても心に残る作品である。

 そもそも「チェコ」という国はどこにあるかご存知だろうか。国名は聞いたことがあっても、普段はあまりなじみのない方も多いと思う。チェコはドイツの東、日本の約5分の1という小さな国だが、「チェコ・アニメ」「チェコ・アート」として1ジャンルと考える人もいるほど、アニメーションや絵本の世界では有名な国なのだ。
 「チェコ・アニメーションの祖」といわれ、人形アニメーションで有名なイジー・トゥルンカは、1946年、『動物たちと山賊』で、ディズニー作品をおさえてカンヌ映画祭で大賞を受賞している、と聞けば、その優れた度合いが分かるだろうか。

 パレチェク氏によると、小国チェコは40年間ソ連の「占領下」にあり、表現の自由に制約がかかっていたため、芸術家達は子ども向けの作品に自分の思いを表現した、とのこと。一方、チェコというと人形劇も有名だが、こちらは、17〜19世紀ははドイツ語圏の支配下であったチェコでは全てがゲルマン化される中で、人形劇の上演はチェコ語の使用が許されており、伝統的なものを上演できたため発達していった、という背景もある。
 子ども向けのチェコの絵本やアニメが有名な理由には、意外な歴史的背景が影響していたのだ。

 パレチェク画の絵本は、他にも『おやゆびひめ』『はだかの王様』など、多くが復刊されている。
 日本でも、マンガやアニメーションが1つの確立された文化として世界で認識されてきているが、チェコの絵本やアニメーションにも、ぜひ注目したい。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
コメントの一覧
2件あります。
    • 1
    • 名無しさん
    • 2008/2/5 18:14:40
    なるほど、そういう歴史的背景があったのですね。勉強になりました。
    しかし、日本で漫画やアニメが発達したのはなんでなんでしょうね・・・?
    • 2
    • 名無しさん
    • 2008/2/6 17:15:12
    チェコの絵本と聞くと、どうしても浦沢直樹の『MONSTER』を思い起こしてしまう…。
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