きょういくじん会議
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理系に魅力のある社会へ―MOT教育と課題
kyoikujin
2007/12/7 掲載

 4日に公表されたPISA2006の結果では、15歳の科学への興味が参加国中最低レベルにあることがわかり、理系離れの深刻さが明らかになった。授業時間数や実験・観察の時間増で対応するとのことだが、それだけで日本の科学技術の発展に貢献する理系人材は増えるのだろうか。理系離れを防ぐために、企業や行政はどんな取り組みができるだろうか。

 文部科学省は平成13年から17年までの第2期科学技術基本計画のころから、産学連携の一環としてMOT(Management of Technology=技術経営)人材の育成などを進めてきた。技術があるだけではなく、経営もできる理系の人材を専門職大学院などで育てることで、理系の人材が企業内での風通しを良くしたり、理系ベンチャーを育てやすくするなど、大学によって様々な目的で行われ、成果を上げている。たとえば、東京農工大学大学院技術経営研究科は、技術リスクを重視した専門職・管理者層を養成しており、その実績や教師陣の質の高さが評価され、今年国際標準化機構(ISO)によって設定されたISO高等教育賞を受賞している。
 MOT教育を行う大学は芝浦工業大学早稲田大学をはじめとし、日本に導入された平成15年度から年々増加して企業の中で活躍するMOT人材を送り出している(各大学院のホームページを見れば、MOT教育を受けてから、会社に戻って活躍する卒業生の声が読める)。しかし、日本でのMOTの歴史は浅く、優れたMOT人材輩出数はまだ多いとはいえないかもしれない。また、個人で負担するには学費がかかりすぎるなどの課題も残る。企業がMOT教育を受けるよう、大学院に人材を派遣したり学費を全額負担する数も少なく、企業がもっと積極的に産学連携に関わる余地は残されているだろう。

 科学者・技術者を目指す子どもたちを増やすためには、理系を選んだ場合の成功プランが思い描けるような社会になることが必要だ。日本が理系の人材にとって魅力のある社会と呼べる日はまだ遠そうだが、企業のMOTの大学院への人員派遣や、MOTの大学への補助金など、行政と教育、企業の協力が進むことに期待したい。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
コメントの一覧
1件あります。
    • 1
    • 名無しさん
    • 2007/12/14 13:41:33
    医者や薬剤師、バイオ系は人気らしいですけどね…。
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