著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
中学校特別支援教育のすべてをカバーするスキル
関西国際大学教育学部教育福祉学科教授中尾 繁樹
2022/4/15 掲載
今回は中尾繁樹先生に新刊『中学校特別支援教育 指導スキル大全』について伺いました。

中尾 繁樹なかお しげき

関西国際大学教育学部教育福祉学科教授・同大学大学院人間学行動科臨床教育学専攻教授
同志社女子大学非常勤講師 神戸親和女子大学非常勤講師
びわこ学院大学非常勤講師他
尼崎市主席研究員
元文部科学省「学習指導要領改善のための調査研究」委員
元日本小児科学会「学校保健と心の問題委員会」専門委員
日本LD学会特別支援教育士S.V.
神戸市,兵庫県,京都府,豊岡市,長浜市,朝来市,小野市他専門巡回指導員

―1章「特別支援教育で求められる教師力」の中で先生は子どもをみとるために大切なのは「○○法」といった「How to」ではない…とおっしゃっていますが、では、どういうことが大切なのでしょうか?

 特別支援教育とは子どもの実態を把握することから始まります。実態把握とは障害を見つけることではなく、子どもを見る視点をたくさん持つことです。教師は子どもの実態把握の前に「○○法」といった「HOW to」にすぐに頼ってしまう傾向があります。その前に「子どもが何に(WHAT)困っていて、それはなぜ(WHY)困っているのか、だからこんな方法が必要なんだ」というプロセスが必要です。子どもを指導するためには、的確な実態把握に基づいた指導の方策が大切になります。

―本書は『指導スキル大全』と題しているように、中学校特別支援教育にかかわる80ものスキルを2章で紹介いただいています。ここにはどんな支援の極意がつまっているのでしょうか?

 ここでは全国の中学校で指導され、不登校や学級の荒れを未然防止し、学力やスポーツ指導の向上を実際に指導、経験されている先生方の取り組みを紹介しています。通常学級の授業や通級指導教室での指導で少し工夫をすることで、子どもたちの「わかった」「楽しい」を引き出すことができます。困った子⇒個別指導という考えではなく、教師側の考え方や視点を変えることで、少しでも多くの子どもたちの困り感を救うことができます。そのための参考になる実践例をたくさん掲載しています。

―中尾先生は特別支援教育がご専門でおられ、多くの市の専門巡回指導もされておられるかと思います。中学校での特別支援教育は進んできていますでしょうか?思春期の子どもたちを支援する先生方にはどんなことに配慮しながら支援いただくとよいでしょうか?

 今まで、中学校では教科指導、生徒指導といった視点で子どもたちの指導が行われてきました。特別支援教育が始まってから15年が経過していますが、その考え方はほとんど変わっていません。子どもたちの困っているところに少し目をやると、頭ごなしに叱ったり、指導したりすることはなくなります。本書で紹介している兵庫県内の中学校での取り組みは、子どもの的確な実態把握、困り感の発見、目標設定、指導内容の決定、実践、振り返りをすべての教職員が協働して行っています。子どもを見る力をつけていきましょう。そこが教育の始まりです。

―最後に、この春から苦手さのある子への支援を頑張ってみたい!と思われる先生に向けて、メッセージをお願いします。

 子どもをどう「みる」かが大切です。子どもを「みる」ためには、「からだ」「認知」「発達」「こころ」「教科」「自立活動」「生育歴」「学習歴」等々たくさんの視点が必要になります。中学校だけに限らず、子どもにかかわる人たちは、情報収集と研究、振り返りが必要になります。ゴールはありません。これでいいと思わず、「なぜ」「とうしたら」を常に考えながら実践していただければと思います。
 皆さんが考え方を変え、小さな一歩を踏み出すことで、たくさんの子どもたちの笑顔が生まれます。

(構成:佐藤・芦川)

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