- はじめに
- 第1章 特別支援教育で求められる教師力
- 1 子どもをみとる力
- 2 子どもの苦手を支えるアイデア力
- 3 保護者や学校全体で協働する力
- 第2章 特別支援教育の指導スキル80
- 学習支援
- 1 生徒が集中できる教室前面掲示スキル
- 2 学習活動を明確にする板書&ノートスキル
- 3 生徒が理解しやすい指示・発問・助言スキル
- 4 授業の流れが見通せる可視化スキル
- 5 課題の提出が見通せる可視化スキル
- 6 生徒が間違いなく課題提出を行うための付箋活用スキル
- 7 本人が指導計画作成に参画できる「学びのカルテ」スキル
- 8 生徒の努力に報いる個別ワーク活用スキル
- 9 コンパスを用いた作図支援スキル
- 10 学びの自信を生む古典の暗唱支援スキル
- 11 書かない英単語記憶支援スキル
- 12 取り組みやすい漢字練習支援スキル
- 聞く・話す
- 13 背景・原因に合わせた聞く・話す支援スキル
- 14 伝える力を育てるスキル
- 15 伝える力の弱さを補助するスキル
- 16 生徒が話しやすくなる「ふりかえりシート」スキル
- 17 生徒が説明できるようになる「国旗当てゲーム」スキル
- 18 語彙力をアップできる「カタカナーシ」スキル
- 19 考えが伝えやすくなる「小さいホワイトボード」スキル
- 20 気持ちが伝えやすくなる「付箋」スキル
- 21 生徒がメモできるようになる「きくきくドリル」スキル
- 22 聞く力をアップできる「聞く力トレーニングブック」スキル
- 読む・書く
- 23 読む・書くのつまずきの背景をとらえるスキル
- 24 読み書きのつまずきの様子をとらえるスキル
- 25 読むことにつまずきのある生徒への支援スキル
- 26 書くことにつまずきのある生徒への支援スキル
- 27 流暢なひらがな読みができるか確認するスキル
- 28 視機能へのアプローチスキル
- 29 生徒の興味関心を活かした資格試験活用スキル
- 30 音韻認識の困難さを支援するフォニックスソング活用スキル
- 31 読みの向上を図るフォニックスのルール活用スキル
- 32 音と文字をつなげる「音カルタ」スキル
- 計算・推論
- 33 「できる」へつなげる準備スキル
- 34 生徒が気負わずに計算問題に取り組めるスキル
- 35 ( )のついた正負の式を間違えないための支援スキル
- 36 文章題を解くための支援スキル
- 37 文字式を理解し,方程式を解くための支援スキル
- 運動・不器用さ
- 38 日直・掃除がばっちりになる目印で支援するスキル
- 39 調理活動もこれでサクサクっと進むグッズスキル
- 40 不器用でもあきらめないでやれる文房具で支援するスキル
- 41 靴ひもを結びやすく脱げにくくする足元安定スキル
- 42 プリント管理のための見える化スキル
- 不注意・過集中
- 43 個別の場でも大切にしたい環境調整スキル
- 44 聞こうとする意欲を高める音量調整スキル
- 45 「何からするか」を決める力を高めるスキル
- 46 うっかりミスが減るメモ活用スキル
- 47 過集中をエネルギーに変換して生徒を応援するスキル
- 人間関係形成
- 48 関係づくりの基盤を整える教師の心構えスキル
- 49 教師同士の太いパイプづくりスキル
- 50 人とよりよく関わる力を育てる交流活動スキル
- 51 対応力を育てる四コママンガ活用スキル
- 52 問題解決力を高める「SSTワーク」活用スキル
- 53 自己コントロールのための「気づきと対処法」スキル
- 54 自己コントロールのための「見える化ツール」スキル
- 55 楽しくソーシャルスキルが身に付くゲーム活用スキル
- 56 会話のための語彙力アップ&練習スキル
- 57 会話の苦手な生徒のためのタブレット端末活用スキル
- アセスメント
- 58 アセスメントを行うための基本スキル
- 59 アセスメントの基本スキル
- 60 アセスメントツールを学校で活用するスキル
- 61 事例に学ぶ(1)アセスメント結果を解釈するスキル
- 62 事例に学ぶ(2)アセスメント結果を心理的側面の指導に活かすスキル
- 63 事例に学ぶ(3)アセスメント結果を教科指導に活かすスキル
- 自己理解・自尊感情育成
- 64 ストレス・マネジメント力を育てるスキル
- 65 リラクセーション&セルフケア力を育てるスキル
- 66 悩み解決&援助希求力を育てるスキル
- 保護者対応
- 67 保護者懇談での気遣いスキル
- 68 保護者との関係構築スキル
- 69 保護者からの相談への対応スキル
- 70 保護者の困り感に寄り添うスキル
- 校内連携・校内研修
- 71 専門性向上を目指した自己評価シート活用スキル
- 72 すき間時間を活用したミニ研修スキル
- 73 中学校から高校へつなぐ「連携シート」活用スキル
- 74 学校・家庭・福祉をつなぐ「合理的配慮シート」活用スキル
- 75 トライアングルで考える「ケース検討シート」活用スキル
- 76 学校不適応「0」を実現する特別支援コーディネータ運営スキル
- 77 教育相談を活かした特別支援教育推進スキル
- 78 特別支援教育の視点での集団指導スキル
- 79 特別支援教育の視点での授業研究スキル
- 80 共有・連携をスムーズにする支援記録スキル
はじめに
本書は中学校における授業づくりの中で使える指導スキル(技術)を取り上げ,それを身に付けることで教師の力量を上げるために編集しました。特に通級指導教室における自立活動の視点を取り入れ,通常の学級における授業づくりに活かすことができる様々なスキルを取り上げています。どの子も分かる,できる工夫と合理的配慮も含め,様々な面で苦手さのある子どもたち一人一人を見つめ,授業全体での配慮と個別の配慮の両方を取り上げています。一つ一つのスキルは小さく些細なものですが,「〜ができるようになる!」「〜がうまくいく!」といったこのスキルを用いることで教師の気付きを促し,子どもたちにやさしい授業づくりができることを願っています。いま全国的な流れとして,中学校においてもユニバーサルデザインの考え方を取り入れた授業づくりを積極的に進めています。
しかし,最近は「How to」として形だけをまねることによって,目の前の子どもたちの実態に合わない一般的な内容をあてはめて扱うようになる危険性が生じています。実際の学校現場においても表層的なメソッドだけが独り歩きして,ユニバーサルデザインだけでなく,ICTの活用に関してもタブレットを使うことが主になり,教師の自己満足に終わっているケースも多く見られます。「Why」「What」の視点を取り入れ,なぜその取り組みが必要なのか,何のために必要なのかを考え,R(Research⇒実態把握)-PDCAの流れをつくって進めていくことが大切です。
R(Research⇒実態把握)とは,「子どもの得意なところ,苦手なところについて,情報を様々な角度から収集し,それらを整理分析して,子どもの実態や全体像を理解していくこと」と考えられます。学校で見られる子どもたちの行動の様子や学力の状況,家庭環境等を整理・分析し,目に見えない部分を的確に把握することが大切になります。子どもたちの得意なところが見つかると指導を行う上でのきっかけづくりができ,苦手なところが見つかると「つまずき」の背景のメカニズムが解明されます。教師は結果としての「つまずき」ということだけを見ずに,その背景の解釈の一つとして,自立活動の視点を取り入れることも専門性の獲得のために必要になります。
これらの考え方の背景にはCrisisとRiskがあります。Crisisは既に発生している学習困難,自尊感情の低下,他の事象等に対して,そこから受けるダメージをなるべく減らそうという発想です。これらはどの学校でも取り組まれていますが,中学校では特に,生徒指導の観点から子どもたちを見ることが多く,認知,心,身体面等,自立活動を含めた幅広い視点をもつことができずに,子どもの困り感をとらえにくくなっています。
結果として,二次的な問題が起きているのも現実です。Riskはこれから起きるかもしれない危険に対して,事前に対応しておこうという指導です。的確な実態把握に基づいた指導体制づくりができると様々な問題への未然防止につながっていきます。
以上のような背景をもとに本書を活用するにあたって,大切なことは,実践スキルをそのまま活用するのではなく,目の前の子どもたちの実態に合わせた形で柔軟に改善,応用,活用することです。目に見えているものだけでなく,子どもたちの学力や行動の背景にあるものを理解する視点を増やしてください。「なぜ,何のために,どのように」を常に意識しながら活用してください。分かる授業の設計には,教師の専門性が必要になり,特別支援教育の視点をもったかかわりが大切になります。確かなResearchが適切な目標設定につながり,学力や様々なスキルの獲得・改善・克服につながります。
2021年4月 /中尾 繁樹
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- 明治図書
- 具体的な事例が載っていて良い。2022/10/950代・中学校管理職
- 様々な実践が細かく取り上げられているので、模擬授業や実習から活用できるものがたくさんあった。2022/8/1220代・学生
- インクルーシブ教育の点からも分かりやすいものが多くて良かった2022/7/1020代・中学校教員