著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
「“いい先生”って?」―初任者が輝く、中学教師のための新バイブル!
東京都公立中学校前川 智美
2022/3/24 掲載
  • 著者インタビュー
  • 教師力・仕事術

前川 智美まえかわ ともみ

東京都公立中学校主任教諭。1988年、佐賀県伊万里市生まれ。長崎大学教育学部卒業。初任者の頃から東京都の教員採用をPRする代表若手教員「教採ナビ」に抜擢され、人事部選考課とともに全国各地の採用説明会などで「東京都の教員の魅力」を大学生や教員志望者に伝えてきた。また、東京教師道場の部員として2年間学んだ後、東京教師道場リーダーに抜擢され、2年間部内の若手教員の育成にあたった。みんなのコード主催、プログラミング指導教員養成塾修了。2021年、全国の小学校の女性教員を対象とした教員養成プログラム「SteP」外部アドバイザーを務めている。これまで、21世紀国語教育研究会、東京都中学校国語教育研究会にて研鑽を積んできた。

―本書は、中学校の新任教師に向けた一冊です。副題には、「こんな私でもいい先生になれますか?」とありますが、ここに込められた思いを教えてください。

 初めて教壇に立つときって、すごく不安だと思うんです。「先生としてやっていけるかな?」とか「こんな自分でも大丈夫かな?」とか……。そして、少し時間が経って慣れてくると、今度は「自分って“いい先生”なのかな?」とか、「どうやったらもっと“いい先生”になれるんだろう?」など、また違った不安が出てきます。
 私はもう教員になって11年が過ぎようとしていますが、「こんな私でもいい先生になれますか?」という疑問や不安は、実は私自身がいまだに感じ続けていることでもあります。
 今回、この本を読んでくださった先生が、少しでも前向きになれたらいいな……と思うと同時に、「もし不安だったら、一緒に考えながら頑張ってみようよ!」というメッセージを伝えたくて、この本を書きました。
 なので、まずは

  • 教壇に立つことを不安に感じている人
  • 「“いい先生”になりたい」と思っている人
  • 「“いい先生”って何だろう?」と疑問に思っている人

に読んでいただけたら嬉しいです。(もちろん他の人にも読んでいただけたら感激です!)
 この本を読み終えたら、初任の先生方も今の時代の学校現場でしっかりと自分らしく輝き、生き延びることのできる教員に、きっとなれると信じています。

―目次を見ると、事前準備・学級づくり・授業づくり・コミュニケーション・分掌・会議・部活から仕事術まで、まさにバイブルといえる充実度です。とりわけ、事前準備についてはこれまでにない手厚さ、必見ですね!

 私はけっこう心配性なほうなので、事前に情報を集めて、心の準備をしておかないと不安なんですよね……。だから、事前準備の部分は「初任者が初日に挫折しないように」という思いで書きました。せっかくの初日が「事前に知ってたらもっとうまくできたのに……!」とクヨクヨした気持ちで始まったら悲しいじゃないですか(笑) 良くも悪くも「第一印象」って、その後もずっと記憶に残るものだと思うので……。
 なのに、私の初任時もそうでしたが、着任前に教えてもらえることって本当に少ないんですよね。具体的に何を準備しておけばいいか全然分からないし、逆にどこまでツッコんで聞いていいかも分からない。
 だから本書では、たとえば「Q11 (初出勤までに)必ず伝えたいこと・聞いておきたいことは?」では、「校長面接で『職員室の雰囲気はどんな感じですか?』って聞いていいんだよ!」とか「『持病があって激しい運動はできないんです…』って伝えておいてね!」とか、そういうちょっとした「先輩から聞く口コミ」のような感覚で読んでもらえるような内容を意識して取り上げています。

―中学校の新任の先生でも、いきなり学級担任ということもあるのでしょうか?

 いきなり担任…初任者としては怖いですよね(笑) 一般的には副担任からスタートする場合が多いですが、まれに担任になることもあります。特に、最近では現場の人手不足が深刻ですから、心の準備だけはしておいたほうがいいと思います。
 本書では、初任の先生がいきなり担任になったときでも心の準備ができるように、担任や副担任の仕事のコツを説明しています。詳しくはぜひ本書をご覧ください!

―「先輩教師に学ぶリアルな働き方」ということで、ぜひお伺いしてみたいことがあります。新任時に、先生が苦労されたことを教えてください。

 今思えば恥ずかしい話ですが、私は人より「社会人スキルがない」初任者でした。
 例えば、職員室の電話が鳴っても「出て失敗したら怖いから……」「うまく繋げなかったらどうしよう……」と勇気が出なくて、なかなか受話器に手が伸びませんでした。すると、当然ですが先輩から「バイトで教わらなかったの?」「分からないことは自分から聞かないと誰も教えてくれないよ」と叱られます。
 自分が「分かっていないことすら分からない」ような状況で、人並みに社会の一般的なスキルを身に付けるまでに苦労をしました。
 一方で、生徒たちはそんな私のことを「先生」として接してくれます。生徒たちの期待に応えられるように「早く一人前の教師になりたい」「教育のプロになりたい」という一心で勉強しました。今でもそうですが、初任者の頃は特に、生徒たちがいてくれたからこそ、大変なことや苦労も乗り越えられたような気がします。

―最後に、この春、初任者として現場に出ていく読者の先生方に向けてメッセージをお願いします!

 今、初任者のみなさんが不安に思ったり悩んだりするのは、「教育」というものと真剣に向き合っている証拠です。教師って不思議なもので「自分には向いていないんじゃないか?」と思い続けて努力している人ほど、生徒から信頼されたり大きく成長できたりするということもあります。
 大切なのは、疑問に思ったことを問い続けること、そして学び続けることです。
 この本を手にしたことによって、初任者のみなさんのこれからの教員人生が、少しでもハッピーになることを祈っています。みなさんと、いつか現場でお会いできる日を楽しみにしています!
――そして最後に、この本には紙版でしか見つからないヒミツのQが隠されているので、ぜひ探してみてください。

(構成:林)

コメントの受付は終了しました。