著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
社会科地理が好きな生徒を育てるために
兵庫教育大学理事(副学長)・大学院教授吉水 裕也
2022/2/25 掲載
 今回は吉水裕也先生に、新刊『新3観点の学習評価を位置づけた中学校地理授業プラン』について伺いました。

吉水 裕也よしみず ひろや

1962年大阪府生まれ。兵庫教育大学理事(副学長)、大学院教授。博士(学校教育学)。中高教員などを経て、現職。専門は社会科教育学、地理教育論。
主な著書に、『本当は地理が苦手な先生のための 中学社会 地理的分野の授業デザイン&実践モデル』(編著)、『ゼロから学べる小学校社会科授業づくり』(監修、以上明治図書)。主な論文に、「問題発見能力を育成する中学校社会科地理授業の設計―単元「日本の工業立地」の開発―」(『社会科研究』57)、「地理的スケールの概念を用いたマルチ・スケール地理授業の開発―中学校社会科地理的分野「身近な地域の調査『高知市春野地区』」を題材に―」(『新地理』59−1)、「防災ガバナンスのアクター育成としての地理歴史科地理コミュニティ問題学習」(『社会系教科教育学研究』25)など。

―吉水先生は本書の冒頭で、単元を見通した評価計画について述べられています。指導と評価の一体化の点からも重要ですが、この点について、教えてください。

 思考や判断という行為自体は1時間毎のレベルでも可能ですが、思考力や判断力をつけたいと思うと、直感的に1時間では難しそうだなと思いますよね。知識ならどうでしょう。1時間毎に知識目標は設定できると思います。一方で中学校地理的分野では、内容のまとまりや小単元で明らかにしたい地域の特色等に関連した知識があります。例えば、「アジアで急速な経済成長が進んだのはなぜか」という単元を貫く問いの答えです。その特色を明らかにすることが小単元の目標にもなります。そう考えると、知識も単元を見通した目標が必要になりますし、同時に単元を見通した評価計画が必要になりますね。

―本書では、地理的分野の各単元における具体的な授業プランを豊富にご紹介いただいていますが、タイトルとなっている「新3観点の学習評価を位置づけた中学校地理授業プラン」を実現するには、ズバリ、どのようなことが大切でしょうか。

 今回の学習指導要領では、全ての教科で「見方・考え方」がキーワードです。地理的な見方・考え方にはいくつかの例示がありますが、中でも「人間と自然環境との相互依存関係」や「空間的相互依存作用」という、「人と自然」の関係や、「地域と地域や、地域内の場所と場所」の作用についての見方・考え方は、「どのように」や「なぜ」といった問いと密接に関わっています。事象間の関係性を対象とするからです。「地理的な見方・考え方を働かせる」とは、例えば、事象間の関係性から「地理的な問いを発見」したり、「地理的な問いを解決」したりするための視点や方法ということでもあります。このような、見方・考え方を踏まえた問いや学習活動が、評価への手だてとして、授業プランに組み込まれていることが大切です。

―地理的分野においては、地図や資料の読み取り、また白地図にまとめるといった活動も、大きな要素となっていますが、このような力を生徒に培うには、どのような取り組みが必要でしょうか。

 白地図に色塗りをする作業が授業の中でよく行われています。作業には、その作業をする意味が必要です。生徒が、今やっている作業は何のためなのかがわかる必要があります。問いを発見するために、地図や資料を読み取る。問いを解決するために主題図を作る(白地図にまとめる)。それが伝わるような取り組みが必要でしょうね。また、地図にまとめる作業は、アナログだけではなく、デジタルでも簡単にできるようになっていますから、タブレット端末でも作業的な活動をどんどん行わせるとよいですね。本書では、評価問題にも地図や資料の読み取りに関するものが沢山あります。

―本書では、社会科の単元構成を主体的に学習に取り組む態度と関連づけたPBL的社会科単元、授業デザインについてもご提案いただいています。この点について、教えてください。

 PBL的な単元構成は、社会的な論争問題について生徒と共有し、それが社会問題かどうかを吟味するところからはじまります。そして、その問題に関する答えを暫定的に出してみることで、知識の不足を悟り、論争問題を解決するアイデアに関連した知識獲得を行いつつ、論争問題を考える構成になっています。本書では、第3章でPBL的な単元構成による授業が一つ提案されていますので、是非読んでいただきたいです。

―本書では、授業展開例に加えて、その授業を受けての評価問題例(ペーパーテスト例)についても、収録されています。地理的分野における評価問題・テスト作成の際のポイントがあれば、教えてください。

 まずは、評価問題がどの観点を見取るためのものか明確にしておくことです。そして、評価問題の解答プロセスを想定しておくことが重要です。それによって、生徒がどこでつまずいているのかが予測できます。また、既存の評価問題を生徒に求めている資質・能力や実態に合わせて修正して利用するという考え方も重要だと思います。

―最後に読者の先生方へ、メッセージをお願いいたします。

 地理って面白いなと生徒に感じてもらうためには、生徒が授業の中で明確に「問いをもち」、その「問いを解いている」感覚をもてることが大切だと思います。本書では、授業が楽しくなる学習問題が設定されている授業プランが掲載されています。また、評価問題例もそのまま使っていただけると思います。社会科地理でつけてもらいたい資質・能力が身についていると生徒が実感できる授業が実践できれば、生徒はきっと授業が楽しいと感じてくれると思います。「社会科地理が楽しくて大好きだ」という生徒が一人でも増えることに、本書が貢献できれば幸いです。

(構成:及川)

コメントを投稿する

※コメント内ではHTMLのタグ等は使用できません。