著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
子どもたちと共につくる国語学習with ICT
京都教育大学附属桃山小学校若松 俊介
2022/1/21 掲載
 今回は若松俊介先生に、新刊『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の国語授業づくり 物語文編』について伺いました。

若松 俊介わかまつ しゅんすけ

 大阪教育大学小学校教員養成課程教育学コース卒業。大阪府の公立小学校で5年間勤務。現在、京都教育大学附属桃山小学校教諭。「国語教師竹の会」事務局。「授業力&学級づくり研究会」会員。「子どもが生きる」をテーマに研究、実践を積み重ねている。著書に、『教師のいらない授業のつくり方』『教師のいらない学級のつくり方』(以上、明治図書)がある。

―本書は、大好評をいただいております『GIGAスクール構想で変える!1人1台端末時代の授業づくり』シリーズの第4弾の国語授業・物語文編として、おまとめいただきました。本書の読み方・おすすめポイントを教えてください。
  1. 1年生から6年生まで、さまざまな教材での学習展開例が載っている
  2. 「1時間の授業」だけでなく、単元全体の学習の流れが分かるようになっている
  3. ICT活用だけでなく、国語の学習の進め方についても考えられる

…といったところが本書のおすすめポイントです。
 まずは、自分が担当している学年の学習展開例を読むところから始めたらよいでしょう。「自分ならこうしようかな」「こんな使い方もあるのか」と、いろんな活用の仕方を考えながら読むと面白いと思います。

―まず、若松先生が、国語の授業において、タブレット端末を取り入れる際に、意識されていることは何でしょうか?

 タブレット端末を活用することが目的にならないようにしています。子どもたちの学習がよりよいものになるために、

  1. 「どのように活用するのがより効果的か」
  2. 「どのように活用するのがより自然か」
  3. 「子どもたち自身がどのように活用していけるか」

…といったことを考えるようにします。
 子どもたちがタブレット端末よりもホワイトボードや紙のノートを使いたいのであれば、そちらを使っていけばよいと思っています。子どもたちと共に「よりよい」を見つけていくことを大切にしています。

―物語文については、場面の様子や登場人物の行動・心情の変化を読み取らせるなど、物語文ならでは〜のポイントがあると思います。1人1台端末を活用できる場面はどのような点でしょうか。

 物語文の学習を進めるにつれて、子どもたちは「気になる言葉」や「大事にしたい言葉」をどんどん増やしていくと思います。タブレット端末を活用すると、単元の学習始めに「自分の考えを書いて終わり」にするのではなく、何度も学び直したり、考え直したりしたことを追加修正しやすくなります。
 また、これまでの学習過程を自分で見つめ直しやすくなります。絶えず自分が「どう考えたか」「どう感じたか」を大事にして学習を進められるようになります。紙のノートよりも、情報を整理しやすいことが影響しているでしょう。
 さらには、授業中に「何人かが挙手して発言して、それらが黒板に書かれて終わり」と、何となく授業が流れていくことにはなりません。「自分はこう考えるのだ」「こう感じているのだ」という自分の考えを学級全体で共有しやすくなるので、子どもたちは更に「自分」の考えを大切にして他者と協働して学ぶことができるでしょう。

―本書に収録されている実践の一つとして、「ごんぎつね」の授業をご提案いただいております。通常の「端末なし」の授業と「端末あり」の授業では、若松先生の実感として、変化を感じられる点はどのような点でしょうか。また、1台端末を活用した国語授業・活動の中で、「これはおすすめ」というものがあれば、ご紹介下さい。

 一番大きな変化は、子どもたちがお互いの考えを簡単に見られるようになったということです。「回答共有」という機能を使うことによって、子どもたちはお互いの考えている学習内容について見ることができます。
 これまでだと全体の前で発表するか、近くの人と交流した時にしかお互いの考えを知ることはできませんでした。しかし、全体でお互いの考えていることを簡単に知ることができるようになったことで、より互いの「読み」をもとにして学び合うことができるようになりました。「誰かが意見を言ってくれるだろう」と人任せにする子も減り、積極的に学習に参加できる子が増えました。
 また、1人ひとり自分の考えを自由に表現できるようにすることがおすすめです。これまでだと決まったワークシートやノートに自分の考えをつらつらと書くだけだったかもしれません。しかし、ICT 機器を活用することによって、子どもたち1人ひとりが自由に試行錯誤できるようにしやすくなりました。この自由度が子どもたちの創造力を発揮させることにつながります。

―最後に、読者の先生方へ、メッセージをお願いいたします。

 ICT 機器を活用するからといって、国語学習において大事なことが大きく変わるわけではありません。ただ、活用することによって、子どもたちの学びをより受け止められたり、子どもたちがより学びやすくなったりするでしょう。その変化を楽しむことができるといいなと思います。よりよい国語学習のあり方を一緒に考えましょう。

(構成:及川)

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