著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
社会の授業の疑問や悩み、根本から解決します
東北学院大学教授佐藤 正寿
2020/12/7 掲載
 今回は佐藤正寿先生に、新刊『WHYでわかる! HOWでできる! 社会の授業Q&A』について伺いました。

佐藤 正寿さとう まさとし

1962年、秋田県生まれ。1985年から岩手県公立小学校に勤務。教諭、副校長を経て2018年から東北学院大学文学部教育学科教授。小学校教員時代は「地域と日本のよさを伝える授業」をテーマに実践を重ねた。現在は教員を目指す学生に自分の教員時代の経験を語っている。

―社会科でよく聞くのが、発問についてのお悩みです。その中でも、多様な考えを引き出すには、どのような発問をすればよいのでしょうか。

 子どもたちから「今日の社会科はいろいろな考えが出て楽しかった!」という声を聞きたいものです。多様な考えが授業で出てくることで、子どもたちも「自分の考えが深まった」と実感できることでしょう。そのために、発問の果たす役割は大きいです。
 例えば、次のような発問が考えられます。

○仮定の場面設定で考えさせる発問
(例)もし、ごみの出し方のきまりがなかったら、どのような問題が起きるでしょうか?

○複数の事例から共通する点を抽出させる発問
(例)工業の盛んな地域の条件は何でしょうか?

○選択・判断を迫る発問
(例)あなたがスーパーマーケットの店長なら、どの工夫を一番大切にしますか?

○視点を変える発問
(例)雪の多い地域は、住みにくいのでしょうか?

○比較する発問
(例)武士が登場して、変わったことは何でしょうか?

 ただ、「発問の大切さはわかるものの、どのようにつくったらよいかわからない」という声も聞きます。そのような場合には、まずは形から真似てみることをおすすめします。例えば、先の例のうち「もし、〜だったら」という発問は、様々な学習場面で活用できます。実践して効果があった発問の事例のパターンを積み重ねていくことで、発問づくりの腕も上達していきます。

―子どもの考えを板書に生かせない、というのもよく聞くお悩みです。これについてよい解決方法があれば教えてください。

 私自身の経験ですが、若いころ、社会科の授業では子どもたちの発表を一人ずつ板書していました。その方が丁寧で、より多くの情報を取り上げることになると考えていました。しかし、板書時間が長くなり、授業は間延びしてしまいました。また、文字量の多い黒板は、決して見やすいものとは言えませんでした。「子どもの考えを生かすためには、より多くの情報を板書すればよい」という考えは安易なものだと悟りました。
 その結果、次の授業展開を考えて、子どもたちの発表から出てきた情報を焦点化した板書を心がけるようにしました。発表のポイントやキーワードを中心に書くようにしました。ただし、教師にとって都合のよい発表だけ板書することがないようにしました。発表の真意を確かめたい場合には、板書時でも子どもに遠慮なく聞き返しました。これは、他の子にとっても大切な発表を改めて聞く機会になりました。
 実際の板書場面では、子どもたちに一定時間発表させ、一区切をつけて板書をしてみるのはどうでしょうか。多くの意見が出れば出るほど板書できない子どもたちの発表も出てきます。そこで、「すべての意見をそのまま板書するわけではない」とあらかじめ子どもたちにも理解してもらいます。ただ、時には板書されない子をフォローしたい場合もあります。そういうときには、「ゆきえさんも○○という考えを出しましたね」とひと言言うことで、子どもたちも納得すると思います。

―これもこれからの授業では避けて通れない課題ですが、社会科でユニバーサルデザインを意識した授業とは、具体的に何をすればよいのでしょうか。

 ここ数年で、授業や学級経営にかかわって、「ユニバーサルデザイン(UD)」という言葉は広く知られるようになりました。その理由として、「つまずきのある子」の存在があげられます。先生もそのような子に対して、様々な指導法の工夫をして、できるようにしていることがわかります。その結果、すべての子どもたちが、楽しく「わかる」「できる」ようになることが授業のUDの目指すところです。
 ただ、「UDとは○○という指導技術を取り入れること」と考えるケースもあるようですが、これは適切ではありません。子どもが学ぶのに最適な方法は、学級あるいは子どもの実態が異なれば違うものです。社会科の授業でつまずきのある子に対し、どのような視点でアプローチしていけばよいのか。それを考えることがUDの具体例を考えることにつながります。
 社会科の場合には、指導方法のための視点として大切なのが、例えば視覚化です。視覚化とは、視覚的な情報を効果的に活用することで、理解を深めたり、思考を促したりすることです。社会科は、写真や表、グラフ等、資料を使う場面が多い教科ですから、資料をどのように提示するかという点が重要になってきます。6年生の「米づくりの想像図」の話し合いの場合を例にとると、「米づくりの道具をつくっている」というような発表があっても、図の中のどこを指しているのか、簡単に探すことができず、理解できないまま次の発表を聞くという子はいるものです。その際、大型テレビ等で拡大提示をしていると子どもたちの理解度は違ってきます。拡大提示している画面にマーキングすることで容易に理解が図られます。この場合には、拡大提示とマーキングという視覚化の工夫によって、情報の共有化や焦点化も促されることになります。
 また、障害特性の視点は、例えば、「認知の偏り」や「特定の作業が苦手」というようなことから、個別の支援を図っていくことも大切です。たとえば、地図学習の都道府県の形を写す活動で、うまくかくことができずに嫌がる子がいたとします。このような場合、「よく見てかきましょう」という指示は支援の意味をもちません。むしろ社会科嫌いを生み出す要因になってしまいます。例えば、トレーシングペーパー(透かして複写するための半透明の紙)を準備して、「これにかいてごらん」と話すだけで、集中して取り組みます。このような手立てで、授業への参加意識も高まり、理解も促進されると考えます。

―最後に、読者の先生方にメッセージをお願いします。

 小学校でも中学校でも、子どもたちのアンケート結果によると、社会科は「嫌われている教科」ランキングでランクインすることが多いようです。小学校の先生方からも、社会科をどのように教えたらよいか戸惑っているという声もときどき聞きます。その事実を何とか変えたいと思っています。本書は、そんな思いが詰まった1冊です。
 本書の特色は、何といっても、QA形式で書かれていることです。この場合のQは、質問というよりは、悩みや困りごとです。しかもそのQが、数行ではなく1ページ分あり、具体的な内容になっていることが本書の特色です。経験のある人ならばこの悩みや困りごとに「確かに社会科の授業ではあること」と共感するのではないでしょうか。Aについても、1つ目がWHY(悩み、困りが生じる原因についての解説)、2つ目がHOW(悩み、困りを解決する方法の紹介)というように、原因を示したうえで具体的な解決方法を述べています。ただ単に困りごとの解決のためのハウツーだけではなく、原則的なものを読み取ってくださればと思います。
 教師になってから多くの先達から学んできましたが、いつの間にか周囲には後輩が多くなりました。現在は、教師を目指す学生たちに日々教えています。ですから、現在の自分の役割は、先達から学んだ社会科教育のバトンを後輩たちにきちんと引き継ぐことだと思っています。特にも、今後激動する社会の中で教育を支えていく世代の先生方に、そのバトンを渡していきたいと思っています。
 本書はそのバトンの1つであり、私が伝えたいことが凝縮しています。多くの方々に手にとっていただければ幸いです。

(構成:矢口)
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