著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
算数授業の疑問や悩み、根本から解決します
関西大学初等部尾ア 正彦
2020/12/7 掲載
 今回は尾ア正彦先生に、新刊『WHYでわかる! HOWでできる! 算数の授業Q&A』について伺いました。

尾ア 正彦おざき まさひこ

関西大学初等部教諭。新潟県公立小学校勤務を経て現職。
スタディサプリ小学算数講座講師
全国算数授業研究会常任理事

―教科書で、1つの問題に対して扱われている考え方が3〜4つ程度あるとき、それらをすべて子どもから引き出すのは難しいこともあると思います。そういった場合はどうすればよいのでしょうか。

 教科書には3〜4つの考え方が掲載されている問題が多くあります。しかし、だからといって、それらの考え方をすべて取り扱わなければいけないのではありません。
 それらの考え方には質の差があります。大切なことは、本時の中核となる質の高い考え方が子どもから生まれてきているのかどうかです。質の高い考え方がすでに生まれてきているのであれば、教科書にあるその他の考え方が子どもから生まれていないからといって、わざわざ取り上げる必要はありません。子どもたちは、そもそもその他の質の低い考え方を必要とは考えていないのです。
 一方、必ず引き出したい質の高い考え方が出てこない場合があります。その際は、教師から「教科書にはこんな考えが載っているんだけど、どんな考え方かわかるかな?」と子どもに投げかけます。教科書は開かず、そこに掲載されている考えの一部だけを提示します。例えば、式と図が掲載されていたら、式だけを提示するのです。式をヒントに、質の高い考え方を子どもから引き出していくのです。教科書の考え方を一部分だけヒントととして提示するのです。教科書をうまく使いこなせばよいのです。

―授業の終末で「ふりかえり」を書かせる先生は多いと思いますが、そのふりかえりが形骸化しているというお悩みをよく聞きます。こういった問題はどうすれば解消できるのでしょうか。

 「ふりかえり」を書かせる教師の言葉とそのタイミングに問題があります。よく目にするのは、次の指示です。
 「今日の勉強のふりかえりを書きましょう」
 この指示では期待するようなふりかえりが書けないのも無理はありません。指示の内容が曖昧だからです。曖昧な指示だから、ふりかえり内容も曖昧になるのです。
 質的に高いふりかえりを期待するのであれば、2つの改善が必要です。
 1つ目は、ふりかえりを書かせるときの指示を具体的にすることです。どの時間でも同じ指示ではなく、その時間にしか使えない指示の言葉を使うのです。例えば、きまりを発見することが目的の授業であれば、次のように指示します。
 「花子さんが見つけたきまりは、どんなきまりでしたか。ノートに書きましょう」
 本時の授業内容に即した具体的指示を出すのです。たった今、学習したことを文章で再現させ指示を出すのです。これなら、毎時間、同じパターンのふりかえりになるはずはありません。ましてや、感想文的なふりかえりになることもありません。
 改善点の2つ目は、ふりかえりを行うタイミングです。花子さんがきまりを発見したのが授業開始25分後であれば、その直後にふりかえりを行えばよいのです。学びのピークにふりかえりを行うのです。学びのピーク直後であれば記憶も鮮明です。ふりかえりを授業終末に行う必要はまったくありません。
 ふりかえりを書かせる教師の考え方が形骸化しているから、子どものふりかえりも形骸化してしまうのです。

―自分が想定していた展開と実際の授業展開が異なるというのも、特に経験の浅い先生には大きな不安の1つだと思います。そんな時はどうすればよいのでしょうか。

 教師が想定した展開と実際の展開が異なるパターンは、3つあります。
 1つ目は、そもそも想定した反応が生まれない場合です。例えば、子どもから生まれてくる考え方が1つしかない場合です。この場面で、焦って「他の考え方はないかな?」と投げかける必要はありません。それを考える必要性が子どもにはないのですから。この場合は、子どもから生まれてきた1つの考え方を、そのまま「この考え方なら、もうどんな問題もできるね」子どもに投げ返せばいいのです。考え方の一般性を問うのです。これで子どもは急に不安になります。「〇〇の場合はできないかも…」と考え、新しい考え方が生まれてきます。1問目で焦るのではなく、もっと先の場面で想定した反応を引き出せばよいのです。
 2つ目は、教師はAとBの考え方を想定していたのに、子どもたちはBとCに興味をもった場合です。この場合は、子どもの考えに寄り添えばいいのです。子どもの興味のあるBとCを話題に授業を展開していけばよいのです。子どもの思いに寄り添うことが基本です。
 3つ目は、教師はズレを想定していなかったのに、実際の授業では子どもにズレが生まれた場合です。実は、子どもが勝手にズレていく場面は案外多いのです。このような場面の多くでは、教師はそのズレをなかったことにして、授業を先へ進めてしまうことがあります。子どもがズレを感じたのは、そこに数学的な価値があるからです。このような場面では、「そうかあ、みんなはそう考えるのかあ」と、子どもから生まれたズレを楽しむのです。このズレを楽しみながら、その後の授業展開を修正していけばよいのです。
 ズレの実態に応じて授業を柔軟に修正していくことが大切です。

―最後に、読者の先生方にメッセージをお願いします。

 子どもたちと算数の授業を展開していると、「なんで?」「あれ、どういうこと?」などの声が上がることがあります。子どもたちが、目の前で展開されている授業展開のどこかに違和感を抱いた姿です。これらはいずれも素直な子どもの思いの表出と考えられます。
 算数の授業は、このような子どもの素直な声を教師が真正面から受け止めて授業をつくり上げることが大切です。それが、主体的・対話的で深い学びの授業の改善にもつながっていくからです。
 素直な子どもの声を楽しみ、その声に応じて授業展開を修正していくと、教師の想定以上に授業に深まりが生まれてきます。この段階まで到達すると、教師も子どもも算数授業を思う存分に愉しむことができます。こんな理想の授業の実現を目指して、私は毎日の算数授業を進めています。
 理想の授業の実現のためには、4月の算数授業開始場面から、教材研究段階、授業終末段階までに渡って様々なコツを駆使していくことが必要になります。本書では、Q&A形式でそれらのコツを伝えています。教師も子どもも思いっきり算数授業を愉しむために本書をお手にとっていただけたら幸いです。

(構成:矢口)
コメントを投稿する

※コメント内ではHTMLのタグ等は使用できません。