- 著者インタビュー
- 国語
本書全体がそういうつくりになっていますが、まずは「なぜそうした指導を行うのか」を考えることが大切です。
なぜ、ノート指導をするのでしょうか。
これはもちろん、学力の定着、向上のためです。それなのに、「きれいなノート」が目的化してしまっていることが多いように感じます。
では、学力向上のために、ノートをどのような目的で活用するとよいのでしょうか。ざっくりと分けると、私は次の5つの目的があると考えています。
1 漢字などの練習のため(漢字等の定着)
2 復習のため(これまでの学習の振り返り・確認)
3 記憶の定着、理解を深めるため(黒板を写すことで)
4 問題解決のため(自分で課題を解く、ノートを使って思考する)
5 思考の整理のため(本時のまとめ、ふりかり)
こうした目的を押さえ、「今はなんのためにノートをとらせているか」を指導者が意識しておくことが大切です。
そのうえで、留意したいのは、次の3つです。
1 ある程度丁寧に書かせる(あとで読み返せるように)
2 黒板を写す時間を与える(写しながら理解を深めさせるため)
3 自分の考えを書く時間を確保する(自力での問題解決、振り返りのため)
こうしたことを継続していくようにしましょう。
漢字は書けないよりも、書けた方がいい。もちろん、それはそうです。しかし、これからの時代、本当に漢字が書けないとだめなのでしょうか。
教員のように黒板に字を書くような職業はともかく、多くの仕事では、パソコンを使って文章等を書いています。その際、漢字は書けなくても、候補の中から適切な漢字を選べれば事足ります。
また自筆で書く場合も、スマホがあればすぐに漢字を調べることができます。
そう考えると、漢字指導で一番大切なのは、漢字が読めることであり、その次は、文脈の中でどの漢字を使うべきか選択できることだと言えます。
漢字が苦手な子というのは、前学年までの漢字が読めないことが多いものです。ですので、これまで学んできた漢字をどの程度読むことができるのか調べ、まずはそれらをしっかりと読めるような指導を行うよう心がけるとよいでしょう。
こうした課題のある子への指導をするには、まずはその原因を分析するようにしましょう。漢字が読めないのか、言葉をかたまりとして捉えられないのか、それとも学習障害等があるのか…。単なる練習不足と決めつけ、「もっと練習しなさい」と指示するだけでは問題は解決しません。
原因によって対処法は変わりますが、基本的には、音読が苦手な子には次のような指導をします。
1 読む場面を限定する
1ページ分を音読練習する場合でも、苦手な子には「まずは、この3行だけ読めるようにしよう」と限定して練習させます。
2 読めない字にふりがなを振らせる
苦手な子は全体指導で教えても、読めない字にふりがなを振っていない場合があります。そこで、その子のそばで音読を聞き、つかえた言葉にふりがなを振らせます。
3 少しずつ長く読めるように追い読みさせる
「おじいさんが/かぶのたねを/まきました」という文があれば、はじめは「/」で区切って追い読みをさせます。次に「おじいさんが かぶのたねを」で区切ります。そして、最後は一文全部を読ませます。かなり音読が苦手な子は、目で文章を追えていないことがあるので、こうした指導の際、読む場所を指さしさせるとよいでしょう。はじめは、「おじいさんが」と読むときに、1字1字ゆっくり指を移動させます。それができるようになったら、「おじいさんが」の「い」の横あたりに指を置かせ、そこを読み終える少し前に、「かぶのたねを」の横に指をずらすようにさせます。次第に指を移動させる間隔を広くしていくと、音読スピードが上がります。
若いころ、「だれでもすらすら音読をさせられるようになる技術」といった「HOW TO」に非常に惹かれました。そんなあるとき、野口芳宏先生(植草学園大学名誉教授)から、「根本・本質・原点」の大切さを教わりました。技術というのは表面的なものである。その技術が生まれた根本は何かということを押さえてこそ、その技術が真に役立つものとなる。野口先生のお話を聞いて、私はそう解釈しました。
それからは、授業とは何のために行うのか。なぜすらすらと音読させる必要があるのか。そうしたことを一つひとつ考えるようになりました。そして、そのことで自分の実践が広がり、より確かなものになっていくことを実感しました。
こうしたことから、本書では、まず「WHY」として、なぜそうした悩みが起きるのか、どのように考えて解決すればよいのか、「根本・本質・原点」にかかわる考えを述べました。そして「HOW」では、悩みを解決するために、どのように指導すべきかの具体策を述べました。
このように、単に指導技術だけを身につけるのではなく、その根底となる考えもわかる構成となっています。
「何のための指導か」をセットにした技術を身につけ、よりよい実践をしていくために、ぜひ本書を手にとってくださればと思います。