著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
GIGAスクール時代、ICTは使うと得するツールです
東京学芸大学鈴木 直樹
2020/9/4 掲載

鈴木 直樹すずき なおき

東京学芸大学大学院修了。博士(教育学)。公立小学校に9年間勤務後、2004年から埼玉大学、2009年より東京学芸大学で勤務している。2008年にはニューヨーク州立大学コートランド校、2017年にはメルボルン大学で客員研究員として体育でのICT利活用に関する研究に取り組んだ。体育の学習評価研究を中心にしながら、体育教師教育の研究、子供中心の体育の実践研究、体育におけるICTの活用や遠隔体育に関する研究に学校教員や企業と連携して取り組んでいる。

―教育界のICT化もいよいよ本格的になってきました。最近、「GIGAスクール構想」という語をよく目にしますが、「GIGAスクール構想」とは何か、いつ何が始まるのか、簡単に教えていただけますか。

 GIGAとは「Global and Innovation Gateway for All」の略で、日本語にすれば、「全ての子供の為のグローバルとイノベーションの入口」ということになると思います。すなわち、GIGAスクール構想とは、「児童生徒向けの1人1台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備し、多様な子どもたちを誰一人取り残すことのなく、公正に個別最適化された創造性を育む教育を、全国の学校現場で持続的に実現させる構想」です。当初、2023年度中に、インターネットに接続できる学習用端末を1人1台にするように取り組んできましたが、新型コロナウイルスの感染拡大によってICT利活用に注目が集まり、2020年度中に配備完了を目指すよう、計画が前倒しされました。すでに、2,292億円の補正予算(令和2年度)が計上され、準備が進んでいます。本書は、GIGAスクール構想をより良く進めていく上でも活用可能な内容を数多く掲載しています。

―最近、各教科でICTを活用した授業が積極的に行われてきています。体育授業では、どんなところでICTを活用しやすいか、体育授業とICTの相性を教えていただけますか。

 体育は身体活動を中心として学習が展開されます。そこで、「見えない世界」を視覚化することでICTは有効に活用することができます。例えば、「活動の説明」をする際に、行う動きのイメージを動画で見せれば、短時間で活動のイメージを明確にもつことができます。また、学習成果として実際の動きや話合いの活動を動画や音声で記録することもできます。さらに、心拍数や移動距離なども数字や軌跡などで視覚化することが可能です。指導時や学習時に活用してきた情報を可視化することで、学びを深めることが可能になります。体育では、身体活動が中心になるので、ICTを活用している時間がもったいないと考えられがちですが、むしろ、質的にも量的にも学びを深める為に、ICTは有効に活用することが可能です。そんなアイデアが、本書にはたくさん掲載されています。

―本書では、ICTを活用した取り組みが56本収録されています。すべて見開きで1つの活動が紹介されており、手軽に取り組めそうですね。本書の特徴と、活用方法を教えていただけますか。

 本書には、私たちが研究して実践してきたICTの利活用アイデアをたくさん掲載しています。そのアイデアは、ある特定の領域だけに限定されるものではなく、そのアイデアを使って他の領域や学習場面でも使用が可能です。本書に掲載されているアイデアは、素早くイメージできるように簡潔に示したのち、詳細を理解することができるように構成されています。読者のニーズに応じて深く理解したいアイデアを選択することができます。それぞれのアイデアには、具体的にどんな場面で活用でき、教師や子供にとってどんな利点があるのかが分かるように記載されています。本書は、読者の皆様が、ICTを利活用した体育の授業づくりをする上で必要不可欠な情報を厳選して掲載したものです。

―学校再開後も、ソーシャルディスタンスを意識した中では、体育授業にどう取り組めばよいか悩む声をよく耳にします。この時期、ICTを活用したおすすめの運動や、取り組みのアドバイスをぜひお願いできるでしょうか。

 体育は、接触を伴う身体の直接的体験が活動の中には多く含まれています。その為、ソーシャルディスタンスを意識しての取り組みには苦労されていると思います。このような状況下で有効に活用できるのは「遠隔体育」の実践でしょう。そして、このアイデアを応用すれば、家庭と家庭でなくても、体育館内やグラウンド内での新たな実践も可能になります。もちろんその際に、「ハウリング」(スピーカーを使用する際に高周波の音が発生するトラブル)をしてしまうこともあるので、システム環境の設定には工夫が必要なこともありますが、十分に応用が可能です。また、ソーシャルディスタンスを意識すると話合い活動等が十分にできないことも多いと思います。それをカバーするために、オンライン上でファイル共有やチャット、ホワイトボードなどの機能を使って協働的に思考することが可能です。人と人をつなぐツールとしてのICTの利活用が、まさにソーシャルディスタンスを意識した体育授業においては有効であると思います。

―最後に、全国の先生方へ向け、ぜひメッセージをお願いします。

 私は1995年に小学校教員になった年から授業でパソコンを活用して授業に取り組んできました。あれから、20年が経ち、ICT環境は大きく変わりました。しかし、一方で、学校でのICTの利活用方法には大きな変化がないように感じています。私たちが子供時代、鉛筆とノートが学校だけでなく、社会でも重要なアイテムであったのと同様に、今を生きる子供たちにとってICT機器は社会においても重要なアイテムとなっています。そのICTを使いながら、学びを深めていくことは全ての教科にとって不可欠と言えると思います。
 もはやICT機器は使わなければいけないツールではなく、使うと得するツールになっています。つまり、学びにも指導にも利益をもたらすツールなのです。そこで、多くの利益を得る為に、使い方のヒントとしてアイデアを提示したのが本書です。今後、皆様がこのアイデアを手がかりにして、もっともっと活用方法を拡げてくださることを期待しています。そして、アイデアを共有することができればこの上ない喜びです。何か、実践で困ったことがあれば、体育ICT研究会(ict.pe.sport@gmail.com)までご連絡を頂ければ幸いです。

(構成:木村)
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