著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
個別最適化した教育の実現を
上越教育大学教職大学院教授西川 純
2020/6/12 掲載
 今回は西川 純先生に、新刊『Society 5.0に向けた進路指導 個別最適化時代をどう生きるか』について伺いました。

西川 純にしかわ じゅん

1959年東京生まれ。筑波大学生物学類卒業、筑波大学大学院教育研究科修了(教育学修士)。博士(学校教育学)。前臨床教科教育学会会長。上越教育大学教職大学院教授。『学び合い』(二重括弧の学び合い)を提唱。
主な著書・編著・共著に、『特別支援学級の子どものためのキャリア教育入門』(基礎基本編・実践編)ほか「THE 教師力ハンドブック」シリーズ『今すぐ出来る!全校『学び合い』で実現するカリキュラム・マネジメント』『子どもを軸にしたカリキュラム・マネジメント』『資質・能力を最大限に引き出す!『学び合い』の手引き』(ルーツ&考え方編・アクティブな授業づくり改革編)『マンガでわかる『学び合い』』(以上、明治図書)などがある。

―学歴モデルの崩壊やSociety 5.0という言葉に代表されるように、今、日本の社会は大きく変化していますが、なぜそのような変化が生まれているのでしょうか。また、それにあわせて学校教育は、どのような対応が必要なのでしょうか。

 日本は長らく唯一の中進国でした。即ち、先進国が開発した新製品・新サービスの改良によって生きていました。ところが数多くの中進国が生まれ、その中で競争が生まれました。性能での差がなくなり、価格競争では先進国並の賃金が足かせになるようになりました。日本は新製品・新サービスを生み出す真の先進国にならなければなりません。教育も規格化された人材ではなく、個性的な人材を生み出す教育に脱皮する必要があります。

―この春、広域通信制高等学校の一つであるN高等学校から初の東大生・京大生が誕生したことが、ニュースで大きく報じられました。本書の第4章では「通信制高等学校Q&A」として解説いただいていますが、私たちがこれまで学んだ高等学校との違いとその可能性について教えてください。

 現在の学校は基礎的・基本的な学力の保障という美名のもとに、すべての子どもに一律の学力を与えています。そのような教育では個性的な人材を育てることができません。広域通信制は学習指導要領の縛りが弱いので、個別最適化した教育を実現することができます。その点が最大の違いです。

―本書の中で先生は、社会の大きな変化の現状分析と、その変化に対応したキャリア教育の選択肢・可能性を小中学校・高等学校の先生方、保護者の方に提案されています。現状を打開し、変革していくには、どのようなことが大切になるでしょうか。

 教育は100万の人たちが関わる巨大組織です。自己改革はできません。一方、子ども・保護者は今の教育では将来が危ういことを理解し始めています。その方々に、本書を紹介することによって変化を引き起こすことができます。

―2020年初頭から感染が拡大したコロナウイルスにより学校も3月から休校となり、2か月以上の休校を余儀なくされる中で、オンライン学習への取り組みも話題になっています。公教育としてのローカルな価値は大切にしながらも、オンラインなどによる多様性を活用していくには、どのようなスタンス・取り組みが大切でしょうか。

 これから始まるコロナ禍における学校は、厳しい環境に置かれます。これの出口はオンライン授業の導入しかありません。しかし、多くの学校は対面式授業の呪縛から逃れられないでしょう。結果として、多くの子ども・保護者は公教育を捨てます。一方、コロナ禍において公教育におけるオンライン授業に取り組む一部の学校・教師はいます。その人たちが一人でも多くなれば、アフターコロナでガタガタとなる公教育を、次のステージにソフトランディングできます。

―最後に、読者の先生方へ、メッセージをお願いいたします。

 時代を逆戻りさせることは、どんな権力者でも不可能です。しかし、時代の速度を速めることは、一般人である我々も協同して行うことができます。即ち、進路に迷う子ども・保護者に本書を紹介していただければと願います。

(構成:及川)

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