著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
教師生活は、30代からおもしろくなる
東京学芸大学附属小金井小学校加固希支男
2020/2/25 掲載
 今回は加固希支男先生に、新刊『学級経営OVER35』について伺いました。

加固 希支男かこ きしお

1978年生まれ。立教大学経済学部経済学科を卒業し、2007年まで一般企業での勤務を経験。2008年より杉並区立堀之内小学校教諭、墨田区立第一寺島小学校教諭を経て、2013年より東京学芸大学附属小金井小学校教諭。
日本数学教育学会算数教育編集部幹事。

―本書の表紙には、「30代以降の学級経営の核を持て!」と書かれています。OVER35教師である加固先生ご自身の「学級経営の核」をズバリ1つあげるとすると、それは何でしょうか。

 「笑い」です。いつもふざけたことを考えています。生産性がなくたっていいんです。とにかく、みんなが楽しくなるようなことを考えます。
 「笑い」というのは、とても大切なことだと思っています。実は、真面目なことや真剣なことをしても、意外と人を結びつけません。学生のころの友だちと会って話す思い出話は、一生懸命やったことではなく、くだらないことの話ばかりです。でも、それが大事なのです。くだらないことをして、みんなで笑うことで、人と人はつながっているのです。
 また、「笑い」というのは、相手意識をもたなければ生まれません。同じことをしても、おもしろいときとおもしろくないときがあります。そこにいる人、その場の雰囲気、そういうことを感じなければ、おもしろいことはできません。だから、「笑い」を大切にするということは、実は、相手を思いやることにつながっていくのだと考えています。
 子どもには、「おもしろいことを考えることが一番大切で、一番難しいことだ」と言っています。「一生懸命、くだらないことを考える」ということが、私の学級経営の核になると思っています。

―本書を読んでいると、「豪快だな」と感じる話が随所に出てきます。今の時代、どんな場面でも、踏み込んだ指導というのは躊躇してしまいがちだと思いますが、それができるのはなぜでしょうか。

 自分では、自分のことを豪快だとは思ってはいませんが、「もしかすると、他の先生とは違う方法を取っていることもあるかな」とは思います。また、「踏み込んだ指導」に見えるかもしれませんが、これも自分としては踏み込んだ指導だとは思っていません(本当に踏み込んだ指導は、本には書けません(笑))。
 ある指導が「踏み込んでいる」のか「踏み込んでいない」のかは、時と場合によると思います。よく「敬語を使いましょう」とか「〇〇さんと呼びましょう」とか、指導方法が形式として決まっている場合があります。しかし、その形式に則っていれば問題が起きないかというと、そうではありません。
 そして、子どもとの関係も重要です。どんなに敬語を指導したとしても、子どもとの関係が悪ければ、子どもは指導を聞き入れようとはしないでしょう。私が子どもからどれくらい信用されているかはわかりませんが、「子どもに何か指導するのであれば、『この人の言うことは聞いてもいいかな』と思わせる努力はしよう」とは思っています。そのためには、「自分だったら、こんな人の意見は聞くかな」と思える人になろうと努力することです。

―一方で、本書を注意深く読んでいくと、子ども対応や保護者対応における、加固先生の「細やかさ」も目立ちます。ご自身では、どのようなことを意識して目配りをされているのでしょうか。

 そうなんです。本当に私は繊細なのです(だれも言ってくれないので、自分で言うようにしています)。
 子どもに対しては、ちょっとした仕草とか、言葉づかいとか、そういうことに気を配るようにしています。変化があったときはよく見るようにしていますし、声をかけるようにはします(わざとらしくならないように)。
 具体的に「こうなったら、こうだ」とは言いきれないのですが、やっぱり毎日見ていたら少し気になることってあります。でも、すぐに問い質したり、指導したりはしません。少し間を置きます。もちろん、子どもから相談されたら話は聞きますが、そのときも、指導するかどうかは子どもの意見を尊重します。
 問題の多くは人間関係です。教師は、どうしても子ども同士の関係をよくしたいと考えるあまり、すぐに介入してしまいます。でも、子どもからすれば、迷惑なことも多いと思います。クラスに35人もいれば、仲のいい人もいれば、そうでない人もいて当たり前です。それなのに、教師がすべての子どもを仲良しにしようとすれば、正直「ウザい」のです。人間関係は時が解決をすることもあります。だから、あまり焦らずに見守ってあげる忍耐力が必要だと思います。要するに、距離感を大切にすることなのだと思うのです。ただし、放っておくのではなく、ちゃんと話は聞いたうえで「じゃあ、どうする?」と子どもと一緒に解決方法を決めていくのがよいと思います。

 保護者に対しては、あまり気を配っていることはありません。まだまだ私の方が若輩者であることの方が多いですから。ただ、「保護者は一緒に子どもの成長を応援する協力者だ」と意識はしています。だから、こちらからお願い事をすることもありますし、保護者からお願いされたことは、できるだけ応えようとします。「保護者に言われたことをやるのは、ナメられる」みたいな威厳の保ち方なんて必要ありません。
 また、子どもとの関係を築くうえで大切にしている「笑い」というのは、保護者に対しても大切だと思います。保護者とのかかわりも、なるべく楽しいものにしたいと考えています。

―最後に、OVER35の先生方、あるいはこれから30代を迎えようとしている先生方にへメッセージをお願いします。

 教師生活に限ったことではありませんが、若いころと今とでどちらが楽しいか、と言われたら、絶対に「今」と答えます。できることは増えていくし、自由度も増えます。小銭も持っています。また、だんだん失うものがなくなってきます。「毎日楽しく過ごせたら、それで十分」と思えるようになっていきます。失敗しても気になりません。むしろ「今度、この失敗を話したら、笑いになるな」とか思えるようになります。
 ですから、今30代の先生、これから30代を迎える先生には、これぐらいの気持ちで、とにかく教師生活を楽しんでいただきたいと思います。
 ちなみに、40代になると、さらにいい加減さが増してきて、人生が笑顔であふれます。つまらないことを言ってみんなが笑わなくても、なぜか自分一人だけ笑えるようになります(笑)

(構成:矢口)
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