著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
苦手さのある子のソーシャルスキルを育もう
発達支援教室ビリーブ代表加藤 博之
2019/7/11 掲載

加藤 博之かとう ひろゆき

筑波大学大学院教育研究科修了。埼玉県内の小学校・特別支援学校及び昭和音楽大学の専任教員を経て、現在、発達支援教室ビリーブ代表。文教大学非常勤講師。学校心理士。ガイダンスカウンセラー。認定音楽療法士。

―本書は『学びと育ちのサポートワーク』のシリーズの8巻『ソーシャルスキル「イメージ力」アップ編』として刊行されていますが、本書のねらいをどうぞ教えてください。

 本書は本シリーズ5巻(「柔軟性」アップ編)の続編として、ソーシャルスキル全般の力を育てることを目標としています。特に、身につけた技能をスムーズに発揮できるよう、「イメージする力」を育てることに力を入れています。また、相手の気持ち(他者視点)を読み取るプロセスを重視したワークを取り入れることで、人に対する興味を高めていくことも目指しています。
 

―ソーシャルスキル(社会性)について、先生はどのように捉えていますか。

 ソーシャルスキル、すなわち「相手とうまくつき合うための技能」は、スキルとして獲得しても、実際に使うことはとても難しいと考えています。なぜなら、「こんなときはこう振る舞えばよい」というスキルが、いつでもうまく使えるとは限らないからです。場面がほんの少し違えば、せっかく身につけた技能もほとんど役に立たなくなってしまいます。そのため、私たちは子どもにスキルを獲得させると同時に、それを柔軟に使えるよう、似ていて少し違う場面に対応できる力を身につけさせたいと考えています。

―「人への興味を高める」ために、先生はどのようなことが有効だと思われますか。

 まずは、相手の行動や言動に注目することが大切になってきます。その下地があって初めて、やりとりに発展していくわけです。とは言え、注目すること自体が難しい子どもがたくさんいます。まずは周りの大人が、子どもが発した言動をわかりやすく代弁してあげるとよいでしょう(「○○ちゃん、日光に行ってきたんだって」「先生も去年の夏、行ったよ」等)。その際、できるだけ本人の興味・関心に寄り添うことが大切です。また、日頃「質問に答える側」の子どもに対し、「質問を作る側」になる場面を多数設けます。役割交代をすることで、相手の立場や気持ちを考えられるよう目指しています。

―他にも、本書の特徴となる部分がありましたら、教えてください。

 学校生活において、子どもたちは「問題を解き答えを導き出す」ことが求められています。それは大切なことですが、対人関係においては、常に明確な答えが出るとは限りません。場合によっては、答えが出ないまま、平行線をたどることもあるでしょう。そんなとき、焦らず、時間をかけることで、事態が改善されることがあります。ワークに「複数の答え」や「答えが出にくいもの」を設定したのは、粘り強く考える姿勢を身につけさせたいためです。そのことが、真のソーシャルスキルの力につながるものと考えています。

―最後に、学校現場で頑張る先生にメッセージをお願いします。

 特定の子どもたちにとって、人とうまくやっていくことは永遠の課題なのかも知れません。私たち大人は、対人関係を考えるときに、どうしても子どもの「うまくいかなかった部分」にばかり目を向ける傾向があるのではないでしょうか。しかし実際には、何とかうまくつき合っている場面も多数あるということに注目しなければなりません。「なんとかしてあげよう」と力み過ぎず、大人自身がもう少しリラックスして、ユーモアたっぷりに振舞っていくことで、子ども同士の関係がうまくいくこともあるのだと思います。子どもは問題行動を一つ一つ解決することで育つわけではありません。多少の課題はあるものの、全体としておおらかに見ていくことこそが、ソーシャルスキルのような難しい課題に向かっていくために必要不可欠な姿勢なのだと、本書を通じて改めて考える次第です。

(構成:佐藤)
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