- 著者インタビュー
- 社会
本書は、始めから通して読む本というより辞書的な使い方が合っている本です。目次やタイトルなどをヒントにして、苦手な分野など自分にとって必要な事項、研究テーマと関連する事項、気付かず見落としていた事項などから読んでいただくとよいと思います。ただし、これから社会科の授業づくりの全般を学ぼうと考えている若い先生には、始めから通して読んでみることをお薦めします。
社会科だけでなく、専科教諭が配置されない学校の図画工作や音楽、家庭なども指導しづらいはずです。教科書のない総合的な学習の時間も子供主体のよい授業をしようとすれば、やはり難しく指導しづらいはずです。しかし、各教科等に共通する指導技術は必ずあります。本書で示したスキルにも他教科と共通するものがたくさんあります。どれかの教科等を選んでその技術をしっかり身に付けることが大切です。各教科の特質を深めるのは、その次でよいと思います。
細かな指導技術を網羅的に覚えたり身に付けたりしても実際には役に立ちません。なぜなら、学級経営と教材研究が伴わなければ、上滑りの指導になるからです。学級経営では集団で力を合わせて学ぶことの大切さを浸透させること、教材研究では何を教えるか(アンサー)だけでなく、子供の問い(クエスチョン)からスタートして思考や表現の過程(プロセス)を含めて考えることが腕を磨く近道でしょう。
日本の子供たちは対話が得意でないことを踏まえ、教師の揺さぶりや問い返しなどで「まよう」「困る」など対話の必要性を感じるようにすることが必要です。また、話形だけ教えても話し合いはできません。他者の話を聞いて受け止め反応する力を褒めて育てることが大切です。その上で、教師は教材をよく研究し、板書などで「立場」「違い」などを意識して子供の意見を整理します。発言が得意でない子供もこれを見ながら考えられるようになっていきます。
新学習指導要領の目標や内容は、知識及び技能、思考力・判断力・表現力などの資質・能力に整理されて示されているので、評価規準がイメージしやすいと思います。これらの資質・能力はバランスよく育成することが重要であり、その鍵は見通しをもって評価の観点を位置付けるなど単元設計にあります。本時の目標に対応させ欲張らずに観点を絞ること、単元の前半は指導に生かすことを重視し後半で記録に残すこと、「振り返り」など立ち止まって自分(たち)の学習状況を見つめる場を設定することなどが、これからの学習評価では大切になります。
新学習指導要領は、資質・能力を重視して改訂されたもので、いわば「目標の改訂」です。解説などを読み、教科目標や学年の目標をしっかり把握することをお勧めします。そうすれば、その教科がどのような人間を育てようとしているか、そのために何を身に付けるようにしているかが見えてくるはずです。スキルはその中の一つで、本書の通り様々考えられます。大切なことは「何のために」と目的、すなわち育成を目指す資質・能力を見定めることです。