著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
高学年女子が「私は私」として生きていけるように
北海道旭川市小学校宇野 弘恵
2018/5/22 掲載
 今回は宇野弘恵先生に、新刊『タイプ別でよくわかる! 高学年女子 困った時の指導法60』について伺いました。

宇野 弘恵うの ひろえ

1969年、北海道生まれ。旭川市内小学校教諭。2002年より教育研修サークル・北の教育文化フェスティバル会員となり、思想信条にとらわれず、今日的課題や現場に必要なこと、教師人生を豊かにすることを学んできた。現在、理事を務める。
主な著書・編著書に、『小学校低学年 学級経営すきまスキル70』『小学校低学年 生活指導すきまスキル72』『学級を最高のチームにする!365日の集団づくり 2年』『スペシャリスト直伝! 小1担任の指導の極意』(以上、明治図書)などがある。

―本書は、指導が難しいといわれる「高学年女子」について、その性質と特徴や信頼関係の結び方、タイプ別の理解の仕方から、問題行動や悩みへの対応、保護者との関係づくりまでを具体的におまとめいただいた書籍ですが、まず本書のねらいと読み方について教えてください。

 本書は、社会で後天的につくられた「女子的気質」に目を向け、学校という社会で生きる高学年女子を捉え直し、その上で女子とどうかかわり指導するかを提案しています。「なるほど」で終わるのではなく、女子との良好な関係性を築くにはどうすればよいかを、それぞれが考えながらお読みいただければと思います。

―高学年は思春期に入り、男女共、心身ともに成長する時期ですが、男子よりも女子の方が2年ほど成長が早いといわれます。第1章では、高学年女子の指導はなぜ面倒で難しいといわれるのか、その性質や背景について解説いただいていますが、男子に比べて、大きな違いとは何でしょうか。

 最も大きな違いは、女子の攻撃性は裏に隠れるということです。男子は怒りを表に出すため、殴ったり蹴ったりして他者を攻撃します。一方、女子は「かわいい方が女子らしい」といった社会的概念がリミッターとなり、暴力ではなく、悪口や仲間外しといった陰険な方法で攻撃します。よって、周りから問題が見えにくくなり、それが指導を複雑にするのです。

―高学年女子についてよく聞かれる話として、クラス内でグループに分かれて対立したり、グループに馴染めず孤立したり、といったことがあります。男の子に比べても顕著なようで、高学年女子を悩ます最たる問題が友だち関係ともいわれますが、どのようにかかわっていけばよいのでしょうか。

 最終的には、「私は私として生きていく」という意識をもたせることだと思います。そのためには、自分を愛する気持ちを育てなくてはいけません。他と違う私、醜い心をもった私も「私」として受け入れていく、そんな心持であることが大事だと思います。「グループ化はよくない」といった頭ごなしで一辺倒な指導ではなく、女子のできなさや醜さに寄り添う姿勢でかかわることが大事だと考えます。

―先生は本書の中で、高学年女子をあえて「いるか女子」「ひつじ女子」「おおかみ女子」「くじゃく女子」の4タイプに分類して見ることを提案されています。本文で詳しく紹介されていますが、その特徴と対応法について、教えてください。

 「自立性」「協調性」の2軸で、女子を4つに分類してみました。どちらも備えているのがいるか、協調性が目立つのがひつじ、自立性が顕著なのがおおかみ、どちらも不足しているのがくじゃくと分類しました。その特徴を知ることで教師とのかかわり方や育てるポイントを、相互の力関係を知ることで学級集団の中での見取りのポイントを整理しています。ご自分の学級に合わせて応用いただけると思います。

―第6章では、保護者との関係づくりについてもおまとめいただいています。高学年になるにつれ、子どもの人間関係の変化に合わせて、保護者同士や、保護者と学校との関係性も変化してくることがありますが、協力関係を築いていくには、どのようなことが大切でしょうか。

 女子指導に限りませんが、どの子も大事な存在であるという大前提を忘れないことです。そして、保護者の努力や心遣いに目を向け、寄り添える言葉を伝えることです。保護者に対するリスペクトの気持ちがあれば、自然と日頃の感謝の言葉が出てくるでしょう。そうしたかかわりが保護者(とりわけ母親)への勇気づけになり、穏やかな気持ちで高学年女子に接することにつながるのではないでしょうか。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いいたします。

 本書のゴールは、「上手に高学年女子を指導すること」ではありません。私たち教師が楽をするため、自己実現するためではなく、高学年女子が自分を誇りに思い、自分らしく生きていける力をつけることが私たちの仕事です。ときに悩み、立ち止まる高学年女子に寄り添い、励まし、見守り、彼女たちが笑顔で生きていけるようなかかわりができれば最高です。本書がその一助になれば幸いです。

(構成:及川)

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