著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
先生方の力で創り出す第2ステージの社会科授業
前文部科学省初等中等教育局視学官・国士舘大学教授澤井 陽介
2018/4/6 掲載
  • 著者インタビュー
  • 学習指導要領・教育課程
 今回は澤井陽介先生に、新刊『小学校 新学習指導要領 社会の授業づくり』について伺いました。

澤井 陽介さわい ようすけ

前文部科学省初等中等教育局視学官。国士舘大学大学教授。
月刊誌『社会科教育』で、「最新情報で語る! どうなる・どうする社会科教育」を連載中。また、監修のリレー連載「見方・考え方を鍛える!最先端の社会科授業モデル」では、新学習指導要領対応の、全国の実践家による授業モデルを紹介しています。

―本書は、『小学校 新学習指導要領の授業づくり』シリーズの社会編として、これからの授業づくりの指針とも言える内容をおまとめいただいていますが、まず本書のねらいと読み方について教えてください。

 『新学習指導要領 社会』はこれまでの社会科の方向転換ではなく、これまで重視してきた不易の事項に未来を生きるために必要な資質・能力を加えたものです。ですから、社会科の授業づくりの基礎・基本を押さえた上で、新学習指導要領の主旨を加味していただくように読んでいただけると幸いです。

―新学習指導要領では、「主体的・対話的で深い学び」「見方・考え方」などのキーワードも示されています。これらを踏まえて授業づくりをしていくには、どのようなことが大切でしょうか。

 新学習指導要領の総則や各教科等に書かれているように「単元などの内容や時間のまとまりを見通しながら」授業設計をすることです。課題把握や解決の見通し、議論や振り返りなどを大切にすること、そのために教材をよく研究し、単元全体を見渡して問いや資料提示、対話的な学習活動などを工夫することが大切です。

―先生は本書の中で、「教師軸」と「子供軸」でデザインする社会科の単元の授業づくりについて、ポイントを挙げて説明されています。その中に「教材化の視点」「資料の作成」「問いの構想」「学習活動の構想」などがあります。改訂の主旨を踏まえ、それらの相互の関係をどのよう捉えればよいでしょうか。

 新学習指導要領では、「○○に着目して」「○○を捉え」などと、子供の「見方・考え方」すなわち頭の働かせ方をガイドしています。これは教師がそのような働きを導くよう教材を工夫すること、すなわち教材化の視点をもつことです。一方で、それは子供自身が働かせるものなので、教材を子供に届ける資料提示や学習活動の工夫が大切になります。その両者をつなぐものが「問い」になります。問いは教師が一方的に示すものでも子供が思い付きで決めるものでもなく、教師の意図と子供にとっての必然性のバランスが大切です。

―社会科における大きな変化の一つに、6年生における「政治先習」があります。主権者としての基礎を養う意味で重要なポイントとなるものですが、政治を知り、政治への関わり方を考えるためには、どのような指導が必要でしょうか。

 今回の改訂では6年生だけでなく、3・4年生から地方公共団体の働きについて学び、5年生では経済面から主権者としての「我が国の産業の発展を願い我が国の将来を担う国民としての自覚」を養うことを求めています。それらが6年生の政治学習につながって、主権者としての基礎になっていくものと考えられます。歴史より先に学ぶということよりも、そうした学びを踏まえて、内容の取扱いに示された「国民としての政治への関わり方について多角的に考えて、自分の考えをまとめることができるようにすること」が大切になります。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願い致します。

 戦後誕生した社会科が第1ステージだとすれば、今回の改訂における大整理を経た社会科は第2ステージになります。若い先生方、これから社会を研究しようと考えている先生方にとっては、スタートを切る絶好のチャンスです。ぜひ、新しい発想でこれからの社会科の授業を創り出してください。大いに期待しています。

(構成:及川)
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