著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
「深い学び」に到達させるためには、教材研究が欠かせない!
立石 泰之ほか
2017/9/5 掲載
 今回は立石泰之先生と星野直樹先生に、新刊『国語科重要教材の授業づくり たしかな教材研究で読み手を育てる「お手紙」の授業』について伺いました。

立石 泰之たていし やすゆき

1972年、福岡県春日市に生まれる。東京学芸大学卒業。福岡県公立小学校教諭、広島大学附属小学校教諭を経て、現在、福岡県教育センター指導主事。全国大学国語教育学会、日本国語教育学会会員。全国国語授業研究会理事。

星野 直樹ほしの なおき

1980年、福岡県小郡市に生まれる。同志社大学経済学部卒業。沸教大学教育学部通信教育課程修了。現在、福岡県公立小学校教諭。日本国語教育学会会員。雑誌原稿として『教育科学 国語教育』への掲載がある。

―好評をいただいている「国語科重要教材の授業づくり」シリーズ、最新刊は「お手紙」です。あらためまして、本シリーズのねらいを教えてください。

立石:新学習指導要領への移行に備え、育成すべき資質・能力や新たな学習指導の在り方が問われています。しかし、どんな状況でも、授業を構成する要素が「子ども」と「教師」と「教材」であり、授業づくりの中核となるのが教師の教材研究にあることに変わりはありません。そして、長く教科書に掲載されている文学教材には、教材として愛される理由があります。本シリーズでは、それらを“重要教材”と位置づけ、その教材としての価値を教師自身が読み解き、子どもたちの読む力を高める実践へとつなげられるよう構成しています。

―今回は低学年での超定番教材、「お手紙」ですが、教材の魅力と「お手紙」ならではの指導ポイントとはなんでしょうか。

星野:「お手紙」を読むと、ほのぼのとした温かな気持ちや人物を応援したくなるような共感する気持ち、くすっと笑ってしまうユーモアを感じます。それは、「お手紙」に、がまくんとかえるくんという「魅力的な人物像」、登場人物のかえるくんが、がまくんを喜ばせようと行動する「相手を思う気持ち」、一生懸命さゆえの「ユーモア」が散りばめられているからです。「お手紙」は、低学年で扱われる教材です。子どもたちには、がまくんとかえるくんの言動から、それぞれの気持ちが物語の始めと終わりで、どのように変容したのかを考えさせたいところです。

―授業化にあたって、気をつけられたことは なんですか。また、読者の先生方がアレンジするうえでの留意点などがあれば教えてください。

星野:行動や会話の様子を具体的に想像させた上で、その心情を考えさせることです。かえるくんが、がまくんのために急いで家に帰り手紙を書く場面があります。子どもたちには、叙述からかえるくんが急いでいる様子を捉えさせ、「なぜ急いでいるのか」と問い、かえるくんの行動の背景にあるがまくんを思う心情を考えさせました。「気持ち」を単に問うのではなく、行動や会話の叙述から様子を想像させ、ときには経験から類推させるなどしてその心情を考えさせるようにしました。

―新学習指導要領で重視される「主体的・対話的で深い学び」。教材研究ではどんな点が変わり、またどんな点は変わらず大切にすべきでしょうか。

立石:子どもたちが、他者との協働による問題解決過程の中で、知識や手続きを関連付けて概念的に身に付けたり、その有意味性を実感したりできる学習にしていく必要があります。そのためには、学習内容や指導方法について国語科教育の系統性(縦のつながり)や他教科との関連(横のつながり)を考え、教材の特性を基に、どんな読み方を身に付けさせるのかを分析する必要があるでしょう。そして、変わらず大切にしたいのは、指導者としてではなく、一人の読者として自身の読みを自覚化し、その理由を解き明かしていくことです。その教師の経験こそが、子どもたちの深い学びへのプロセスを構想するヒントとなります。

―2学期が始まり、間もなく「お手紙」の指導を控えている先生も多いかと思います。読者の先生方に向けてメッセージをお願いいたします。

星野:「お手紙」は、人物の心情を想像しながら読むことはもちろん、会話文の多い特性を生かして音読劇や創作、紙芝居、ペープサートなど多様な単元構想が可能な教材です。その際、子どもたちの生活経験や知識も取り入れると、人物の心情をより豊かに想像することができます。
 ぜひ、読み手としての視点を大切にして、「お手紙」がもつよさや魅力を子どもたちと一緒に楽しみながら、授業づくりをしていただきたいと思います。

(構成:林)
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