著者インタビュー
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理科の授業力を一段引き上げるために、「意図的な研鑽」を積もう
京都文教大学准教授大前 暁政
2017/7/6 掲載
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 今回は先生に大前暁政、新刊『理科の授業がもっとうまくなる50の技』について伺いました。

大前 暁政おおまえ あきまさ

岡山大学大学院教育学研究科修了後、公立小学校教諭を経て、2013年4月京都文教大学准教授に就任。教員養成課程において、教育方法論や理科教育法などの教職科目を担当。「どの子も可能性をもっており、その可能性を引き出し伸ばすことが教師の仕事」ととらえ、現場と連携し新しい教育を生み出す研究を行っている。文部科学省委託体力アッププロジェクト委員、教育委員会要請の理科教育課程編成委員などを歴任。

―「理科の授業がもっとうまくなる」というのが本書のテーマですが、まずはこのテーマについて聞かせてください。

 授業には、うまい下手があります。 
 では、授業がうまくなるには時間がかかるのでしょうか。
 そんなことはありません。
 授業にうまい下手があるのは、授業のやり方に、技術・方法があるからです。
 その技術・方法を知り、明日の授業に取り入れることで、授業はうまくなります。
 逆にいうと、技術・方法を知らなければ、5年経とうが10年経とうが、授業は下手なままです。
 本書では、そのような技術・方法を、「50の技」として詳しく紹介しています。

―本書の第1章では、導入発問がうまくなる技の1つとして、「心理的盲点に気づかせる」という方法が紹介されています。これは具体的にどのような方法なのでしょうか。

 「心理的な盲点」とは、見えているけれど認識できない物事を意味します。
 これは、植物の観察を例に考えるとよくわかります。
 時間をかけて継続的に植物を観察させても、漠然と眺めているだけでは何も気づきは生まれません。
 そこで、「葉のつき方はどうかな?」と尋ねます。
 すると、日光が当たりやすいように葉が互い違いについていることに気がつきます。
 言われてやっと、その情報に気づき、頭が認識してくれるわけです。
 子どもが自然には気づけないようなことに気づかせる授業。
 それこそが、知的な楽しさがある授業です。

―第3章では、教材提示にかかわる様々な技が紹介されています。この中で、子どもに実感を伴った理解を促すうえで効果的な方法を1つ教えてください。

 できるだけ質の高い体験を通すことが、実感を伴った理解を促すうえで大切になります。
 では、質の高い体験をさせるにはどうすればよいのでしょうか。
 実は、ほんのちょっとした工夫でかまわないのです。
 例えば、「繰り返し体験させること」でもかまいません。
 普段1回しか実験しないことを、複数回させてみるのです。
 あるいは、1回は教師が指定した方法でさせて、残り時間は子どもが考えた方法でさせてもよいでしょう。
 たったこれだけの工夫で、子どもたちは実に様々な気づきを得ます。
 1回の体験では得られなかった気づきが出てくるというわけです。

―第4章で扱われている「臨機応変な授業展開」は、まさに一段上の授業力が問われる部分だと思います。大前先生ご自身は、臨機応変に授業を展開するために、特にどんなことを心がけてこられましたか。

 臨機応変に授業を展開するとは、子どもの反応に合わせてその場で授業展開を変えることを意味します。
 ただし、臨機応変に授業をすることはとても難しいものです。
 臨機応変に授業をするには、多くの授業技術・方法を身につけ、それを使いこなせるまで磨かなくてはならないからです。
 ですから、まずは技術・方法を知り、それを強く意識して日々の授業で使うという「意図的な研鑽」が必要になります。
 そのうえで、子どもの反応を見ながら、子どもにとって最も深い学びになる授業を展開することが必要になります。

―第6章では、授業力を持続的向上させる技が紹介されていますが、その中に「授業の実践記録をつくる」という方法があります。そこで、手軽で効果的な実践記録のつくり方があれば教えてください。

 文書で記録を残す場合、後で役に立つ記録にしなくては意味がありません。
 そのためのポイントが、以下の3点です。

1 発問・指示・説明を明記する。
2 発問・指示の後の子どもの反応を書く。
3 子どもの実物資料をつけ加える。

 平たく言えば、後から読み返して、映像が浮かぶようにすればよいのです。
 この記録は、次に同じ単元を指導するときの参考になります。
 記録を確認し、その記録よりもっとよい授業を新しく考えるようにするのです。

―最後に、読者の先生方に向けてメッセージをお願いいたします。

 若い頃、授業がうまい先生と下手な先生がいることに不思議さを覚えていました。
 ある程度経験を積めば、誰だって授業はうまくなるのではないかと思っていたからです。
 しかし、これは大きな間違いでした。
 授業は、意図的な研鑽なしには絶対にうまくなりません。
 それがなければ、何年経とうと下手なままです。
 反対に、20代前半でも授業がうまい人がいます。
 それは、意図的な研鑽を積んできた人たちです。
 授業がうまくなるための第一歩は、「知ること」です。
 本書の役割は、まさにそこにあります。

(構成:矢口)
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