著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
「数える」「選ぶ」ことで、だれでも深い学びのある国語授業づくりができる!
筑波大学附属小学校青木 伸生
2017/7/4 掲載

青木 伸生あおき のぶお

1965年千葉県生まれ。東京学芸大学卒業後、東京都の教員を経て現在筑波大学附属小学校教諭。全国国語授業研究会会長、教育出版国語教科書編著者、日本国語教育学会常任理事、國學院栃木短期大学非常勤講師。主な著書(共著含む)に『青木伸生の国語授業 フレームリーディングで文学の授業づくり』『青木伸生の国語授業 フレームリーディングで説明文の授業づくり』『定番教材でできる! 小学校国語 3つの視点でアクティブ・ラーニング』『ゼロから学べる小学校国語科授業づくり』『基幹学力をはぐくむ「言語力」の授業』(明治図書)、『プレミアム講座 国語授業のつくり方』『フレームリーディングでつくる国語の授業』『教科書新教材15 フレームリーディングでつくる国語の授業』(東洋館出版社)、『道徳授業が深まる 国語教材活用の実践』(学事出版)他多数。

―新学習指導要領とその解説が公表されました。フレームリーディングとは共通点が多いそうですが、具体的にはどのようなことでしょうか。

 新学習指導要領の「読むこと」は、次のプロセスになっています。

「内容と構造の把握」―「精査・解釈」―「考えの形成」

 そして、フレームリーディングは、次の3つのステップで読んでいきます。

「文章の俯瞰」―「必要に応じて焦点化」―「リフレーミング(統合)」

 このように、フレームリーディングの3つのステップは、新学習指導要領に示された読むことのプロセスとほぼ同じになっていると考えています。
 まずは文章の全体像をつかみ、問題や課題が見えてきたらその解決のために詳しく読み、最後はもう一度全体をとらえ直すというステップです。「全体」―「部分」―「全体」という流れで読むことが大切であると考えています。

※“フレームリーディングってなに?”という先生は、こちらのインタビューをぜひご覧ください。

―前著では、文学説明文それぞれについて、実際の教材をもとにフレームリーディングの手法を解説いただきました。本書は“思考と表現の枠組みをつくる”と謳われていますが、前著との違いはなんでしょうか。

 本書では、前著の文学/説明文の具体的実践を、理論的に整理しました。読むことで身につけた「フレーム」は、書くことにも活かすことができます。これを「フレームライティング」と名付け、読み書き関連の重要性と、フレームを活かすことのよさを述べています。さらに、フレームリーディングの手法で培った考え方のフレームは、他の教科・領域を学ぶ上でも有効に使えるものだと考えて、「フレームシンキング」として汎用的な力の育成を提案しています。

―コラムで述べられていた“フレームリーディングが生まれたきっかけ”を読み、『フレームリーディングって、カタカナで一見分かりにくそうだけれど、考え方はとってもシンプルなんだな!』と感じました。

 実は、人は日常の生活の中で様々なフレームをもって生活しているのです。例えば、料理に関するフレームです。それまでの様々な経験から、私たちは効率よく、しかもおいしくて栄養バランスのよい食事を調理して食べています。いつ、どのようなタイミングで、何を調理すると手際よく作れるのかといった、その日の調理の全体像や、効率のよい手順のフレームをもっているからこそ、できるワザです。そのフレームが洗練されていればいるほど「料理の達人」になれるのでしょう。
 このような考え方を、文章を読むことに応用(転用?)したのがフレームリーディングです。よい読み手ほど、多様で柔軟性のある、しかも効率のよい読みのフレームをもっていると想定できます。(コラムでは、「物語スキーマ」=物語を読むときの枠組みとして紹介しています。)

―フレームリーディングの考え方そのものは、難しく考える必要はないということですね。とはいえ、フレームリーディングって何からやったらいいのかな……と思われている先生のために、フレームリーディングの最も基本的な手順を教えていただけますか。

 フレームリーディングは、読むことをシンプルにとらえようという発想から生まれています。フレームリーディングによって、「だれもが短時間で文章を丸ごと読める」ことを目指しています。でなければ、多様な子ども達のいる教室の授業では使えません。
 文章を丸ごと読む切り口が、「数える」で、焦点化に向かう切り口が「選ぶ」なのです。「数える」→「選ぶ」。これがフレームリーディングの基本です。例えば「おおきなかぶ」に出てくる登場人物を数えて、出てきた順番に黒板に並べてみてください。それだけで、この物語のあらすじが見えてきますよ。

―最後に、これからフレームリーディングをやってみようとお考えの読者の先生方に向けてメッセージをお願いします!

 文章全体を俯瞰するための切り口である「数える」ことは、読む力の高い低いにかかわらず、全員参加できる活動です。まずは授業で「数える」活動をしてみてください。そこで、クラスの子ども達の答えが一つにならなかったらしめたものです。よい授業をつくり出す一つのヒントが、「ズレ」ることなのです。どうしてみんなの数が違うのか、確かめたくなるところから、次の授業へと進んでいきます。
 先生がもっている答えを見つけるのではなく、先生と子ども達で一緒に解釈をつくっていくことのできる授業ができたら、こんなに素敵なことはありません。ぜひ、フレームリーディングを試してみてください。 

(構成:林)
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