著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
小学1年生は、国語授業がうまくいけば学級経営も成功間違いなし!
川崎市公立小学校教諭土居 正博
2017/1/31 掲載

土居 正博どい まさひろ

1988年、東京都八王子生まれ。創価大学教職大学院修了。川崎市公立小学校に勤務。国語教育探究の会会員(東京支部)。全国大学国語教育学会会員。「深澤道場」所属。教育サークル「KYOSO’s」代表。第51回「わたしの教育記録」(日本児童教育振興財団主催)にて「新採・新人賞」を受賞。翌年第52回「わたしの教育記録」にて「特別賞」を受賞し、二年連続の入賞を果たす。

―本書は、小学校1年生を担任する先生に向けた国語科指導の書籍です。「小学1年生」と名の付く本は多数ありますが、国語に絞った書籍はあまり見ませんね。なぜ国語科を中心におまとめくださったのですか?

 国語の授業でこそ、1年生を育てられるからですね。
 私自身が、高学年を担任した翌年に1年生を担任し、はじめは大変だったのを覚えています。「高学年の子たちはよく話を聞いてくれていたなぁ」と思ったものです。先生版の「小1プロブレム」状態ですね(笑)
 そんな中、自分の専門である「国語科の授業だけはこだわって取り組もう!」と決め、日々を送りました。子どもたちはガラッと姿を変え、1年生特有の学習意欲の高さも相まって、どんどん成長していきました。気づいてみたら、学級経営や生活指導で困ることはなくなっていました。一日二時間ある国語の授業を「充実」させられれば、子どもたちの「学校生活」は充実させられる!というのが実感です。
 

―本書は、「話す・聞く」「書く」「読む」「国語の特質に関する事項」の領域・事項別におまとめいただきました。入門期の子どもをまず授業に参加させるには、「聞く」ことの指導がもっとも重要だと思うのですが、先生はどのような工夫をされていらっしゃるのでしょうか。

 そうですね。まず話を聞けないと授業どころの話ではなくなってしまいますからね。「聞くこと」の指導に関して、心がけているのは、「話を聞きましょう」と直接的に指示して従わせるのではなく、自分から「聞かなくちゃ!」という思いや姿勢にさせることです。これが指導の八割から九割ですね。
 また、技能を高める面としては、とにかく「聞くこと」だけに集中する時間を「意図的に」つくりだすことによって、聞く力を高め、結果的に「聞くこと」ができるようになっていたという状態を目指していました。その活動も、1年生は集中できる時間が極端に短いので、はじめは「単語の聞き取り」から始めました。これなら誰でも「その気になれば」、確実にできます。このように、「戦略的」に聞く力を高めていく方法を本書では紹介していますよ。

―1年生と言えば「ひらがな」指導ですが、定着させるための秘訣などはありますか?

 二段階あると考えています。ひらがなを「書けるようになる段階」と、それをさらに「きれいに書けるようになる段階」です。
 はじめの「書けるようになる段階」での秘訣は、「とにかく書かせてみること」です。まだ習いたてで書けない子もいるので、なんだか矛盾しているようですが、どんどん書かせていくのです。書くことによってしか定着しません。少しぐらい間違ったってかまわない、「質より量」でどんどん書かせることがポイントです。そのためには、活動を工夫し、「書きたい!」という気持ちにさせることが何より重要です。
 次の「きれいに書ける段階」の指導は、ある程度「書けるようになった」後、取り組むのがいいと私は考えています。そして、その指導のポイントは、徹底的に「お手本と比べさせる」ということです。その中で「字を見る目」を養っていきます。ほんの数か月で見違えるほどきれいに書けるようになります。

―先生が取り組まれている指導を拝見すると、子どもたちが自ら進んで=“主体的に”学んでいる様子が繰り返しあらわれます。主体性を伸ばすためのコツなどがあるのでしょうか。

 「まだ1年生だから……」と、子どもの「足を引っ張る」ようなことはしないことですかね。これは全学年共通かもしれません。
 あとは「成長を実感させる」ということです。国語科は算数や体育などに比べると「できるようになった!」という実感がやや薄い教科です。だから苦戦する先生も多いのだと思います。成長を実感してもらうためにはひと工夫が必要です。例えば「書くこと」では「量」の可視化が一番手っ取り早いです。「たくさん書けるようになった!」と子どもに思わせるよう、活動を仕組むのです。
 そして、成長させるためには「繰り返し(反復)」が欠かせません。本書に書いてある学習活動はすべて子どもを通して実践していますが、最初からうまくいったものばかりではありません。ですが、繰り返し続けていくことで、子どもたちも取り組み方がわかり、精度が高まっていきます。そして「成長」を実感できるようになっていきます。成長を実感できている子どもは絶対に荒れませんし、教師を信頼してくれます。

―最後に、読者の先生方に向けてメッセージをお願いします!

 国語科指導の基礎中の基礎である小学1年生への指導法をまとめた本書は、他学年でも活用可能です。国語科は1年から6年まで同様のことを繰り返し、質を高めながら学んでいく「螺旋構造」であると言われますね。小学1年生への指導はその「螺旋構造のスタート」地点です。ぜひ、他学年を担任されている先生方も、「クラスの国語力」で悩まれていたら、本書を活用していただきたいな、と願っております。
 1年生担任の先生は、「あれもこれも」と欲張らず、だまされたと思って(笑)、まずは「国語の授業」に力を入れてみてください。必ず子どもたちは話を聞いてくれるようになるし、集中して課題に取り組めるようになっていきます。そうすれば、クラスを運営するのは非常にたやすいことですし、一人ひとりが「充実」していれば問題はほとんど起こりません。起こったとしても、すぐに解決できます。本書を1年生指導の「武器」としていただければ幸いです。

(構成:林)
コメントの一覧
1件あります。
    • 1
    • 名無しさん
    • 2017/2/4 22:04:45
    まず自分と同じ歳でこれだけの実践をしている事に驚き、興味がわきました。じっくり読んでみようと思います。
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