著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
「対話」と「振り返り」を大切にして、子どもの資質・能力を引き出そう!
東京学芸大学教授西村 圭一
2016/10/5 掲載

西村 圭一にしむら けいいち

東京都立高等学校、東京学芸大学附属大泉中学校、同国際中等教育学校教諭、国立教育政策研究所教育課程研究センター基礎研究部総括研究官を経て、現在、東京学芸大学教育学部数学科教育学分野教授、博士(教育学)
〈主な共著書等〉
・『中学校新数学科 活用型学習の実践事例集 豊かに生きる力をはぐくむ数学授業』、明治図書、2010
・『数学的モデル化を遂行する力を育成する教材開発とその実践に関する研究』、東洋館出版社、2012
・『中学総合的研究 数学 三訂版』、旺文社、2013

―本書は「小学校編」「中学校編」のシリーズになっています。本書のねらいとおすすめのポイントを教えてください。

 今回の学習指導要領の改訂に際しては、小・中・高等学校教育を通じて育成を目指す資質・能力を「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」の三つの柱に沿って明確化し、各学校段階を通じて、実社会との関わりを意識した数学的活動の充実等を図っていくことが強調されています。また、これまで学校での学びを中心に展開してきた算数・数学の学びについて、地域社会等の活力を生かし、児童生徒の数学的に考える資質・能力をより確かで豊かに育成していくことも要請されています。本書は、このような資質・能力は具体的にどのようなことで、どのように育成・伸長を図るかについての一つの案を提示しました。

―本書では、子どもが夢中になってペアやグループで協働的に活動できるような授業プランをご紹介いただきましたが、本書のような授業づくりに取り組むに当たって、留意いただきたいポイントがあれば教えてください。

 「対話」と「振り返り」を大切にしてほしいと思っています。
 「正解」がわかっている人とそうではない人が話し合うのは、本当の「対話」ではないと考えています。互いに考えを出し合い、その考えの根拠や背景にある価値観を問い、問題の解決に向かっていく、そんな「対話」を大切にしてほしいです。
 また、1つの学年の間に、本書のような授業を行える機会には限りがあります。子どもの学びを、点から線にしていくために、どんなことを学んだかや、同様の考え方ができそうな場面を考えさせるなどの「振り返り」を大切にする必要があります。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いいたします。

 本書で「真の問題解決能力」として焦点を当てた「数理科学的意思決定能力」は、長期的に育成を図っていく必要があります。それには、学年や学校種によって代わる教師が、互いの実践をつないでいく必要があります。その意味では、本書を参考に、読者のみなさんが新たな実践をされ、それを共有していくことでこそ、私たちのめざす教育が実現すると言えます。一人ひとりの教師から学校全体へ、また小学校から中学校、中学校から高校へと実践の輪が広がっていくことを願っています。その意味で、小学校の先生は中学校編の授業プランを、中学校の先生は小学校編の授業プランをご覧いただけるとよいと思っています。

(構成:赤木)
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