著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
1人ではできない劇だからこそ、子どもの豊かな表現力が培われる!
日本児童劇作の会会長金平 純三
2016/8/17 掲載
 今回は日本児童劇作の会会長の金平純三先生に、新刊『子どもも保護者も大満足! 全員参加の楽しい児童劇脚本集』について伺いました。

日本児童劇作の会にほんじどうげきさくのかい

〔編集委員〕木村たかし 金平純三 森田勝也
http://www.gekisaku.com
◆会の成り立ち
 日本児童劇作の会は、学校劇の創始者である、斎田喬(1895〜1976)のもとで劇作ゼミナールを続けていた小・中学校教師が中心となって、1954年に結成されました。主な活動内容は@月例研究会(脚本研究会・翆会・実践研究会・特別講座)、A演劇教育夏期大学、B愛知支部名古屋夏期大学、C冬季セミナーの4つで、現在も、結成当時の志を受け継ぎ、学校教育の中で演劇教育を積極的に取り入れている教師が集まり、創作活動・研究活動を続けています。
 学校における演劇教育とは、創造力・想像力・コミュニケーション力・言語力などの総合的な表現力を培う活動です。その活動のための教材づくりの基本が劇作であり、情報化社会と言われている現代だからこそ、人と人とがふれ合い、相手の表現に反応する演劇的な表現活動が、現在の教育に求められています。そのためにも、指導者自身が、創造的でありたいと願い、日々、実践・研究活動に取り組んでいるのが、劇作の会です。
◆機関誌
 「児童劇作」年間1回発行。月例研究会で出された優秀な作品を掲載するとともに、毎年、テーマを決めて特集を組み、会員が執筆しています。先輩会員による連載も若い教師にとって参考になる情報交換の機関誌です。
 「劇作通信」毎月1回発行され、月例会の報告と翌月の予定などが、掲載されています。

―本書の特長・魅力について、お教え下さい。

 はじめて学芸会の指導をする先生方のためにつくられた脚本集です。場面やセリフについて、ト書きだけでなく、セリフに番号が付けられ、指導するときのヒントやポイントが具体的に示されています。また、舞台装置や衣装についてもイラストで描かれ、指導者にとって、イメージしやすくなっています。子どもに配付する台本や伴奏音源は、ダウンロードできますので、子どもの発想を生かし、指導のポイントに影響されずに取り組むことができます。

―本書に収録されている脚本の特長・魅力について、お教え下さい。

 小学校低学年・中学年・高学年向きの脚本が1冊にまとめられています。ほとんどの脚本には、歌が挿入されていて楽しく演じることができます。ジャンルとしては、生活劇、音楽劇、民話劇、童話劇、動物劇、SF劇など多彩で、学年に応じて選ぶことができます。また、大道具は、制作に時間のかかるものは極力減らし、子どもの演技指導に時間を割くことができます。ジャンルに応じて衣装も舞台上で見栄えするように工夫されています。

―劇を通して、子ども達にどのような力が身に付くのでしょうか。

 自分と違う人やモノになり、想像の翼を大きく広げて新しい自分になることができます。想像する力は心を強く豊かにします。将来つらいときや心が折れるようなときがあっても、想像力を働かせ、夢と希望をもって前向きに生きられる柔軟な心が養われます。劇は、1人ではできません。相手の言葉を聞き、反応します。人の前で演じることにより、自信と達成感、充実感を体験し、自尊感情が高まります。劇を通して、協調性、創造力、想像力、コミュニケーション力が培われます。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いいたします。

 はじめて劇指導をなさる先生は、どうしても脚本にとらわれ、子ども達にセリフを覚えさせ、大きな声を出させることに意識がいってしまい、子ども達の発想や楽しく表現することが抜けてしまうことが多々あります。学校における劇は、役者を育てる活動ではありません。子ども達が役になりきり、表現することの楽しさを体験できる貴重な機会です。一人ひとりが工夫したことやよさを認め、励ますことが自信につながります。子どものときに演じた体験は、一生心に残り、将来の糧になります。
 劇づくりの楽しさを先生方自身に味わっていただきたいです。本書が、その1つのきっかけになれば幸いです。

(構成:赤木)
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