著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
支援のレパートリーをたくさんストックしよう!
発達支援教室クローバー主宰細井 晴代
2016/1/5 掲載

細井 晴代ほそい はるよ

 NPO法人ぎふと理事長、教育学修士、愛知教育大学講師、保健師、看護師、養護教諭2種、ムーブメント教育中級指導者。
 発達支援教室クローバーを主宰し、発達障がい児・者の支援と教育を行っています。
 私は、10年余りの保健師活動の中で発達の気になる子どもたちと悩む保護者たちを見てきました。実は自らも知的障がい児の母親です。「どうしたらいいかわからない」という悩みがありました。しかし、愛知教育大学大学院において研究し、1か月で子どもを変える方法を見つけました。言葉が出る、理解力が伸びる、問題行動を減らすために、どうしたらよいかの具体策、本当に必要な教育を提供しています。

―「ちょっと気になる」子どもがいたら、最初に何に気を付ければよいのでしょうか。

 最初に気を付けるとよいことは、身体の動きです。実は、自信も社会性も身体の動きが大きく関係しています。ものごとを行うときに身体の動きが関連し、自信と関連することはわかりやすいでしょう。社会性との関連では、私たちは人の身体の動きを無意識に取り込むことで人の気持ちを汲み取っています。そのとき、身体を器用に動かせることが必要になります。このように、自信にも社会性にも身体の動きは関係します。ですから、気になる子がいたら、身体能力を高める視点をもつことが大切です。

―子どもの行動の意味を翻訳するスキルを身につけるために、1章では効果的なアプローチを4つご紹介下さっていますね。簡単に教えて頂けますか。

自信と意欲を引き出す、ほめるアプローチ

 子どもをほめるということは、子どもを認めるということです。人は理解されて、人を理解するという性質を持ちます。ほめ方のコツをつかみ、ほめることを大事にするアプローチです。

気持ちをわかってやりとり力を育むアプローチ

 気になる子どもには独特の感性があります。それを理解した上で子どもの気持ちを読み取り、子どもの気持ちとこちらの気持ちをフィードバックしていくアプローチです。

甘えを育てて、教育を効果的にするアプローチ

 甘える力は、頼る力ともいえ、人生において最も大事な能力です。「いい子いい子」を基調とした、甘え方を教えるアプローチです。

ムーブメント教育を基調とした遊びのアプローチ

 身体を器用に扱うことが人の自信と社会性に影響します。7つの運動を組み合わせて行うことによって身体を器用に扱う力を高めるアプローチです。

―2章では、気になる視点別に事例と支援のポイントが紹介されていますね。保育現場でどのように活用するとよいでしょうか。

 気になる子どもだけではなく、定型の子どもに対しても、力を伸ばすことに活用できます。とりわけ気になるところがある子どもに対しては、似た事例を参照しながら、事例で行った支援を対象の子どもに実施してみてください。おそらく、よく似た経過で変化していくはずです。また、全体を読んでいただくと、支援のレパートリーが見えてくると思います。そのこともまた、今後の支援の応用に役立ちます。ぜひ全体に目を通し、様々な支援があることを学んでください。
 

―先生ご自身も知的障がい児をもつ母親とのことですが、保育者や保護者からよく受ける悩みと、その支援ポイントをぜひ教えてください。

 保育者からよく受ける悩みは2つ、「子どもの行動の意味がわからない」「子どもに何の支援をしたらいいか」です。支援のポイントは、気になる子どもたちの独特の感性について理解することです。体幹が育っていないことによる感覚の未整備(感覚過敏や感覚鈍麻)などを知ることです。次に、何の支援をするかはどこにつまづきがあるかをとらえることが必要です。その上で、必要な支援を考えることです。ですから、多くの支援のレパートリーを持っていることが必要でしょう。これらは本書に記載されています。ぜひ参考にしてください。 

―最後に、全国の保育者の先生方へ向け、メッセージをお願いします。

 どうしても先生の力をもってしても改善できない子どものつまづきがあることでしょう。筆者も保健師をしている時、子どもについてなぜなのかわからず、またどうしていいかわからず悩んでいました。しかし、子どものつまづきをとらえる視点と子どもの感性、子どものつまづきを改善する具体的な方法を知ると、その悩みは消えていきます。自信をもって保育できるようになります。保護者に対しても、自信をもって支援内容を伝えることができ、家庭で行うとよいことを伝えられ、よい循環を生むことでしょう。本書は先生方に上記のことを提供します。お役に立てることを願っています。

(構成:木村)

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