著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
生徒の目線に立って発問力を磨こう
茨城大学教育学部准教授鈴木 一史
2015/8/28 掲載
 今回は鈴木一史先生に、新刊『中学校国語科 授業を変える課題提示と発問の工夫39』について伺いました。

鈴木 一史すずき かずふみ

茨城大学教育学部准教授
群馬大学卒業,筑波大学大学院教育研究科修了。東京大学教育学部附属中等教育学校教諭等を経て,2012年から現職。
日本国語教育学会,解釈学会員。教育出版中学校国語教科書編集委員,NHK高校講座「現代文」講師など,学習者に密着した実践と理論の両活動を行う。文部科学省科学研究費特定領域研究「日本語コーパス」(2006〜2010年度)に参画し,言語政策班として教科書コーパスなどの作成と利用の研究を進める。現在もデータを用いた学習者の語彙分析を継続研究中。

―本書では、協働して取り組むことに適した学習課題が多く取り上げられています。このような協働学習のための課題づくりのポイントを教えてください。

 ポイントは、「複数の視点で考えられるようにする」ということです。
 一斉授業では、1つの答えを見いだす課題を提示しがちですが、協働で取り組む場合、一人ひとりが情報を持ち寄って、より高いレベルの答えを目指す過程で、生徒個人の能力の伸長が望めます。もちろん、基礎的な知識を定着させたい場合などについては、個人で取り組む課題も必要になってくるので、バランスをとる必要があります。

―本書では,具体的な授業展開(教師と生徒の対話)の中で,その授業でキーとなる発問が示されています。鈴木先生は,問いを投げかけるタイミングについて、どのようなことを意識されてきましたか。

 「生徒が疑問に思った瞬間を見とる」ということかもしれません。
 同じ学習材を何度も扱ってきたり、同じ学年を何度も経験したりすると、生徒が疑問に思うことはだいたい見当がついてきます。実は、はじめからその疑問に誘い込むつもりで、わざとわからないふりをしたり、そのことに触れないようにしたりするのですが、そうすると生徒の中からふつふつと疑問がわいてきます。そんなときこそチャンスです。「おもしろいことに気がついたね。それじゃあ、そのことを考えてみよう」となるわけです。
 これが、はじめから真っ向勝負で教師が課題をいきなり提示すると、生徒も意欲を削がれてしまいます。

―本書の各事例の中では、「その場面で避けたい発問の仕方」も示されています。一見すると、ついしてしまいそうな発問が少なくありませんが、どのような点を気をつければ、そういった発問の仕方を避けることができるのでしょうか。

 「教えたい内容そのままの発問と、曖昧な発問をしない」という点を気をつけてきました。
 この2つを両立させることは難しいのですが、教えたい内容そのままの発問では、考えに広がりがなくなり、どこかにある答えを探すような活動になりがちです。また、答えに広がりをもたせようとすると、聞き方が曖昧になってしまい、生徒は何をすればよいのか不明瞭に感じます。例えば「…を調べてみましょう」「…を説明しましょう」といった発問(指示)は、テスト問題にあるような聞き方なので、つい授業でもしてしまいがちですが、もう少し学習活動・言語活動の内容に踏み込むようにした方がよいでしょう。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いします。

 この本は、私の「失敗の記録」と言ってもよいものです。
 授業がうまくいかなかったり、生徒が戸惑ったりするたび、課題の提示の仕方や発問の仕方を考え直し、少しずつ改善していきました。これは、私一人の力でできたことではなく、いろいろな先生や先輩と出会い、学ばせていただいたからこそできたことです。
 本書の読者の先生方にも、本書をスタートに、ご自身の目の前の生徒のための課題を発掘したり、発問を工夫したりしていただきたいと心から願っています。

(構成:矢口)
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