- はじめに
- 第1章 毎日の国語授業の課題提示と発問を考える
- 1 「国語ってどう勉強すればいいの?」
- 2 他教科と国語の違い
- 3 「てびき」の通りに授業は進まない
- 4 本書の構成と使い方
- 5 「問いをつくる」ということ
- Column 教師の口癖
- 第2章 授業を変える課題提示と発問の工夫39
- 1年
- 1 事実はどの部分で,意見はどの部分ですか?
- 【話すこと・聞くこと/事実と意見を区別する】
- 2 共感する部分はどこですか?
- 【話すこと・聞くこと/自分の考えと比べて聞く】
- 3 自分の話し方で直した方がよいと思うところはどこですか?
- 【話すこと・聞くこと/自分の話し方を見直す】
- 4 言葉のまとまりを考えて枠で囲み,見出しをつけてみましょう
- 【書くこと/書く内容を決める】
- 5 どこからそのように感じたのか,具体的に書いてみましょう
- 【書くこと/根拠を明確にする】
- 6 読み手はどんなことを知りたいでしょうか?
- 【書くこと/叙述を直す】
- 7 この作品の続きがあるとしたら,どんなふうに語られるでしょうか?
- 【読むこと/文章の構成をとらえる】(「少年の日の思い出」)
- 8 擬音はどんな効果をもっていますか?
- 【読むこと/表現の特徴をとらえる】(「オツベルと象」)
- 9 「なぜなら」を使って,時間の順序を入れ替えてみましょう
- 【言葉の特徴やきまり/接続表現を使いこなす】
- 10 比喩表現が何を意味しているのか考えてみましょう
- 【言葉の特徴やきまり/比喩を考える】
- 11 音と表記が異なる言葉にはどんなものがあるでしょうか?
- 【言葉の特徴やきまり/日本語の文字と音を考える】
- 12 この求婚の話でどんなことがおもしろいと感じましたか?
- 【伝統的な言語文化/「竹取物語」を読む】
- 13 由来となったのはどんな故事でしょうか?
- 【伝統的な言語文化/故事成語の由来を調べる】
- 2年
- 14 3つ以上の情報源を参考にしましょう
- 【話すこと・聞くこと/多様な方法で情報を収集する】
- 15 その資料を使った意図は何ですか?
- 【話すこと・聞くこと/資料や機器を使う】
- 16 もし自分と反対の意見が出たら,何と答えますか?
- 【話すこと・聞くこと/反対意見を考えて話す】
- 17 一番言いたいことの根拠になっている部分に線を引きましょう
- 【書くこと/自分の立場を明確にする】
- 18 感謝の気持ちを伝えるには,どんな言葉を書けばよいでしょうか?
- 【書くこと/手紙を書く】
- 19 この作品の時間の流れを整理するとどうなりますか?
- 【読むこと/構成や展開を読む】(「夏の葬列」)
- 20 メロスは最後の部分で何のために走っているのでしょうか?
- 【読むこと/登場人物のものの考え方をとらえる】(「走れメロス」)
- 21 話し言葉だと思うものに線を引き,書き言葉に書き換えてみましょう
- 【言葉の特徴やきまり/話し言葉と書き言葉を区別する】
- 22 「サワル」と「フレル」にはどんな違いがあるのでしょうか?
- 【言葉の特徴やきまり/類義語のまとまりをとらえる】
- 23 同じ意味としてまとまるものはどれでしょうか?
- 【言葉の特徴やきまり/多義語の特質を知る】
- 24 普段使っている言葉で,共通語ではない言葉をあげてみましょう
- 【言葉の特徴やきまり/方言を考える】
- 25 日常生活で同じような経験をしたことがありますか?
- 【伝統的な言語文化/「徒然草」を読む】
- 26 普段の生活や人間関係を思い浮かべながら考えてみましょう
- 【伝統的な言語文化/「論語」を読む】
- 3年
- 27 みなさんにも同じような経験がありませんか?
- 【話すこと・聞くこと/言葉に当てはまる体験を語る】
- 28 自分と同じ考え,新しく知って納得した考えはどんなことですか?
- 【話すこと・聞くこと/講演を聴く】
- 29 データを使って自分の主張を組み立ててみましょう
- 【書くこと/資料を使って説明する】
- 30 この広告は見た人にどんな影響を与えるでしょうか?
- 【書くこと/批評文を書く】
- 31 選んだ和歌の優れていると思うところはどこですか?
- 【書くこと/和歌の鑑賞文を書く】
- 32 “私”の「希望」とはどういうものですか?
- 【読むこと/自分の考えを深める】(「故郷」)
- 33 友だちの作品のよい点はどんなところでしょうか?
- 【読むこと/俳句を詠む】
- 34 この展開は読み手にどのような効果を与えているのでしょうか?
- 【読むこと/文学作品を批評する】(「故郷」)
- 35 「優しい」が意味するのはどんなことでしょうか?
- 【言葉の特徴やきまり/言葉の変化をとらえる】
- 36 敬語を使った簡単な会話文をつくってみましょう
- 【言葉の特徴やきまり/敬語を考える】
- 37 自分が使っている言葉を和語・漢語・外来語に分類しましょう
- 【言葉の特徴やきまり/語種をとらえる】
- 38 俳句で表された場所がどんな所か調べ,情景を想像してみましょう
- 【伝統的な言語文化/「おくの細道」を読む】
- 39 李白と杜甫の漢詩を読んで,どんな違いを感じましたか?
- 【伝統的な言語文化/漢詩を読む】
はじめに
毎日の授業づくりで最も気を使うのが,学習課題をどのように提示するかということでしょう。よい学習課題を設定するためには,教材研究や教材分析,それから生徒の実態把握など,様々な要素がかかわってきます。それらを踏まえたうえで,適切な学習課題を提示できたときには,生徒の学習意欲が増し,主体的に学習に取り組んでいく,そんな姿が見受けられます。
しかし,はじめて担当する学年や,はじめて扱う教材について,学習課題をどのように設定していけばよいのでしょうか。この問いは,2つの問題を内包しています。1つは,学習課題を「何にするか」という内容の問題と,「どのように提示するか」という方法の問題です。本書では,この学習課題の内容や提示の方法と,それにかかわる発問の工夫について,教師と生徒のやりとりまでわかる各学年13ずつ,全部で39の事例を通して紹介しています。教師がどのように言えば生徒たちが答えやすいのか,考えやすいのか。そのようなことも,教師と生徒の対話例から読み取ってみてください。
本書では,各学年とも,「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」を網羅し,「伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項」も取り上げています。また扱う教材は,教科書会社に偏りが出ないように,定番と言われるものを選択しています。いずれの事例においても重視しているのは,生徒自身の言語生活に引きつけた学習課題を設定する,ということです。例えば,故事成語などでは,故事成語自体の意味を暗記して定着させることをねらいとするのではなく,故事成語の意味を現代の生活で生かすという視点でとらえ,実際に使うとすればどのような場面やエピソードで使えるのかを考えるなど,活用型の学習を志向しています。
また,事例の中には1人では取り組めない学習課題もあります。学校という学習の場においては,協働してはじめてなし得るような課題に取り組むことも大変重要だからです。
もちろん,自学も主体的な学習には欠かせない大切な要素です。ですから,課題の中には,宿題として取り組むことができるようなものも含まれています。ただし,こういった場合も,生徒が自学したことを教室でお互いに擦り合わせる,そんな授業も必ず行いたいものです。
活用型の学習や協働学習は,これからの学校教育の重要な方向性の1つとなるでしょう。そう考えると,学習課題が生徒から乖離したところで設定されてはいけません。また,学習のための学習,テストのための学習となってもいけません。学習過程で培ったことが,何らかの形で日常生活,社会生活で豊かに役立ってこそ,次の学習につながり,生徒の学習意欲も増していくはずです。
最後に,本書で紹介した学習課題に取り組んだ生徒が,他教科の学習などにもさらに積極的に取り組むことができるような力を身につけてくれることを願っています。国語の学習で身につけた力は,国語の学習だけにとどまらず,日々の学習活動や学校生活,さらには日常生活で発揮してこそ,生徒の成長に大きく寄与するものだからです。
そして,本書を通して,目の前の生徒に合った学習課題と発問をどのような教材でも示すことができるようになることを心から願い,読者の先生方へのエールとしたいと思います。
2015年7月 /鈴木 一史
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- 明治図書
- 具体的な例をあげながら説明されているので、分かりやすく、活用しやすい。2018/11/25匿名希望
- 具体例があってわかりやすかった2016/2/2640代・中学校教員