著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
重要用語でたどる・ひらく―これからの国語科教育の発展に向けて
千葉大学教授寺井 正憲
2015/7/28 掲載
 今回は、編者を代表して寺井正憲先生に、新刊『国語科重要用語事典』についてお話を伺いました。

寺井 正憲てらい まさのり

1959年、徳島県生まれ。筑波大学大学院博士課程単位取得満期退学。文教大学講師、筑波大学附属小学校教諭を経て、現職。平成20年小学校学習指導要領解説国語編作成協力者。著書に、『語りに学ぶコミュニケーション教育』(上下巻、明治図書、2007)等。読むことの学習指導、コミュニケーション教育など、国語教育の実践的理論的な研究を行っている。

―今、本書が求められる理由とはなんでしょうか。

 現在、国語教育の実践や理論は、大きく変わりつつあります。1980年代から90年代にかけて理論的に提案されてきたことが、21世紀になって実践で実現するようになり、それに伴って理論も一段と進展してきています。なかでも、2000年から始まったPISA調査の影響は大きく、言語活動の充実という形で学習指導要領に反映され、また全国学力・学習状況調査に反映され、さらにそれらが教科書教材に反映されるにいたって、国語科の授業実践の大きな変化につながっています。
 このような時期には、従来からの術語が使用されなくなったり、新しい学問的な成果を生かした術語が出現したり、長らく使用されてきた術語もこれまでとは異なった意味や価値が付与されたりするようになります。これらの変化に応じて術語の事典は見直しが必要で、今回の『国語科重要用語事典』の出版は、これらの社会的な要請に応えたもので、現在出版されている国語科の事典類でもっとも新しい知見を反映していると考えています。
 

―具体的には、どのような術語が新たに取り上げられているのでしょうか。

 本書は、『国語科重要用語300の基礎知識』(明治図書、2001年)の後継書にあたりますが、取り上げる術語は、現代的な課題に応じて取捨選択し、また新たに加えることを行い、252語に絞り込んでいます。
 国語科教育において時代を越えて重要になる術語を残しながら、しかし現代的な課題に応えるために、「習得と活用」「メタ認知」「ICTの活用」「デジタル教科書・教材」「学校づくりと国語教育」「合意形成能力」「ライティング・ワークショップ」、「クリティカル・リーディング」「レトリック」「メディア・リテラシー」「国語教育とインクルーシブ教育」「アクティブ・ラーニング」などをはじめ、これからの国語教育を豊かに実現するために必要になる術語を数多く新規に取り上げています。

―どのような方がご執筆くださっているのでしょうか。

 今回ご執筆していただいた先生方は、全国にわたり、総勢で103名になりますが、いずれも実践や理論の研究に取り組み、高い見識をお持ちの当代一流の先生方です。新しく採られた術語はもちろんですが、再録された術語についても、2000年以降の理論や実践の動向や研究の成果などの新知見を踏まえて、新たに解説を書いていただいています。解説は可能な限り、定義、理論、課題という構成にし、それぞれ術語の定義や内容、理論の背景や発展と実践への展開、今後の進展に関わる課題や方向性を示していただいています。

―最後に、国語科教育の実践や理論を学び、さらに実践を向上させ、理論を深めていかれようとしている全国の読者の皆様に、メッセージをお願いします。

 豊かな国語科教育の実践や理論を作り上げていくためには、新しい国語科教育のビジョンを描くことが大切です。そのためには、まずは課題をめぐる術語を確認し、次に術語にまつわる理論の経緯や実践の状況を探り、そしてそこから未来を展望してビジョンを描くようにすることが大切だと思われます。
 多くの実践家、理論家、学生・院生の方々に本書をご活用いただき、これからの国語科教育の実践や理論を進展させていただけることを心より願っています。

(構成:林)

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