著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
洗練された課題と発問の連動で、数学的な考え方を育てよう
愛知県豊田市立井郷中学校長鈴木 正則
2015/4/11 掲載
 今回は鈴木正則先生に、新刊『中学校数学科 数学的な考え方を育てる課題&キー発問集』について伺いました。

鈴木 正則すずき まさのり

1961年愛知県生まれ。
愛知教育大学大学院で数学教育専攻,小学校に10年間,中学校に8年間勤務し,豊田市教育委員会指導主事,半田市立成岩中学校長を経て,現在,豊田市立井郷中学校長。持ち前の明るさとバイタリティーをいつまでも保ち続けることがモットー。

―本書では、課題と発問を連動させた授業づくりの工夫が提案されています。課題の扱い方の工夫については、4つの方法が紹介されていますが、この中の「オープンな形式にする」についてポイントを教えてください。

 数学的な考え方を育てるうえで重要なことの1つが、生徒の気づきや考えを引き出して授業を展開する、ということです。
 生徒の気づきや考えを引き出したいとき、課題は「…を求めなさい」「…を証明しなさい」といった問い方よりも、「…について調べよう」「…について考えてみよう」「…についてどんなことが言えますか?」といった答えを広く許容する問い方の方が有効です。この方法を、本書では「オープンな形式にする」と呼んでいます。

―発問の工夫について、本書の中では、その表現とともに“タイミング”について言及されています。それはなぜでしょうか。

 「考えてみよう」と投げかけるだけでは不十分なので、発問によって生徒の気づきや考えを深める必要があります。そのときに重要なのが、生徒が考える必要感をもつタイミングで発問する、ということです。「解決の見通しをもたせる」「考えをゆさぶる」「考えを焦点化する」「解決の方向性を定める」…など、目的に応じて発問のタイミングをはかる必要があります。

―本書で紹介されている授業例は、数学的な考え方を育てることをねらいとしています。中でも、演繹的な考え方は、中学校数学で育てるべき重要な思考法の1つですが、課題や発問において、どのようなことを工夫すればよいのでしょうか。

 演繹的な考え方とは、すでにわかっていることを根拠として、ある事柄が正しいことを筋道立てて説明しようとする考え方です。そのため、まずは根拠となることが何かを明らかにしなくてはいけません。つまり「あのことを使えば説明できそうだ」という解決の見通しをもつことが必要になります。
 この解決の見通しをもたせるための課題の工夫として、「条件を工夫する(不足や変更)」「関連づけを図る」「対比させる」といった方法があります。発問について言えば、「どんなことが言えますか?」「…としてよいでしょうか?」などのように、筋道立てて考えるきっかけを与えるような問いを投げかけるとよいでしょう。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いします。

 数学的な考え方は、日々の授業を通して育てていくものです。日々の授業は、教科書が中心となります。そこで、本書では多くの教科書で見られる問題をちょっと工夫した課題と、教科書に沿って授業を進めていくことを前提とした発問の工夫を紹介しています。この手軽な授業改善の方法が、授業づくりに悩む先生方の一助になれば幸いです。

(構成:矢口)
コメントの受付は終了しました。