- はじめに
- 1章 数学的な考え方を育てる課題と発問
- 1 数学的な考え方
- 2 数学的な考え方を育てる課題と発問の工夫
- 3 数学的な考え方を育てる課題の工夫
- 4 数学的な考え方を育てる発問の工夫
- 2章 数学的な考え方を育てる課題と発問の具体例
- 1年
- 正の数・負の数
- 負の数の表し方 2つの温度計を見比べて気付くことはありませんか?
- 絶対値 +3と−3で同じところはないでしょうか?
- 加法 加法表から何がわかるでしょうか?
- 文字の式
- 式の値 どの式が一番大きいでしょうか?
- 式を簡単にする 計算したらどうなるでしょうか?
- 方程式
- 利用(買い物) どの方程式が正しいのでしょうか?
- 利用(過不足) どんな条件が加われば求めることができますか?
- 利用(旅人算) 兄は弟に追いつくことができるでしょうか?
- 比例と反比例
- 関数の定義 何を決めると,何が決まるでしょうか?
- 比例 表を見比べて気付くことはありませんか?
- 平面図形
- 図形の移動 すべての三角形に移動できるでしょうか?
- 角の二等分線 どんな性質をもつ直線なのでしょうか?
- 空間図形
- 直線と平面の位置関係 鉛筆をずらしたら垂直でしょうか?
- 投影図 立面図が長方形の立体は直方体だけでしょうか?
- 資料の活用
- 代表値と散らばり 試合にふさわしいのはどちらの選手でしょうか?
- 2年
- 式の計算
- 式の加法・乗法 今までに学習した式はどれでしょうか?
- 文字式の利用 □が5の場合は5の倍数になると言ってよいでしょうか?
- 連立方程式
- 利用(入館料) 他にどんな条件があれば求めることができるでしょうか?
- 利用(速さ・時間・道のり) 他にどんな条件があれば求めることができるでしょうか?
- 一次関数
- グラフの傾き グラフの違いをどう表現したらよいでしょうか?
- 一次関数の式 どんな条件がわかれば式を求められるでしょうか?
- 一次関数の利用 何と何の関係を表しているのでしょうか?
- 図形の調べ方
- 対頂角 4つの角でどんなことが言えますか?
- 多角形の内角と外角 外角はいくつあるでしょうか?
- 多角形の内角の和 図を変化させて別の図にできないでしょうか?
- 証明の進め方 図から言えそうなこと/言えることは何でしょうか?
- 三角形と四角形
- 二等辺三角形 合同条件の3要素はすべて必要なのでしょうか?
- 四角形の包摂関係 この四角形は平行四辺形一家に属しますか?
- 確率
- 確率の求め方 同時に投げても順番に投げても確率は同じでしょうか?
- 確率の求め方 確率の求め方に共通点はないでしょうか?
- 3年
- 式の展開と因数分解
- 多項式の計算 計算の仕方が表から見えてきますか?
- 因数分解 □がいくつでも式は積の形になるでしょうか?
- 式の計算の利用 他の図形でもS=alで面積が求められるでしょうか?
- 平方根
- 平方根 新しい数が出てきたときどのように学習してきましたか?
- 根号を含む式の計算 √a+√b=√a+bとしてもよいでしょうか?
- 二次方程式
- 因数分解による解法 解き方のどこが間違っているのでしょうか?
- 利用 面積がいくつになっても縦と横の長さは求められますか?
- 関数y=ax2
- y=ax2の式 比例とどう違うのでしょうか?
- 利用(平均の速さ) “だんだん”とはどんな増え方ですか?
- 図形の相似
- 相似条件と証明 何が変わったのでしょうか?
- 利用(直角三角形) どの辺の長さを求めることができそうですか?
- 中点連結定理 中点連結定理が正しく用いられていますか?
- 円周角と中心角
- 円と相似 交点の位置を変えたら相似の関係はどうなりますか?
- 円周角の定理の逆 見つけた関係は形が変わるとどうなるでしょうか?
- 三平方の定理
- 利用(三角形の面積) どの辺の長さがわかれば面積を求められるでしょうか?
- 利用(直方体) 場合分けができないでしょうか?
- 参考・引用文献
- おわりに
はじめに
定理や性質を繰り返し復習したのに,いざテストになると正答率が悪く,がっかりした経験はないでしょうか。
例えば,右の問題(省略)では,下の図(省略)のように中点連結定理を利用すれば,EFの長さを求めることができます。しかし,三角形で学んだ中点連結定理を繰り返し復習しても,台形の中に三角形を見いだすことができなければこの問題を解くことはできません。三角形を作図したらよいという見通しをもつには,向かい合う辺の中点を結んでいることから中点連結定理を類推する,といった数学的な考え方が必要になります。また,三角形をいろいろイメージできれば,他の解法も見いだすことができ,数学の楽しさを味わうこともできます。このように数学的な考え方は,問題を解決するうえで不可欠です。
それでは,数学的な考え方を育てるにはどうすればよいのでしょうか。「この問題ではこの数学的な考え方を用いたらよい」などと教えたところで,生徒が主体的に数学的な考え方を用いて問題を解決できなければ意味がありません。数学的な考え方は日々の授業を通して,継続的に育てていくものです。
そこで,本書では,日々の授業の改善を念頭におき,教科書でも扱われているようなごく一般的な課題(問題)とそれにかかわる授業の中の発問を工夫して,数学的な考え方を育てる指導事例を紹介します。指導経験の短い若手の先生方にもわかりやすく書かれているので,ぜひご活用ください。
2015年3月 /鈴木 正則
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