著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
より実践的に進化したクラス会議の姿
上越教育大学教職大学院教授赤坂 真二
2015/3/5 掲載
 今回は赤坂真二先生に、新刊『クラス会議入門』について伺いました。

赤坂 真二あかさか しんじ

1965年新潟県生まれ。上越教育大学教職大学院教授。学校心理士。「現場の教師を勇気づけたい」と願い、研究会の助言や講演を実施して全国行脚。19年間の小学校勤務では、アドラー心理学的アプローチの学級経営に取り組み、子どものやる気と自信を高める学級づくりについて実証的な研究を進めてきた。2008年4月から、より多くの子どもたちがやる気と元気を持てるようにと、情熱と意欲あふれる教員を育てるために現職に就任する。主な著書に『スペシャリスト直伝!学級を最高のチームにする極意』『一人残らず笑顔にする学級開き 小学校〜中学校の完全シナリオ』『最高のチームを育てる学級目標 作成マニュアル&活用アイデア』『スペシャリスト直伝!学級づくり成功の極意』『赤坂真二―エピソードで語る教師力の極意』(以上、明治図書)などがある。

―本書は「THE教師力ハンドブック」シリーズの1冊として、テーマは「クラス会議」です。まず本書の特徴とねらいについて教えて下さい。

 初めてクラス会議に取り組む先生が、どのように立ち上げ、どのように運営していったらいいかを丁寧に解説しました。また、30人を越えるような人数の多い学級でも、傍観者を出さず、全員が主体的に関わるためのアレンジの仕方やクラス会議が成功するためのポイントを図表を用いてわかりやすく示しました。

―クラス会議は、アドラー心理学の考え方に基づいたものと言われます。アドラー心理学の理論と方法(考え方)に基づいた学級づくりとはどのようなものでしょうか?

 アドラー心理学に基づく教育の目指すところは、人とつながって生きる子どもたちの育成です。つながるとは、単に仲良くなることではなく、その良好な関係性をベースに協力して課題を解決する力をもつことです。
 学級の問題を自分たちで話しあって解決し、また、困難を抱える仲間がいたら互いに支え合っていく。クラス会議は学級をそんな集団に育てることができます。

―先生は「クラス会議」には決まった形があるわけではなく、実践される先生によって、独自なスタイルでよいと本書の中で述べられています。読者がクラス会議を始めよう、と思った時、まずどのようなアプローチが考えられるでしょうか?

 まずは、教師が子どもたちに理想の学級を語ることです。きっとクラス会議を実践しようとする先生は、子どもたちの力を信頼し、自分たちで高め合うクラスになってほしいと願っていることでしょう。子どもたちも、自分たちで決めたい、自分たちでやりたいと思っているはずです。それを実現する方法がクラス会議であることを伝えたら、多くの子どもたちが賛同してくれるはずです。

―クラス会議では「輪になる」「コンプリメント(ほめ言葉)を交換する」ことが成功の秘訣とも言われますが、これらの効用について教えて下さい。

 輪になると言うことは、互いの対等性の象徴です。クラス会議で誰もが対等な関係に立つことが原則です。また、輪になると互いの表情がよく見えます。ここにいるメンバーが仲間であることを自覚できます。そうした状況で伝え合うあたたかな言葉は、学級に受容的な雰囲気をつくり、問題解決への意欲を高めます。

―いわゆる一般の学級会では、時間的な関係からか、議題は精選されたものに絞って〜と言われます。逆にクラス会議では、小さかったり、重ねて出る議題も随時扱っていく形のようですが、この違いについて教えて下さい。

 議題の精選はときには必要なことですが、クラス会議では子どもたちの言葉をそのまま議題にすることを大事にします。議題の精選の過程で話し合いが本来の提案者の願いとは違った方向に行ってしまう可能性もあります。
 クラス会議では、提案者の問題意識を重視します。そこに寄り添って話し合いをすることで共感性が育ちます。信頼のベースには共感性があることは説明の必要がないでしょう。

―クラス会議を経験することによって、子どもたちに育つ力はどういったものでしょうか?

 みなさんは、自分たちを教師の力で解決するクラスを望んでいますか。それとも自力解決するクラスを望んでいますか。後者を望むならば、子どもたちにその体験をくぐらせる必要があります。クラス会議はそうした活動を通して、相互信頼、相互尊敬の関係をつくり、自分のクラス、そして自らの力に自信を持ちます。

―最後に、読者の先生方にメッセージをお願いします。

 生きる力の中でもっとも中核的な力は、問題解決能力だと捉えています。それも、人間関係の問題を解決する力です。なぜならば、わたしたちを最も悩ませ、そしてまた逆に喜びを与えてくれるのも人間関係だからです。誰でも簡単にクラス会議ができるというつもりはありません。しかし、本気で子どもたちの幸せを考えたら是非とも取り組みたい活動の一つだと考えています。

(構成:及川)

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