著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
やる気を引き出す強烈な力をもつ「癒やし」「和み」のワザ
上越教育大学教職大学院教授赤坂 真二
2015/2/11 掲載
 今回は赤坂真二先生に、新刊『マンガで直伝! 学級にやる気を生み出す「癒やし」「和み」ワザ』について伺いました。

赤坂 真二あかさか しんじ

1965年新潟生まれ。新潟大学教育学部卒業、上越教育大学大学院修了。同教職大学院教授。19年間の公立小学校勤務の後、現職。学校心理士。アドラー心理学に基づくクラス会議、勇気づけを研究。

―本書で紹介している「癒やし」「和み」ワザとはどんなものですか? また、「癒やし」「和み」ワザを教室で使うと、どのような効果があるのでしょうか?

 「癒やし」「和み」ワザとは、教室の緊張感を和らげるちょっとした教師の働きかけや技術のことです。教室は子どもたちの居場所であると同時に自分を高めるための訓練の場でもあります。知らず知らずのうちに教室には緊張感が生まれ、教師と子どもたちの関係性も硬くなることがあります。そんなときに、「癒やし」「和み」ワザは緊張感を緩和することができます。緊張感から解放され、安心感を感じると子どもたちはまた、やる気を持って様々な活動に取り組むことができます。

―きちんと指導すべき時と、「癒やし」「和み」ワザはどのように使い分けていったらいいでしょうか?

 子どもたちは、教師の働き掛けを言葉情報だけで受け取っているわけではありません。声の大きさ、語調、速さ、そしてなによりも表情や身振り手振りといった非言語による情報も一緒に受け取っています。そして、どちらを重視するかと言ったら圧倒的に非言語情報なのです。きちんと指導すべき時は、引き締まった表情や落ち着いた声で、そして、「癒やし」「和み」ワザを使うときは、少しとぼけたような力の抜けた感じを出すとよいのではないでしょうか。共著者の小林治雄氏のマンガからは、その力の抜けた「空気感」が見事に伝わってきます。 

―「癒やし」「和み」ワザをうまく取り入れるヒントをお願いします。

 マンガを読むと、小林氏の学級の何とも言えないようなあたたかな雰囲気が伝わってくると思います。本書をお読みになればわかるように、小林氏が紹介するワザは特別なものではないのです。むしろ、特別なオチもないやりとりです。しかし、だからこそリアリティに溢れています。小林氏は、「自己紹介で先生の名前は『キムラタクヤ』です。」などと普通に言ってしまう教師です。子どもたちは、そこで爆笑なんてしません。しかし、飄々としたその人柄から繰り出されるとぼけた会話の数々によって、じわりじわりと教室の空気があたたまっていくのです。お笑い芸人のような話芸がいるわけではないのです。ほっとできるやりとりを地道に積み重ねるだけです。だからこそ多くの先生方と分かち合えるものになっているのです。

―学級通信にマンガをのせることを通じて、担任・保護者・子どもをつないでいると書かれています。なぜ、この「癒やし」や「和み」のワザが保護者の方も巻き込んでいけるのですか。

 本書は、小林氏のクラスの学級通信や文集に掲載されたマンガから構成されています。ちょっと想像してみて下さい。みなさんが子どもだったら。先生のあたたかさが込められたお便りが定期的に配られます。また、みなさんが、保護者だったらいかがでしょうか。定期的に届く、愛する子どもたちが毎日通う学校を舞台にした教師と子どものほのぼのとした物語の数々。こんな教師を、子どもは好きになり、保護者の方々は応援したくなるでしょう。「癒やし」や「和み」のワザは、教師の子どもへの愛を伝えるとても効果的な方法なのです。

―最後に読者の先生方に、メッセージをお願いします。

 教育も数値などの明確な結果を出すことが求められるようになりました。いろんな場面で子どもたちをがんばらせなくてはならない時代になりました。しかし、ご存知のように「がんばれ、もっともっと」だけでは、子どもたちは力を発揮できません。そんなときにほっとしたり、安心したりできる瞬間があると、「よし、また、がんばろう!」という気持ちになれるものでしょう。「癒やし」「和み」ワザとは、そのゆるい印象と反対に、わたしたちを元気にする強烈な力を持っています。みなさんが今、教室で実践している働き掛けの中に、少し「癒やし」「和み」ワザを加えることで、子どもたちの瑞々しいやる気に火を付けることができるかもしれません。

(構成:及川)
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