著者インタビュー
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視覚支援を極めてわかる!子どもへのアプローチ
国立特別支援教育総合研究所総括研究員金森 克浩
2014/11/18 掲載

金森 克浩かなもり かつひろ

国立特別支援教育総合研究所 教育研修情報部 総括研究員。

―タイトルにもある「AT(アシスティブテクノロジー)」とは「障害のある人への支援機器」ということですが、具体的にはどのようなものがあるのでしょうか。

「支援機器」というと、とても特別な物を連想しますが、実はどんな人も使っているのです。お味噌汁を食べるのにお箸とお碗を使っていると思いますが、もしもそういった道具がなかったらどうなるでしょうか? 手ですくうわけにもいかないでしょうし、火傷するかもしれません。私たち人間は様々な道具という支援機器に支えられて暮らしています。ただ、障害のある人の場合にはその必要となる道具が「ちょっと多い」と思っていただければいいです。具体的な使い方については本書をお読み下さい。

―特集にある「視覚支援」には、視覚的な情報を添えて伝わりやすくする支援と、視覚情報が入りにくい場合に別の方法で拡大したり代替したりする支援があるとのことですが、具体的にどういう方にどんな支援をすることなのでしょうか。

私たちは多くの場合、情報を視覚的な形で認識しています。ただし、その情報が入りにくい「視機能に課題のある人」の場合は別の方法で「視覚(を補う)支援」が必要になりますし、視覚的な情報「以外」の情報が理解しにくい人の場合には、「視覚(で)支援」するということになります。
後者の例だと、音声情報は記憶しなければなりませんし、保存がむずかしい。そういった情報が紙などで書かれていれば忘れにくいし見直しができる。多くの人が手帳やノートを活用するように、障害のある子どもたちに視覚的な情報を上手に提供してもらいたいです。

―ミニ特集では文部科学省の調査研究から「ICTの活用による学習困難を抱える子供たちに対応した指導の充実」が取り上げられていますが、これはどんな調査研究だったのでしょうか。

この研究は平成25年度に文部科学省が筑波大学と兵庫教育大学、宮城教育大学に委託をし、それぞれ通常学級、特別支援学級、通級指導教室で学ぶ発達障害のある児童生徒へのICTを活用した指導方法に関する調査研究をしたものです。この研究を通して学校現場に生かせるガイドブックが作成されました。私自身も兵庫教育大学のプロジェクトに参加しましたが、ICT機器をどのように活用すればいいか具体例をまとめることができました。ぜひ、下記の文部科学省のサイトからガイドブックをダウンロードしてご活用下さい。

―巻頭インタビューで、神山忠先生から当事者の声をお聞きになり、どんなことを感じましたか。

こうした当事者の方のインタビューがあることで、私たちが実感することがむずかしい読み書きの困難さを理解するきっかけになります。もちろん、文章だけでは表せないさまざまなご苦労もたくさんあったのでしょう。このお話で大切なのは、どのクラスにも同じような困難さをかかえる子どもたちがいるのではないかと、多くの人に知ってもらうことです。その上で、具体的な手立てとして、ICTなどの支援機器が大切な事を知ってもらいたいです。

―最後にATに興味をもってくださった全国の先生方へメッセージをお願いします。

私たちは文化を創っていく過程で「文字」を獲得してきました。これによって高度な思考を行うことが可能になっています。しかし、その「文字」を視覚的に扱うことができない場合、新しいICTの技術によって別の方法で情報を扱うことが可能になりました。また、音声での伝達では理解しにくい人もいます。こういった、「1つの方法」だけでなく様々な情報伝達を可能にするのがICTの良さです。ぜひ、多くの困難な子どもたちを支援するためのATを学び、活用して下さい。

(構成:佐藤)
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