著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
学び支援ワークで子どものつまずきをとらえよう!
「さくらんぼ教室」代表伊庭 葉子
2014/8/22 掲載

伊庭 葉子いば ようこ

絵row-S「さくらんぼ教室」代表。
1990年、地域のボランティア活動として、障害をもつ子の学習の場「さくらんぼ教室」を開設。1996年、学習塾として開業。千葉・東京・神奈川の7教室で、2歳〜社会人まで1350人を指導(2014年3月現在)。一人ひとりに合わせた個別学習とソーシャル・スキル・トレーニング、ライフ・スキル・トレーニングを行っている。
<著書>『特別支援の国語教材』(各初級〜上級/学研教育みらい/監修:緒方明子)、『特別支援の算数教材』(各初級〜上級/学研教育みらい/監修:緒方明子)
<分担執筆>『発達障害のある子の最適サポート&ツール1』(山岡修・柘植雅義編著/明治図書出版)

―先生が代表をされている「さくらんぼ教室」とはどんなお教室なのでしょうか。

 障害をもつ子が一人ひとりに合わせて学習できる場として1990年にボランティア的な活動から始め、1996年から「学習塾」になりました。現在、2歳〜社会人まで1360人(7教室合計/2014年8月現在)が通室し、個別学習とソーシャル・スキル・トレーニング(SST)に取り組んでいます。
 生徒は、小さい頃から診断を受けていてゆっくり発達する子、通常学級に在籍しているが勉強やSST面で支援が必要な子、勉強はよくできるがSST面の課題が大きい子、など様々です。幼児期から社会人まで長期的に通う生徒も多いことが特色のひとつです。生徒一人ひとりが前向きな気持ちで自立して生きていくための「道標」になることが教室の理念でもあります。

―「さくらんぼ教室」に通う子どもたち含め、支援の必要な子どもたちに、どう育ってほしいと思っていらっしゃいますか。

 発達障害があるということは本人しかわからない大変さもありますが、自分の個性や特性とうまく付き合って、多くの人と関わりながら幸せに生きてほしいと思います。そして、一生懸命学んだという経験を、子どもたちの将来に役立ててほしいと願っています。学習経験を実生活に生かすことができるよう応援していきたいと思います。

―支援が必要な子どもたちの学びを「できた!」「わかった!」に変えるために大切なこととは、どんなことだとお考えになりますか。

 先生や周囲のサポートも得ながら、子どもたち自身が「自分のできることを精一杯頑張る」体験を積み重ねていくことが大切だと思います。そのために、子どもの特性や発達段階に合わせたわかりやすい教材は重要ですが、何より指導者が目の前にいる子どもと一緒に頑張る気持ちを持ち続け、創意工夫していくことが大切だと思います。

―本書では特に小学校1〜2年生で学ぶ算数を取り上げてくださっていますが、特にここは大切、子どもがつまずきやすいポイントとお考えになるところがありましたらどうぞ教えてください。

 「言葉を理解する力」「言葉で表現する力」「概念を理解してイメージする力」に関係する単元でつまずく子は多いと思います。例えば文章問題に書かれている状況をイラストに書いてあげるなど、言葉だけでわからないことを絵や図に表したり、日常生活の中の体験と結びつけたりしながら具体的に説明し、「答え」につながるプロセスを見える形にしてあげることがポイントだと思います。

―最後に、支援を必要としている子どもたちの指導に尽力されている全国の先生方にメッセージをお願いします。

 私の教室には「勉強は苦手だけれど、先生や友達に会いたいから学校へ行く」という子も多く、学校という場所は子どもたちにとって本当に大切な場所だと感じています。学校の先生方からは「支援を必要としている子どもたちのためにもっと何かしてあげたいけれど、現状の学校生活の中では時間がなくて…」というお話をよく伺います。私たちがさくらんぼ教室の生徒たちと一緒に学びながら作ってきたワークが、子どもたちを支えていらっしゃる先生方の「もっと何かしてあげたい」を形にする小さなヒントになれば幸いです。

(構成:佐藤)

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